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闇を抜けて、狙われた関所

王都バンデルセンを出たロン達『始まりの戦線』は、北へと続く街道を歩いていた。背後には、まだ復旧作業の喧騒が聞こえる王都の巨大な影が霞む。


空気は凛と澄み渡り、吹き抜ける風が王都での激戦の熱気を冷ましてくれるようだった。一行の心には、疲労と共に新たな旅への期待と、そして道中に潜むかもしれない危険への警戒感が宿っていた。


「やっとここまできたか…」


ラインズが大きく伸びをする。


「王都での騒ぎが嘘みたいに静かだな。」


「それが普通よ、ラインズ。むしろ、あの異常な状況が一時的なものだと信じたいわ。」


ソフィアが周囲を警戒するように視線を巡らせた。

クローディアが魔術で簡素な結界を張り、休憩場所を確保する。ロンはカノンと共に周囲の警戒にあたっていた。


王都での事件後、レイダーに目をつけられたことへの警戒は怠らないが、アウトローもバウンス奪還でリソースを割いたはず。すぐに追ってくるとは思えない、という見立てだった。


王都から北へ数日。街道は徐々に起伏を増し、道の両側には木々が密生する森が広がり始めた。やがて、旅人たちがよく利用する小さな村に差し掛かった。しかし、村は静まり返り、活気がまるでなかった。


「おかしいわね…人がいない。」


クローディアが不審そうに眉をひそめる。

警戒しながら村へと足を踏み入れると、数軒の家屋の扉は打ち破られ、中には荒らされた痕跡があった。何人かの村人が、怯えた様子で身を寄せ合っていた。


「君たち…冒険者さんかね!?」


一人の老人が震える声でロンたちに問いかけた。


「助けてくれ! 酷い盗賊団に…この先の『枯れ葉峠の関所跡』を占拠されてしまってな…!」


老人の話によると、最近になって突如、謎の盗賊団が現れ、この先の峠を封鎖し、旅人から金品を奪っているという。逆らう者は容赦なく傷つけられ、村からも食料や水を徴発されているらしい。


「彼らはただの盗賊じゃない…」


老人は顔を青くして囁いた。


「剣士も弓兵も、魔法使いまでいやがる。それに、戦い方が卑怯なんだ。正面から来ず、罠ばかり…まさに『鷹の目』だ!」


『鷹の目』。

アウトローとは異なる、金と利潤を求める盗賊系ギルド。

聞く所によると、構成員は三流の職業集まりであり、どこのパーティーにも入れない犯罪者達の集まりである。

そのためか剣士、弓兵、魔法使い、盗賊、格闘家、僧兵等の様々な職業が揃っており、職業の幅は広い。

幹部クラスは逆に一流の職業の者が多く、構成員達は技量が大したことのない代わりにそれを埋める「手段」用いる。


氷河の滝にあるという「宝」の噂を嗅ぎつけ、そのルート上にある関所を拠点にしているのだろう。彼らが狙う宝が何なのかは、まだ村人は知らないようだった。


「放っておけないわ。」


ソフィアが毅然と言う。


「このままじゃ、この先の旅人も危険に晒される。」


ロンたちも同意した。『鷹の目』の悪行を見過ごすわけにはいかない。そして何より、彼らが占拠している関所跡は、氷河の滝へと向かう唯一の主要ルートだった。


「よし、行こう。『枯れ葉峠の関所跡』へ。」


ロンが頷く。


「奴らがどんな手を使ってきても、俺たちで突破する。」


一行は決意を固め、静まり返った村を後にし、枯れ葉が積もる寂しい峠道へと足を踏み入れた。


道は徐々に狭まり、両側を深い森と岩壁に挟まれる。頭上には、まるで獲物を探すかのように、鷹の影が旋回していた。

ロンたちは慎重に進む。


一歩足を踏み出すたびに、どこかに罠が仕掛けられているのではないかと警戒する。

しかし、彼らの警戒を嘲笑うかのように、突然、足元の枯れ葉が沈み、鋭い木の杭が無数に突き出した。


「伏せろっ!」


ラインズが叫び、素早くロンとクローディアを突き飛ばす。間一髪、ロンたちがいた場所に杭が突き刺さり、土煙が上がる。


「やはり、歓迎の罠か…!」


カノンが銃を構える。


「ほう…この程度の罠で回避するとは、噂の『始まりの戦線』は伊達じゃないな。」


木々の影から数人の人影が現れた。彼らはそれぞれ、錆びた剣や粗末な弓、怪しげなローブ、あるいは奇妙な籠手などを身につけている。その眼には、油断と、そして獲物を見つけたかのようなギラついた光が宿っていた。


「ここから先は、『鷹の目』の縄張りだ。旅人よ、おとなしく金品を置いていけば、命だけは助けてやるが…?」


「嫌だと言ったら?」


「殺す。」


戦いの火蓋を切られたのであった。

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