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束の間休息

『封印されし地下坑道』の奥深く、地図に記された休憩ポイント。そこは、他の通路とは異なり、比較的乾燥しており、誰かがかつて設営したと思しきテントや調理場の跡が残されていた。


ロン達は、へとへとになった体に鞭を打ち、その安全な空間へと足を踏み入れた。

ラインズはすぐに持参した焚き火セットで火を起こし、魔導ランタンの揺れる光とは異なる、温かい炎が横穴全体を包み込む。

ソフィアは疲れた表情でマットに座り込み、クローディアはすぐに回復魔法で全員の軽い傷を癒やし始めた。カノンは、入り口の警戒にあたりながら、銃の手入れをしている。


「ふう…助かったぜ。こんな場所があるなんてな。」


ラインズが火に当たりながら呟く。


「あのまま進んでたら、どこかで力尽きてたかもしれない。」


「本当にね。老翁の地図がなければ、発見できなかったわ。」


ソフィアが安堵の息を漏らす。

ロンは、魔物との戦闘や罠の回避で消耗した身体をゆっくりと休ませながら、入手したばかりのアイテムを確認していた。特に興味を引いたのは、宝箱から見つかった色褪せた冒険者の手記だ。彼はそれを広げ、改めて読み始めた。


手記には、この地下坑道のさらに奥深くに潜む、奇妙な魔物たちの生態や、複雑に入り組んだ通路の地図には載っていない細かな特徴、そして、特定の場所で発動する不可解な現象について、断片的な記述が残されていた。


そこには、過去の冒険者たちが感じた恐怖や絶望が、生々しい筆致で綴られており、ロンたちは改めてこの坑道の危険性を肌で感じた。


「この手記…私たちの地図には載ってない情報がいくつかあるわ。」


クローディアが手記を覗き込む。


「特に、魔物の生態に関する詳細な記述は、今後の戦闘に役立つかもしれない。」


「そして、この珍しい鉱石…」


ラインズが採取したばかりの青く光る鉱石を取り出す。


「これ、王都に持ち帰ればかなりの高値で売れるだろうが…」


「それよりも、武器の強化に使えるんじゃないか?」


ロンが言う。


「老翁も言ってた、鉱石や素材が豊富だって。」


ソフィアが鑑定魔法をかける。


「ええ、これは魔力を帯びた特殊な鉱石ね。ラインズの剣やロン君の武器に加工すれば、切れ味や魔力伝導率が上がる可能性が高いわ。」


ラインズは早速、持参していた簡易な道具と火を使って、自分の剣の刃に鉱石を叩き込んでいく。キン、キン、と小さな金属音が響き、剣の刃が微かに青く輝き始めた。


カノンも自分の銃の銃身に、その鉱石の粉を擦りつけるように加工した。

食事を済ませ、体力を回復させながら、ロンたちは今後の作戦について話し合った。老翁の地図には、休憩ポイントのさらに奥に、氷河の滝へと続く『隠された直接通路』が記されている。そこを目指すのが、彼らの最終目標だ。


「手記によると、この先はさらに危険な区域になるらしい。封印された存在の影響が強くなる、と。」


クローディアが真剣な表情で言う。


「魔物の種類も多岐にわたるだろうし、対策は幅広くできるよう、それぞれの準備を確認しような。」


ロンが指示を出す。

一行は、回復薬の残量、魔法の触媒、銃弾の補充、そして食料と水が十分にあるかを確認し合った。休憩ポイントで見つけた過去の冒険者の遺品の中から、まだ使えそうな頑丈なロープや、古い予備のランタンなども確保した。


夜が明け、充分な休息を取ったロンたちは、疲労を回復し、心身ともに充実した状態で、再び旅立つ準備を整えた。


「よし、行くぞ。」


ロンが立ち上がる。彼の瞳には、地下坑道の深部へと向かう決意が宿っていた。

彼らは、焚き火の火を慎重に消し、休憩ポイントを後にした。ランタンの光が、再び闇の中を切り裂く。坑道は、ここからさらに下り坂となり、空気はより一層冷たく、湿気を帯びていた。


通路の壁面には、これまでになかった奇妙な紋様が刻まれ始めている。それは、古代の魔術的な封印の一部だろうか。歩を進めるごとに、その紋様は増え、地面にも奇妙なヒビ割れが見られるようになった。


そして、通路の奥から、複数の低い呻き声と、何かが這いずるような音が響いてきた。老翁の手記にあった、封印された存在の瘴気によって「異常な進化を遂げた魔物」たち。

ロンたちは警戒を強め、剣を構えた。地下の深淵が、彼らを待ち受けている。

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