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他の策を練る

王都バンデルセンに戻り、まず深く休息を取り、『枯れ葉峠の関所跡』での『鷹の目』との遭遇による疲労を癒やした。身体の傷は回復しても、『鷹の目』幹部の圧倒的な実力を前に撤退せざるを得なかった事実は、彼らの心に重くのしかかっていた。


宿の一室で、彼らは今回の出来事について改めて話し合った。


「まさか、アウトローとは別に、あんな組織がいたなんてな。」


ラインズが唸る。


「しかも、幹部は一流揃いか。」


「王都での事件で、アウトローは確かに消耗したど、しょうけど…闇の世界には、他にも厄介な連中がいるってことね。」


ソフィアが顔を曇らせる。


クローディアが今回の情報を整理する。


「『鷹の目』は氷河の滝に宝を求めている。そして、そのルート上の関所を占拠している。彼らの目的は金銭…アウトローとは動機が異なるわ。」


「だが、幹部の実力は本物だ。あのまま戦っていたら…」


ロンは言葉を濁すが、全員が理解していた。あの場での正面衝突は、パーティーにとって致命傷になりかねなかった。 


「賢明な判断だったわ、ロン。」


クローディアが言う。


「無理をして全滅するより、一度引いて態勢を立て直す方が最終的な目的達成のためには重要よ。」


「分かってる…でも、悔しいな。」


ロンは拳を握りしめる。相手の脅威に対して撤退せざるを得なかった。

彼らは、このまま『枯れ葉峠の関所跡』を正面から突破するのは不可能だと判断した。幹部クラスが守る要衝を消耗した状態で力ずくで突破するのは無謀だ。


「『鷹の目』との正面衝突は避けるべきだ。」


ロンが結論をする。

「別のルートを探すか…あるいは、奴らを出し抜く方法を考える必要がある。」


態勢を立て直し、情報を整理し、今後の作戦を練る。王都に戻ってきたことで、クレー商会や魔術ギルドからの新たな情報や支援も期待できるかもしれない。彼らはまず、クレー商会を訪れることにした。


クレー商会王都総本店は、襲撃の混乱から立ち直りつつあった。アンドリュー商会長は、ロンたちの帰還に驚きつつも、すぐに彼らを商会長室へ招き入れた。


「おお、君たちか! 無事に戻ったか!」


アンドリュー商会長はロンたちの無事を確認し安堵の表情を見せた。


「王都を発ったと聞いていたが、まさか数日で戻ってくるとは…何かあったのか?」


「はい、実は…」


ロンはアンドリュー商会長に『枯れ葉峠の関所跡』で遭遇した『鷹の目』という新たな闇組織のこと、彼らが関所を占拠していること、そして幹部クラスの実力を前に撤退せざるを得なかった経緯を報告した。


アンドリュー商会長は、ロンの話を真剣な表情で聞いた。


「『鷹の目』…やはり奴らか。」


アンドリュー商会長は呟く。


「金のためなら何でもやる、厄介な連中だ。まさか、氷河の滝の宝の噂に食いついて、あの関所を占拠していたとは…。」


ロンは、将来的に再び『鷹の目』と対峙する可能性を考え、幹部クラスについて尋ねた。


「アンドリュー商会長、その『鷹の目』の幹部について、何かご存知ですか? 彼らは四人いました。通り名のようなもので呼ばれていました。」


アンドリュー商会長は顎に手を当て、記憶を探るように目を閉じる。


「『鷹の目』の幹部…確かに手練れが揃っていると聞く。通り名で呼ばれることが多いな…確か、『火剣のデヴァイス』、『葬弓のエンダー』、『殲滅魔導のヴィアス』、『千拳のノワール』彼らのことだろう。」

彼は、クレー商会の情報網から得た、断片的な情報をロンたちに共有した。


「『火剣のデヴァイス』は、炎を操る剣士。体格が良く、正面からの戦闘を得意としていると聞く。身長は180cm前後だったか。」


「『葬弓のエンダー』は、毒や呪いを込めた矢を使う弓兵。10代後半の華奢な少女だが、その弓の腕は正確無比らしい。身長は150cm前後だろうな。」


「『殲滅魔導のヴィアス』は、広範囲を焼き尽くす強力な魔法使い。20代前半の妖艶な女性で、その魔法は周囲一帯を更地にするほどの威力があるとか。身長は160cm後半と聞いている。」


「『千拳のノワール』は、驚異的な速度と破壊力を持つ格闘家。30代後半の男で、幹部の中でも一番の巨漢だ。身長は190cmを超え、その筋骨隆々とした体躯は見た者を圧倒するだろう。彼が一番の武闘派で、突破役を担うことが多いらしい。」


アンドリュー商会長は、得られた情報を慎重に吟味するように続けた。


「あくまで噂や断片的な情報だが、彼らがそれぞれ一流の腕を持つことは間違いない。」


アンドリュー商会長は警告する。


「正面からぶつかるのは、今の君たちには得策ではないだろうな。特に、あの四人が揃っているとなると…」


ロンたちは、アンドリュー商会長から得られた幹部情報を真剣に聞いた。通り名と、それぞれの得意分野、そして身体的特徴。これらの情報だけでも、将来、彼らと再び対峙することになった時のための、重要な布石となるだろう。


アンドリュー商会長は、クレー商会の持つ『鷹の目』に関するさらなる情報や、迂回ルートに関する情報を提供することを約束した。また、長旅に必要な物資や、もしもの時のための緊急連絡網についても、改めて支援を申し出てくれた。


クレー商会を後にしたロンたちは次に魔術ギルド「宵の明星」を訪れた。アルドノア賢者は、ロンたちの帰還と『鷹の目』との遭遇について、興味深げに話を聞いた。


「『鷹の目』…なるほど、金銭を目的とする闇組織か。アウトローとは異なる性質を持つ敵ね。」


アルドノア賢者は顎髭を撫でる。


「彼らの戦術…技量を補うための搦手…興味深いわ。」


ロンは、アルドノア賢者に『鷹の目』の戦術や、幹部クラスの存在について詳しく報告した。特に、幹部の一人である『殲滅魔導のヴィアス』について尋ねた。


「『殲滅魔導のヴィアス』…ほう、強力な魔法使いがいると聞いていたが彼女のことか。」


アルドノア賢者は目を輝かせる。


「殲滅魔導…広範囲を対象とする強力な破壊魔法を得意としているのだろう。彼女は20代前半の妖艶な女性と聞いたが…その見た目からは想像もつかない破壊力を持つ。彼女の魔法の系統や、使用する触媒、詠唱パターンなどが分かれば、対抗策も見えてくるのだが…そうだ、基本は隙の多い魔法が多いからそこをつけるようにすれば…」


アルドノア賢者は、ヴィアスのような強力な魔法使いに対抗するための魔法的な知識や、罠を見破るためのヒントなどをいくつか与えてくれた。


そして、ロンが氷河の滝への迂回ルートについて尋ねると、アルドノア賢者は魔術ギルドが持つ古代の文献や、地理に関する資料を閲覧させてくれた。


そこには、『枯れ葉峠』以外の、氷河の滝へと繋がる可能性のある、しかし危険なルートに関する断片的な記述や、その地域に生息する特殊なモンスターに関する情報などが記されていた。


「氷河の滝周辺は、古代の魔力が色濃く残る場所だ。」


アルドノア賢者は言う。


「迂回ルートも、何らかの古代の遺物や、自然の異変に遭遇する可能性がある。注意が必要だ。」


王都の協力組織から得られた情報を持ち帰り、ロンたちは宿で再び作戦会議を開いた。テーブルの上には、アンドリュー商会長から提供された詳細な地図と、アルドノア賢者から借りた資料が広げられている。


「『枯れ葉峠』を正面から行くのは無理だ。」


ロンが地図を指差す。


「迂回ルートを探すしかない。」


「いくつか候補はあるけど…どれも危険が多いわね。」


ソフィアが地図を見ながら言う。


「特に、この『影森』を抜けるルートは、モンスターの目撃情報が多いし…」


「山越えも厳しそうだ。冬が近いから、雪崩の危険もあるだろう。」


ラインズが険しい表情をする。

クローディアが資料をめくる。


「アルドノア賢者の資料によると、この『古の獣道』と呼ばれるルートは、かつて古代の冒険者たちが使っていたらしいけど…今は完全に廃れていて、情報がほとんどないわ。」


カノンは黙って地図を見つめている。彼女の黒い瞳は、どのルートが最も生存確率が高いかを見定めているようだった。

『鷹の目』との正面衝突を避けるという方針は固まった。


問題は、どの迂回ルートを選ぶか、そしてそのルートで待ち受ける未知の危険にどう立ち向かうかだ。そして、迂回している間に、『鷹の目』が宝を手に入れてしまう可能性もゼロではない。


しかし、今回の王都での情報収集で、『鷹の目』という組織、特に幹部クラスの存在と、その危険性を具体的に把握できたことは大きい。将来、彼らと再び対峙することになった時のための、重要な布石となるだろう。


「簡単な道はないか…」


ロンは地図を睨む。


「でも、立ち止まっているわけにはいかない。」


彼らは、得られた情報を精査し、それぞれのルートの危険性と可能性を比較検討した。そして最も可能性が高く、かつパーティーの能力で対処できると判断した、一つの迂回ルートを選び出した。それは険しい山岳地帯と、広大な森を抜ける、長く困難な道のりだった。


王都 カフェ『サンバリア』にて


「色々と道があるみたいだが、どうしたもんかね。」


ロンが頭を抱えていた。

他のメンバー達もどうすればいいか頭をかかえている。


「そうね…私も色々な冒険をして来たけど…今回のルート選定はしっかりとしないといけないわね。『枯れ葉峠の関所跡』はまず、行くにしてもバレないように隠密でいくしかない。しかし…相手に偵察の得意『盗賊』『弓兵』がいるから、まず容易ではないでしょう。成功確率は低いと見て良いでしょう。」


とクローディアが話すが全員反応はしない。

当然である、何故ならバレないように行くにしても相手が多いからである。

バレないように行くには姿を隠せる魔道具や魔法、気配を消したりと色々と手間が掛かる。

現実的ではない。


「他には…『古の獣道』『影森』…あと、カフェに来るまでに他の冒険者に聞いた『封印されし地下坑道』があるわね。」


『封印されし地下坑道』。

地上ではなく地下から行く方法であり、これは『鷹の目』に見つからないかどうかで言えば見つからないと言える。

何故なら地下坑道の入り口は複数にもあり、出口も複数あると言う見張る方にも多大な負荷がかかる場所であるからだ。


更には中は複雑な迷路のようになっており、人が管理してないためか『古の獣道』や『影森』より大変なことになっている。

逆に言えば、他の2つより情報や攻略がない分…ここで相手に勘付かれることが一番ないと言えるし、地上から行って『氷河の滝』の入り口前で待ち伏せされていても、このルートは地下から進んでいくので待ち伏せされてる可能性も一番低い。

北の凍てつく山脈を地下行けるのは結構ありかもしれない。

難易度を除いて。


提案を検討するロンであった。



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