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ロングソードから始まる物語  作者: Nexus
王都『バンデルセン』
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夜明けの目

「こちらへ。」


ラウルが促す。ロンたちは中央に置かれたテーブルを囲むように席に着いた。


彼の言葉に、皆の顔に緊張が走る。


「『エンシェント族』…」


クローディアが静かに呟く。エルフの歴史にも、そのような名の古き一族が記録されていたような…曖昧な記憶が脳裏をよぎる。


ラウルは、ロンたちの反応に頷く。


「我々エンシェント族は、『大災厄』とその再来を防ぐこと、そして『古代人様』の意志を守り、彼らの知識と希望を未来へ繋ぐことを存在目的としている。」


彼の声は穏やかだが、その言葉には数千年にも及ぶ重みが込められている。


「約五百年前より、世界の表舞台から身を隠し、人知れず活動を続けている。」


五百年…その長い歴史が、「夜明けの目」の情報網と行動力を支えているのだろう。

ラウルは、同席している数人のメンバーを紹介した。

「こちらは、我らの知識の継承者、『賢者』エラスムス。」


白髪に長い顎鬚を蓄えた老人が静かに一礼する。その瞳の奥には、深い知恵が宿っているように見える。


「そして、情報収集と実働を担う、『斥候』リリア。」


若い女性が、鋭い目つきでロンたちを一瞥する。彼女の身のこなしには無駄がない。


エラスムスが、ゆっくりと口を開いた。


「『星詠みの箱舟』にて、我々が待ち望んだ『希望を運ぶ者』が目覚められたと聞き、安堵いたしました…そして、君たち『始まりの戦線』が、彼らに選ばれたと。」


やはり、「星詠みの箱舟」で目覚めた古代人は、エンシェント族にとって「古代人様」と呼ばれる存在であり、そして他にも目覚めた古代人がいることを示唆している。

「なぜ、私たちに声をかけたのですか?『夜明けの目』は、私たちに何を望んでいる?」


ロンが真っ直ぐに尋ねる。


ラウルはロンを見据える。


「単刀直入で良い。君たちは、『星詠みの箱舟』で真実を知り、『ブラッククラウン』収集という使命を託された。しかし、世界の現状について、そして君たちが追う『アウトロー』について、まだ知らないことが多すぎる。」


エラスムスが言葉を継ぐ。「我々エンシェント族は、長きにわたりブラッククラウンと大災厄、そしてアウトローの動きを追ってきた。君たちが使命を果たすには、我々が持つ情報が必要となる。」


「アウトローは…ブラッククラウンを使って、何をしようとしているのですか?」


ソフィアが恐る恐る尋ねる。


リリアが初めて声を発する。その声はクールだ。


「奴らは、ブラッククラウンの力を使って、『虚無』を…大災厄そのものを、再びこの世界に解き放とうとしている、あるいは制御しようとしている。」


その言葉に、皆の顔色が変わる。大災厄を退けるためのブラッククラウンを、アウトローは逆に大災厄を呼び出す、あるいは制御するための道具として使おうとしているのだ。


「私たちは…古代人様から、『氷牙の滝』に最初の一つが眠っている、と…」


ロンが、王都で情報が隠されていた場所の名前を口にする。

エラスムスが頷く。


「うむ、氷牙の滝は、ブラッククラウンの一つが封印された場所の一つだ。その情報は、我々『夜明けの目』が、不用意な者やアウトローの手に渡らぬよう、意図的に隠蔽している。」


「あの場所は…単なる滝ではない。」


リリアが付け加える。


「古代の術式によって守られており、容易には近づけない。そして…封印を守る『番人』もいる。」


番人…!ブラッククラウンは、ただ失われただけでなく、今なお強固な守りによって封じられているのだ。それはアウトローにとっても容易ではないはずだ。

ラウルがロンたち五人を見渡す。


「君たち『始まりの戦線(ファーストライン)』は、古代人様に選ばれた。そして、ブラッククラウン収集に足る力と可能性を示した。」


彼の瞳に、確固たる意志が宿る。


「我々『夜明けの目』は…君たちに協力しよう。情報を提供し、必要であれば、我らの力の一部を貸そう。」


唐突な協力の申し出に、ロンたちは警戒しつつも、その言葉の重さを感じていた。彼らは単なる情報屋ではない。古代人様に仕え、大災厄と戦う数百年の一族だ。


「ただし…」


ラウルは条件を付け加える。


「君たちが本当に『希望を運ぶ者』に足る存在か…我々は見定めさせてもらう。そして…我々の『古代人様』に危機が迫る時、君たちには力を貸してもらいたい。」


夜明けの目は、ロンたちに一方的に使命を押し付けるのではなく、彼らの力量を測りながら、互いに協力し、利用し合おうという関係を提示してきたのだ。それは、ギルドの依頼とも、古代人からの使命とも違う、複雑な繋がりだ。


ロンは仲間たちに目を向けた。 ラインズ、ソフィア、クローディア、カノン。皆、真剣な顔でこの状況を受け止めている。ラウルたちが持つ情報は、ブラッククラウンを巡る旅において、喉から手が出るほど欲しいものだ。そして、彼らが敵ではないのなら、これほど頼りになる存在はない。

ロンは再びラウルに向き合った。


「分かりました。『夜明けの目』…ラウルさんたちの情報を受け取ります。そして…協力関係を結びましょう。」


ロンの言葉に、ラウルは満足げな笑みを浮かべた。エラスムスは静かに頷き、リリアの警戒心も少し緩んだように見える。


「賢明な判断だ。」


ラウルは言う。


「では、氷牙の滝について…まずは、その場所への詳しい道程と、近づくための攻略情報について話そう…」


夜明けの目との情報交換が本格的に始まる。ブラッククラウンを巡る争いは、アウトロー、そして夜明けの目という二つの勢力が複雑に絡み合い、ロンたち始まりの戦線は、その渦の中心へと足を踏み入れたのだ。


王都バンデルセンの隠されたアジトにて、彼らは世界の命運をかけたクエストに必要な数々の真実と新たな協力者そして見定める目を手に入れた。



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