情報収集の第一歩
朝日が高くなる頃、再び冒険者ギルドのクエストボードの前に立っていた。昨夜、クローディアさんの過去と、彼女を狙う組織の存在を知った彼らの表情は、以前のような初々しい期待だけでなく、真剣な決意が宿っていた。
ラインズがボードを見上げながら言う。
「さて、情報収集、まずはクエストをこなしながら、って話だったよな。街中の依頼の方が、手がかりを見つけやすいかもしれない。」
「うん。露骨に探るより、自然だしね。」
ソフィアが頷く。
ロンは、クローディアが無理していないか気にかけながら、ボードを見回す。クローディアは落ち着いた様子で、依頼票に目を走らせている。
「特定の人物に会う依頼や、少し変わった物品の運搬など、単なる討伐以外の依頼の方が…何か見つかる可能性があるかと。」
クローディアが静かに付け加える。彼女の言葉に、三人は納得する。エルフの知識や視点が、早速役に立ちそうだ。
彼らは討伐依頼が多いボードの一角から離れ、街中の依頼が貼られたボードを見る。
「えーと…『旧市街への薬草の配達』、Fランク。報酬300コイン…地味だけど、場所が旧市街か。」
ラインズが依頼票を指差す。
「これ、どうかな? 依頼主も旧市街の薬師らしいし、何か情報持ってるかも。配達なら、不自然なく行けるし。」
ラインズが提案する。
ロンは少し考える。旧市街…あの時の場所に近いかもしれない。ソフィアが心配そうな顔をする。
「あそこ、ちょっと怖かったよね…」
クローディアが、旧市街の地図を見ながら静かに言う。
「旧市街は…独特の気を感じます。他の地区とは違う、古い、混じり合った気配が。」
エルフの感覚だ。彼女の言葉に、ロンは決める。
「よし、これにしよう。『旧市街への薬草配達』。情報収集の、最初の一歩だ。」
「オッケー!決定!」
ラインズが元気よく依頼票を剥がし取り、受付へ向かう。
受付で依頼を受注する。職員は快く対応してくれた。
「旧市街への配達ですね。薬師のイグニスさんのところです。地図はこちらになります。旧市街は道が入り組んでますから、気をつけて行ってらっしゃい。」
地図を受け取り、四人はギルドを出た。
旧市街は、ギルドのある中心街とは雰囲気が全く違った。道は狭く入り組んでおり、建物は古く煤けている。人々の視線も、中心街よりどこか険しい。彼らがここに来ることに慣れていないよそ者であることは、隠しようがない。
スリに遭いかけた場所を通り過ぎる時、ロンは無意識に腰の剣に手をやった。あの時の不気味な男たちと、クローディアさんを狙う組織が、無関係とは思えない。
クローディアが「…この辺りです…」
と、何かを感じるように周囲を見回す。ソフィアも警戒心を強めている。
指定された住所は、特に古びた一角にあった。薬師の看板が傾いている。ノックすると、中から痩せた老人が出てきた。薬師のイグニスのようだ。
「やあ、君たちが届け物かい。助かるよ。」
イグニスはロンたちを見て、安心したような顔をするが、どこか神経質な雰囲気も持っていた。周囲を過剰に警戒しているように見える。
荷物を受け渡し、報酬を受け取る。ロンはパーティーの総意として、思い切って尋ねてみた。
「あの…イグニスさん。実は、この辺りで、何か変わったこと、ありませんか? 最近…不審な人物とか、何か妙な物騒な話とか…」
イグニスは一瞬、表情を凍らせた。そして、小さく、しかし明らかに動揺した様子で首を振る。
「いや…何も知らんな。儂はここで薬を作っているだけだ。若い衆、早く帰りなさい。この辺りは…あまり長居しない方がいい。」
その目は、明らかに何かを隠していた。彼は周囲を警戒するようにちらりと見回し、ロンたちの答えを待たずに素早く扉を閉めてしまった。
イグニスの態度に、三人は顔を見合わせる。明らかに何かを知っている。そして、何かを、恐れている。
「今の…怪しかったね。」
ソフィアが言う。
「ああ。何も知らない、って顔じゃなかった。怖がってた、って感じだ。」
ラインズが頷く。
「クローディアさんの言ってた…独特の気っていうのも、この薬師さんの家とその周辺のことだったのか…」
ロンがクローディアを見る。
クローディアは、薬師の家の扉をじっと見つめたまま、微かに首肯した。
「…ええ。確かに、この家とその周辺からは…普通の魔物や人間の気配とは違う、異様な気配がします。シルバーファングの…気配とも少し違う…もっと…冷たい、歪んだ気配です。まるで…何かを隠しているような…。」
彼女の言葉は、この依頼が単なる配達ではなかったことを示していた。クエストの目的である配達は完了した。だが、彼らは報酬を手にした安堵よりも、新たな謎と、この街に潜む闇の手がかりに触れた緊張感を感じていた。
「薬師のイグニス…組織と関係があるのか、それとも組織を恐れているだけなのか…」
「クローディアさんの感じた気配…これも組織の手がかりになりそうだけど…これが何を意味するのか…どう調べればいいんだ?」
情報収集の最初の一歩は踏み出せた。しかし、それは同時に、彼らが踏み入れてしまった場所の危険性を示すものでもあった。
「…一度ギルドに戻って、報告するか。それとも、この『異様な気配』のあたりを、もう少し…」
ロンの視線は、旧市街の入り組んだ路地の奥へと向けられていた。
情報を得るためには、もっと街の「裏側」を知る必要がある。夜の街の雰囲気を探る必要性を、彼らは肌で感じ始めていた。
「止めておいたほうがよいでしょう。」
クローディアが鋭く制止する。
「というと?」
「恐らくですが…貴方が感じている気配…空気は間違ってはいません。だからこそ、万全ではない今行くのは危険すぎます。私としても正直、裏路地にこのまま行くのは死の予兆をひしひしと感じています。」
「わかるぜ、ロン止めとけ。俺は頭は良くないが、こういうのはやべぇってのは感覚で感じてる。」
「そうだね、止めようか。」
旧市街の闇に触れるのは早い。
それが理解できたのは大きい収穫である。
クエスト報告して資金を増やして装備を整えるが先決と考えを改めるのであった。
闇ギルド「アウトロー」の組織会議にて
そこは薄暗く、危険な犯罪者が集まる場所。
そこで今日も闇ギルドの会議が行われている。
「おい、クロウ。例のエルフの捕獲は?」
「失敗した、他の冒険者の助けによってシルバーファングもやられちまったぜ!すまん。」
「おい!…まぁ、仕方ない。エルフは諦めるか。」
「レイダー、諦めるの早いな。」
「まぁ、エルフは捕獲したいが…無理にやって返り討ちや冒険者ギルドに目をつけられて俺達の誰かがそういうのをやっていることを勘付かれては意味ないしな。」
「エルフにバレてるだろ、いいのか?」
「それは問題ない、証拠がないからな。」
そこには6人の犯罪者がいた。
「あらー?なら他の人はどうなのかしら?」
「ローズ、お前はどうなんだ?」
「ジジイから金を徴収しているわ。」
クロウ、レイダー、バウンスの男3人とローズ、ナージャ、クィーンの女性3人の凶悪犯罪者が集合している。
モンスターテイマー「クロウ」。
アサシン「レイダー」。
装甲鉄騎「バウンス」。
ウィップマスター「ローズ」。
双剣士「ナージャ」。
そして、司令塔「クィーン」。
闇ギルドの幹部6人が運営している。
「レイダー、クロウの失態は許すのか?」
とバウンスが言う。
「あぁ、クロウがやって失敗したんだ。偶々だとしてもあまりこだわらない方がいい。俺達は目立つのは良くない。エルフでも何度も襲ってこちらのリソースを割くのは効率的じゃない。失態に対して罰を与えるのは確かに組織上やるべきかもしれんが…クロウほどのモンスターテイマーが失敗したのは誰がやっても成功するようには思えない。が、クロウは反省しろ。これでいいか?」
とレイダーが返す。
「まぁ、俺もミスはすることはある。レイダーが言うならいい。」
「アタイは組織にダメージがなければいいと思うわ。」
とナージャは興味なさげに言う。
「レイダーさんは甘いですわね。ただ、レイダーさんには自分も助けられているのでクロウのミスには強くは言いません。」
クィーンは真顔で言う。
「そろそろこの街も長居は良くないかもしれないな。冒険者ギルドにも目をつけられている。次のミッションが終わり次第、アウトローの拠点は廃棄し、処分する。」
「レイダーさんは次のミッションは?」
「クィーン、次のミッションは全員で一斉に動く。」
「おぉ?マジか!?なにするんだ?」
「クロウ、落ち着け。次はクレー商会を襲う。お前ら、殺しはあまりするなよ。変に恨みを買いすぎるとあとが大変だしな。」
「商会を襲う時点で変わらんだろ。」
「バウンス、それは違う。襲うと言っても、資金を根こそぎ奪う。クレー商会は各街に拠点があるんだ。だから、やられても補填が本店から来るんだ。だけど、人を殺すと人材的にも少なくなるし、騎士団共が本腰入れてくる。」
「人材少なることが何が問題なんのよ?」
「ナージャ、考えてみろ。商売は基本は人で動く。つまり、人さえいればまた復活できる。復活したらいい感じにまた襲えば金になるなるだろ?つまり、人は生かして金を奪うんだよ。俺達からすれば生きた貯金箱みたいなもんだ。」
「レイダー、頭いいね。」
と会議を続いていくのであった。




