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黄昏は悲しき堕天使達のシュプール  作者: Mr.M
九章 Revenge 12月
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第118話 誰か

茜の顔が夕日で紅く染まっていた。

遠くでサイレンが鳴っていた。

その音は俺に葉山の死という

苦い記憶を蘇らせた。

「し、死刑?

 一体何のことだ?」

俺は頭を振って茜に向き直った。

「だって・・言われたの。

 『ひとごろし』は『しけい』だって」

「ちょ、ちょっと待て」

俺の聞き間違いでなければ

茜は今「人殺し」と言ったのか。

「でも大丈夫。

 猿田先生は『じさつ』したことに

 なったでしょ?」


気付けば俺の手の中の煙草が

地面に転がっていた。

俺は煙草の火を足で乱暴に踏み消した。

そして混乱する頭を鎮めるために

4本目の煙草に火を点けた。

大きく吸い込んでから

ゆっくりと煙を吐き出した。

それでも頭は混乱したままだった。

茜は俺に『しけい』にはならないと言った。

『ひとごろし』は『しけい』だが、

ボス猿は『じさつ』だから大丈夫。

という理屈らしい。

意味不明である。

引っかかる点は他にもあった。


・猿田先生は『じさつ』したことに

 なったでしょ?


茜はそう言ったのだ。

つまり茜は

ボス猿が自殺ではないことを知っている。

そして。

茜は俺がボス猿を殺したと思っているのだ。

一体なぜ?

その時。

俺はボス猿が死んだあの日、

靴箱で俺を待っていた茜のことを思い出した。

もしかしたら

茜は屋上で俺の様子を見たのかもしれない。

いや。

たとえそうだとしても

俺がボス猿を殺したという結論に至るのは

無理がある。

茜はボス猿の死体を見ていないはずだ。

俺が屋上に着いた時、

すでにボス猿は死んでいた。

そこで俺は茜の言葉の中の

もう1つの違和感に気付いた。


・だって・・言われたの


茜はそう言った。

文字通り茜は誰かに言われたのだ。

「人殺し」は「死刑」になると。

俺は背筋が凍りつくような寒さを感じた。

俺の知らないところで確実に誰かが動いていた。

「あ、茜。

 お前に『人殺し』は『死刑』になる

 と言ったのは誰だ?」

茜は俺の質問に答える代わりに目をそらした。

「いや、

 俺がボス猿を殺したと

 お前に言った奴は誰だ!」

俺は質問を変えた。

「だ、誰って・・」

茜は言い淀んだ。

「茜!」

俺の声に茜がビクッと体を震わせた。

茜が恐る恐る俺の方を見た。

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