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ロングソードから始まる物語  作者: Nexus
王都『バンデルセン』
21/35

王都での情報収集、準備

「…頭がパンクしそうだぜ…」


夜明けの目のアジトを出て、再び王都の夜の喧騒の中へ戻った時、 ラインズ が額を押さえて呟いた。


ソフィアも顔色が優れない。


「ブラッククラウンが…大災厄を呼び出す鍵になるなんて…」


彼女の魔法使いとしての感覚が、その言葉の持つ恐ろしさを感じ取っている。


「私たち…本当にそんなことができるのかな…?」


クローディアは、アジトで聞いた古代人様のこと、エンシェント族の長い歴史、そして氷牙の滝の番人について考え込んでいる。


「情報が増えるほど…自分が知っていた世界の狭さを実感します。使命の重さも…」


カノンは、アジトを出てから一度も言葉を発していない。ただ、その黒い瞳は、王都の夜空を見上げている。何を思っているのか、ロンには分からなかった。


ロンは、ラウルたちの言葉、特に

「君たちに見定めさせてもらう」という言葉を反芻していた。夜明けの目は敵ではなさそうだが、完全に味方でもない。彼らの協力を得るには、結果を出すしかない。そして、最初の結果は「氷牙の滝でブラッククラウンを見つけること」だ。


「大丈夫だ。」


ロンは仲間たちに声をかけた。


「情報収集と、準備はできた。俺たちは冒険者だ。託されたなら、やるしかない。」


彼の声は少し震えていたが、その瞳には決意が宿っていた。

彼らは、宿に戻る前に、まずは夜明けの目から得た情報を整理することにした。アジトの近くの、人気のない場所で立ち止まる。ラウルから渡された、氷牙の滝に関する簡潔な記録と、口頭で聞いた情報を手帳に書き込む。


「氷牙の滝…北の凍てつく山脈…ブラッククラウンの封印場所…番人がいる…情報が隠されている…アウトローも狙っている…」


ロンが読み上げる。


ラインズ が身震いする。


「凍てつく山脈、ねぇ…寒いの苦手なんだよな…」


「攻略情報ももらったけど、これはあくまで『夜明けの目』が知っている情報だ。」


クローディアが言う。


「氷牙の滝の地理、気候、そこにどんな魔物がいるか…もっと詳しい情報が必要でしょう。特に、番人や封印術式に関わる情報も。」


「となると…図書館か。」


ソフィアが提案する。


「王立図書館なら、古い記録がたくさんあるはずよ。」


「王都自警団も外せないな。」


ラインズ が続ける。


「街の事件や、最近の不審者の情報に詳しいのは彼らだ。アウトローが王都を通ったルートとか、北へ向かったタイミングとか、何か掴んでるかもしれない。」


彼らは宿に戻り、短い休息を取った後、翌日から王都の街へ繰り出した。


まず彼らは、王都で最も権威ある場所の一つ、王立図書館へと向かった。荘厳な石造りの建物には、数えきれないほどの文献が収められている。


図書館の受付には王立魔術院あるいは宵の明星に関連すると思しき、落ち着いた雰囲気の魔術師たちがいた。彼らは冒険者ギルドの紹介状を示し、北の凍てつく山脈、特に氷牙の滝に関する古い記録や地理情報を調べたいと伝えた。


「氷牙の滝、ですか…あまり古い記録は残っていない場所ですが…」


一人の司書が、ロンたちに古文書の目録を示した。

ロンたちは、クローディアを中心に、氷牙の滝や北の山脈に関する文献を調べ始めた。埃を被った古文書、詳細な地形が記された地図、古の伝説や伝承の記録。時間はかかったが、いくつかの有用な情報を発見した。


* 氷牙の滝周辺の気候は、単に寒いだけでなく、特殊な魔力の流れによって極端な低温が保たれていること。


* 山脈には、冷気や氷を操る特殊な魔物が多数生息していること。


* 遥か昔、その滝の周辺で、何か強大なものが「封じられた」という伝説が残っていること。しかし、その詳細は曖昧だ。


次に、彼らは王都自警団『ステラアイ』の詰所を訪ねた。王都の治安維持を担う彼らは、街の事件や不審者に関する情報に詳しい。詰所には、騎士然とした者、魔法使い風の者、武闘家タイプなど、様々な人々がいた。王都の門番も彼らが行っている。


ロンは自警団の団員に、最近、北の街道へ向かった不審な人物や、その方面での変わった出来事について尋ねた。


「北の街道ねぇ…最近だと、妙に手練れっぽい二人組が、急ぎ足で北へ向かったって報告が上がってるな。」


隊長は顎髭を撫でながら言う。


「身分は冒険者と名乗ってたらしいが、どうも雰囲気が尋常じゃなかったとか。」


「二人組…アウトローか。」


ラインズ が小さく呟く。


隊長は続ける。


「あとは、山脈近くで、最近、妙な吹雪が発生したとか、珍しい魔物が出たとか、そんな噂も聞くな。まあ、あの辺りは元々気候が不安定なんだが。」


夜明けの目から得た情報に加え、図書館での記録、そして王都自警団からの現場情報。これらを組み合わせることで、ロンたちは氷牙の滝への道程、環境、潜む危険、そしてアウトローの動きに関する、より具体的なイメージを掴むことができた。


情報の統合の結果、氷牙の滝を攻略し、そこで眠るブラッククラウンに辿り着くためには標準的な装備では不十分であることが明確になった。極端な寒さ、特殊な魔物、封印術式、そしてアウトローとの遭遇。これら全てに対処できる特別な準備が必要だった。


情報収集を終えた彼らは、早速王都の市場や専門店へと向かった。目的は、氷牙の滝攻略に必要な特別なアイテムと装備を揃えることだ。


まずは武器屋。ここでは、氷壁を登るための強化されたピッケルや、岩のように硬い魔物に対抗するための特殊な加工が施された武器を探した。


「北の凍てつく山脈に行くなら、普通のピッケルじゃ歯が立たないぜ。この『氷砕き(コオリクダキ)』ピッケルなら、硬い氷も岩もいける!」


ラインズ は武器屋の店主から勧められた頑丈なピッケルを手に取り、その重さを確かめている。


ソフィアはアイテムショップへ。寒さに対抗するポーション、魔法のランタン、そして凍結状態を解除するアイテムなどを探した。店主は様々な効能のアイテムが並ぶ棚を案内する。


「氷牙の滝周辺は魔力も特殊だから、普通の耐寒ポーションじゃ効き目が弱いかもしれないわね。この『温熱の結晶』を使ったポーションなら、体の芯から温めてくれるはずよ。」


ソフィアは店主の説明を聞きながら、いくつかのポーションと魔法のアイテムを選んだ。


クローディアは雑貨屋で、保存食、寝袋、そして特殊な素材で作られたロープなどを探す。彼女のエルフの知識は、素材の品質を見抜くのに役立った。


「この繊維は…ただの麻ではないわね。低温でも劣化しにくい性質がある。山脈での使用に適しているわ。」


クローディアは、他のロープよりも高価だが、品質の高いロープを選んだ。


カノンは、自身の銃と防具、そして必要な道具全般を見直す。彼女は無言で、しかしその鋭い目でアイテムの一つ一つを吟味し、実用性と信頼性を確認していく。


ロンは、皆が必要なものを揃えているか確認しつつ、全体の予算を管理する。冒険者ギルドから支給された活動資金と、これまでのクエスト報酬を合わせても、これらの特別な装備は決して安くはない。しかし、これから挑むのは世界の命運をかけた使命だ。出し惜しみはできない。


特に重要なアイテムとして、クローディアが図書館で得た情報に基づき、封印術式に関わる可能性のある「古代の儀式用ナイフ」を雑貨屋の片隅で見つけた。それは見た目は古びたナイフだが、クローディアにはそこに微かな魔力の残滓が感じられた。店主はただの古物として扱っていたようだが、クローディアはそれを他の道具と共に購入した。このナイフが、氷牙の滝の封印や番人に関わる重要な鍵となるかもしれない。


アイテム収集は、王都という大都市の豊富な品揃えのおかげで、比較的スムーズに進んだ。必要なリストは全て揃った。それぞれの手に、これから挑む厳しい旅と戦いを物語る、新しい装備の感触があった。


情報武装を終え、必要な準備を整えた。

あと、協力を仰げないか純白の騎士団に確認しに行くか。

闇ギルドのアウトローを放置するようなことはないはず。

信じてもらえるかは分からないが、大災厄に関わるかもしれない危険な犯罪組織。

もし、協力が得られるなら今後アウトローの構成員や幹部を捕まえた際に有益情報が得られるかもしれない。

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