第4話:『森で仲間と修行、初めての錬金術』
辺境の森に朝日が差し込む。
リリアーナは目を覚ますと、フェンリルの姿を確認した。銀色の毛が朝日に輝き、まるで森全体を守る番人のようだ。
「おはよう、フェンリル。今日も魔法の練習ね」
「そうだ。今日は攻撃魔法だけでなく、錬金術にも挑戦する」
リリアーナはまだまだ魔力の制御が不安定だが、森の動物たちと心を通わせることで、魔力の流れをより自然に感じられるようになっていた。小さな子狼やリス、フクロウたちも、彼女の周りで楽しそうに動き回っている。
屋敷の一角で、小さな試薬と魔導書を並べるリリアーナ。
「さて……これが錬金術の基本ね」
前世の化学知識と動物たちから得た自然のエネルギーを組み合わせることで、リリアーナは魔力を「物質化」する方法を学ぼうとしていた。
まずは簡単な薬草の抽出から始める。手のひらに魔力を集中させると、緑色の光が薬草の葉に流れ込み、瑞々しい液体が生まれる。
「成功……!小さな薬なら、もう作れるんだ」
そこへ、森の中から小さな影が駆け寄る。
「にゃあ!」
灰色の子狼に続き、さらに二匹の動物が現れた。小さな白いキツネと、丸い体のフクロウだ。
「仲間が増えた……!」
リリアーナは笑顔で彼らに話しかける。
「みんな、これから一緒に暮らそうね。魔法や錬金術も、一緒に学ぶのよ」
動物たちは喜ぶように跳ねたり羽ばたいたりし、森の奥で小さな賑わいが生まれる。
その日の午後、リリアーナはフェンリルとともに、攻撃魔法の修行を再開した。
小さな火球を飛ばす練習から始め、風を操る魔法、動物たちの力を借りた合体魔法……一つひとつ確実に身につけていく。
「もう少しで、森の守護者としても役に立てる」
フェンリルは鋭い目で見守りながらも、どこか誇らしげに頷いた。
「お前は確実に強くなっている。森の生き物たちも、お前を信頼している」
夕暮れ、屋敷の前でリリアーナは仲間たちを見渡し、深呼吸する。
「今日も充実してた……。この森で、私らしく生きていける」
その夜、リリアーナは魔導書を枕元に置き、動物たちとともに眠った。森は静かだが、彼女の胸の中には小さな希望の火が灯っていた。
「明日も、もっと強くなる……」
そして、王都の玉座では、王太子が焦燥に駆られながら策略を練っていた。
「……あの令嬢、確かに強くなっている。放っておくわけにはいかない」
森の平穏と王都の緊張――二つの世界が、静かに交わろうとしていた。