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王都の影

王都バンデルセンの裏路地。クローディアが掴んだかすかな噂を頼りに、古びた道具屋を探し回っていた。店は滅多に開かないという情報通り、どの扉も固く閉ざされ、埃を被っている。



「本当にここにいるのかしら…?」


ソフィアが不安げに呟く。


「噂は噂だ。だが、他に手がかりがない以上、当たるしかない。」


ロンが答える。彼の目は、路地の隅々まで、何か見落としがないかと探っていた。


ラインズは、店の扉を軽く叩いてみるが、何の反応もない。


「こんな薄暗い場所じゃ、見つけるのも一苦労だな。」


カノンは無言で、周囲の気配に耳を澄ませている。王都の喧騒は遠く、この路地には、どこか忘れ去られたような静けさが漂っていた。


彼らの意識は、地下坑道の情報を持つ人物を探すことに集中しており、王都の外で起きているであろう闇の動きにはまだ気づいていなかった。


その頃、王都から遥か北、氷河の滝へと続く山脈の麓に位置する、荒廃した古代の採掘場跡では、別の戦いが繰り広げられようとしていた。


そこはかつて隆盛を誇った鉱山都市の跡地だが、今では風化した建物が立ち並び、危険な魔物たちが棲みつく廃墟と化している。この採掘場跡には、氷河の滝へと続く複数の隠された地下通路の一つが存在すると噂されており、両組織にとって戦略的に重要な地点だった。


採掘場跡の中心部。アウトローの構成員たちが、数体のモンスターを伴い、奥へと続く通路の確保を進めていた。彼らを率いるのは、アウトロー幹部の一人、『双剣のナージャ』。


二振りの細身の剣を背負い、その全身からは研ぎ澄まされた剣気が放たれている。王都でのバウンス奪還作戦で消耗したとはいえ、アウトローの組織力は健在だ。女王の指示の下、彼らは新たな目的のため、着実に動いていた。彼らの目的は、氷河の滝の「宝」そのものではなく、その奥にあるブラッククラウンへの「道」の確保だった。


「急げ! クィーンは、この通路の確保を急いでいる!」

ナージャが冷徹な声で指示を飛ばす。彼女の視線は、既に通路の奥へと向かっていた。


しかし、その進路を阻むように、採掘場跡の崩れた坑道から、複数の人影が飛び出した。彼らを率いるのは、体格の良い男。その全身からは、灼熱の剣気が立ち上っていた。


「おいおい、こんな場所で何やってんだ? お前ら、アウトローの犬どもか?」


『鷹の目』幹部、『火剣のデヴァイス』だった。彼の背後には、『鷹の目』の一般構成員たちが控えている。盗賊、弓兵、格闘家など、様々な職業の者が混じり合い、それぞれが奇妙な飛び道具や、隠された罠を構えている。彼らの目には、アウトローの活動を邪魔することで得られる「金」へのギラついた欲が宿っていた。


「ここから先は、我々『鷹の目』の縄張りだ! 氷河の滝の宝は、俺たちがいただく!」


デヴァイスが、その体躯に似合わぬ素早い動きで、炎を纏った大剣を構える。


「ほう…『鷹の目』か。貴様らのような小銭稼ぎの集団が、我々の邪魔をするか。」


ナージャの双剣が、静かに鞘から抜かれる。金属が擦れ合う音が、廃墟に響き渡る。


「無駄な抵抗だ。道を空けろ。」


「それはこっちのセリフだ、アウトローの坊や。金にならない喧嘩は御免だが…この場所は、俺たちの獲物だ。」


デヴァイスがニヤリと笑う。

次の瞬間、デヴァイスの炎を纏った大剣が、ナージャ目掛けて振り下ろされた。灼熱の斬撃が空気を切り裂く。ナージャは、その攻撃を紙一重でかわし、二振りの剣が閃光のようにデヴァイスの懐を狙う。


キンッ! カンッ!


金属が激しくぶつかり合う音が、採掘場跡に響き渡る。デヴァイスの力強い一撃と、ナージャの流れるような連撃が、互いの一流の技量をぶつけ合う。


その間にも、両組織の一般構成員たちが激しく衝突する。アウトローのモンスターが突進するが、『鷹の目』の盗賊が目潰し粉を撒き、弓兵が足元に粘性の液体を撒き散らす。アウトローの構成員が苦戦を強いられる中、デヴァイスはナージャの猛攻を受け止めながらも、周囲の戦況を冷静に把握していた。


「数を減らせ! 奴らは消耗している!」


『鷹の目』のリーダー格が叫ぶ。

アウトローは、正面からの力押しや、モンスターの連携を得意とするが、『鷹の目』の搦手や、地形を巧みに利用した奇襲には不慣れだった。採掘場跡の入り組んだ地形は、『鷹の目』の戦術と相性が良かった。


デヴァイスは、ナージャの双剣の嵐を炎の剣で受け流しながら、不敵に笑う。


「どうした? アウトローの剣士さんよ。その程度か? 」


ナージャの表情は変わらないが、その双剣の速度が僅かに増した。彼女は無駄な言葉を返さず、ただひたすらに剣を振るう。


「うるさい!剣嵐乱舞!」


双剣に嵐の如く風を纏い、凄まじい連撃が放たれる。

デヴァイスは炎の大剣で防ぐが、火は風によって混ざり合う。

彼女の双剣は風に炎が纏い、ファイアストームへ変貌する。


「マジか!?負けてられねぇ!業炎乱破!」


炎の大剣は更に炎が勢いが増し、爆裂を起こす。

連撃を繰り出していたナージャは吹き飛ばされる。


「どうやら…簡単には終われないみたいね。」


採掘場跡は、闇の組織同士の激しい衝突の場と化していた。両者一歩も譲らぬ攻防が続き、戦いは泥沼化していく。



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