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黄昏は悲しき堕天使達のシュプール  作者: Mr.M
一章 Reunion 4月
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第4話 初恋

家を出る前にカレンダーを確認したところ、

この日は俺が転校してから

丁度10日目であることがわかった。


中ノ島小学校は各学年3クラスあり、

全校生徒は500人弱という規模の学校だった。

残念ながら20年後には

少子化の煽りを受けて閉校することになる。


記憶を頼りに通学路を歩いていると

懐かしさに心が弾んだ。

俺は今、自分が置かれたこの状況を

楽しいと思い始めていた。

そして俺はその理由もわかっていた。

家を出た時から

俺の頭には1人の少女の名前があった。


相馬沙織そうま さおり


初恋の少女だった。

目を閉じれば

彼女の姿が淡い記憶と共に

瞼の裏に浮かんでくる。


肩のラインで綺麗に切りそろえられた髪は

やや茶色がかっていたが、

光の加減によって赤く見えることもあった。

そして小さく線の細い体は

少女をか弱く見せていたが、

その鋭い目つきは

彼女が何者にも屈しない

強い心の持ち主であることを

雄弁に物語っていた。

そしてそれゆえに

クラスの誰もが彼女には近づき難い

オーラのようなモノを

感じていたのかもしれない。

相馬はいつも1人で本を読んでいた。

彼女が誰かと話している姿を

俺は見たことがない。

と言っても

彼女が仲間外れにされていた

というわけではない。

孤独でなく孤高。

それが俺の記憶の中の

相馬沙織という少女だった。


いつだったか。

俺は彼女の机に置かれていた本を

こっそり覗いたことがあった。

その本の表紙には、

裸のお尻をこちらに高く突き出した

怪しげな女が描かれていた。

女の片方の足には

脱ぎかけの下着が引っかかっていて、

露になっている女の秘めた部分には

モザイクの代わりに

出版社の名前が書かれていた。

俺は彼女の妖しい秘密を垣間見たという

後ろめたさから、

すぐにその場を立ち去ったのだった。

その夜。

俺は夢をミた。


俺は教室で大の字になって倒れていた。

そんな俺を2つの顔が見下ろしていた。

相馬と本の表紙の怪しげな女だった。

2人は全裸だった。

幼い相馬の体とは対照的に

怪しげな女の体は成熟していた。

その時突然。

2人が覆いかぶさってきた。

2人の手が俺の服に掛かったと思った次の瞬間、

俺はあっという間に裸にされた。

4つの手が貪るように俺の体を弄った。

顔を。首を。胸を。

そして腹を撫でたかと思うと、

太腿へと移った。

俺は自分の下半身が固くなっていることに

気付いた。

次の瞬間、

固くなった俺自身が

温かい何かに包み込まれるのを感じた。

覗き込もうと急いで顔を上げようとした時、

目の前に相馬の顔が迫った。

相馬は笑っていた。

初めて見る彼女の笑顔だった。

そのまま相馬の唇が俺の唇を塞いだ。

彼女の舌が俺の口の中に侵入してくると同時に、

温かい下半身に優しい刺激が走った。

俺は言い知れぬ快感に飲み込まれていった。

その直後。

俺は目を覚ました。

下着がべっとりと濡れていた。

その朝、

俺は汚れた下着を

通学路の途中にある毘沙門川へ投げ捨てたのだ。


そうだ。

あの夢をミてから

俺は彼女を意識するようになったのだ。

しかし当時の俺はその理由こそ違えど、

周りのクラスメイトと同じで

相馬に話しかけることができなかった。

それは俺の初恋であり

一方的な片想いでもあった。

そして初恋は実らない。

俺の初恋は何の前触れもなく

突然終わりを迎えた。

相馬沙織は

卒業式の直前に学校から姿を消した。

文字通り、

ある日を境に学校に来なくなったのだ。

夜逃げをしたという噂が流れたが、

それも誰が言い出したのかわからなかった。

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