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ロングソードから始まる物語  作者: Nexus
ブラック クラウン
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記録庫と託された使命


「…そうだ…我々が…長きにわたり…この『星詠みの箱舟』にて…眠りについて…待ち望んでいたのは…お前たちのような者だ…希望を…未来へ…運ぶ者…」


古代人の言葉は、ロンたちこそが、彼らが数千年待ち続けた「冒険者」であると断言していた。 ラインズ、ソフィア、クローディア、そしてカノン。それぞれが驚愕と緊張の中、古代人の言葉に耳を澄ます。

ロンは、必死に思考を巡らせながら、リーダーとして、そして古代人に選ばれた冒険者として、震える息を整え、次の問いを発した。


「その…大災厄…とは…一体、何だったんですか…?」


古代人は、ロンの問いに、その瞳の光をわずかに強めたように見えた。そして、ゆっくりと首を巡らせ、施設全体を見渡す。


「それは…容易く…語れることではない…我々の…文明世界を…滅亡の淵へと追いやった…絶望そのもの…だが…真実を知らねば…未来はない…」


古代人は、自身が眠っていた水槽の奥、施設のさらに深部にあるであろう場所を、視線で示した。


「我々の…『記録』を見よ…そこに…全てが…示されている…」


その言葉を受け、ロンたちは古代人に促されるまま、施設のさらに奥深くへと足を踏み入れた。古代人は、水槽から完全に起き上がったわけではないのか、あるいはこの部屋から動けないのか、ロンたちに先に行くよう促すようだ。彼らは、施設の静かな案内に従うように、滑らかな通路を進んでいく。


施設の奥は、手前以上に整然としていた。通路の壁はさらに光沢を増し、空気は一点の埃もなく澄んでいる。いくつかの区画を通り抜け、彼らは円形の広い空間に辿り着いた。そこは、壁一面に光るラインが走り、中央には巨大な結晶体のようなものが静かに鎮座している、神殿のようでもあり、図書館のようでもある場所だった。ここが、「記録」が保管されている場所らしい。


古代人は、その場所を視線で示し、ロンたちに語りかけた。


「その…『星詠みの結晶』に…我々の…記録は…収められている…触れよ…」


ロンは緊張しながら、中央の結晶体『星詠みの結晶』に手を伸ばし、触れた。結晶体が淡い光を放ち、周囲の壁一面に、無数の古代文字や図形が立体的なホログラムのように浮かび上がる。それは膨大な情報量だった。同時に、古代人の声が、ロンたちの頭の中に直接響いてくる。それは古代語だが、奇妙なことに内容は明確に理解できた。その後に更に映像が流れてくる。


それはこの街が健在だった遥か昔。

虚無はやってきた。

空を覆う虚無の軍団。

虚無の兵士が人々を襲い、虚無の兵士は人ではなかった。

しかし、とある武器を持った人が虚無の兵士を退けていく。

その武器は黒かった。

映像が終わると、古代人話す。


「…大災厄…それは…『虚無』より来たる…世界を…浸食する…絶望…」


「我々の文明は…それに抗うため…希望の『超兵器』…『ブラッククラウン』を生み出した…」



浮かび上がるホログラムには、様々な形状の武器の設計図や、戦う人々の姿、そして都市が危機に瀕する様子が描かれている。剣、大剣、槍、弓、斧、鎌、盾剣、そして銃。リストアップされたブラッククラウン武器の種類と、それぞれの持つ驚異的な能力が、視覚情報と共にロンたちの脳に直接流れ込んでくる。それは、まさに超兵器と呼ぶにふさわしい力だった。空間を断ち切る剣、次元を超える弾丸、あらゆる攻撃を吸収する盾…


「ブラッククラウン…!」


ラインズ が息を呑む。


「すげぇ…これが…」


「アウトローが盗んだ『古代遺物』は…」


ソフィアが呟く。


古代人の声が続く。


「…そうだ…盗まれた『古代遺物』…それは…『ブラックソード』…ブラッククラウンの一つ…箱舟の機能を起動させる…鍵となる武器…」


ロンは、自分の剣の柄を握りしめた。アウトローが盗んだ古代遺物が、ブラッククラウンの一つ、「ブラックソード」であり、しかもこの都市「星詠みの箱舟」を起動させる鍵だったという真実。そして、アウトローがそのブラックソードを手に入れた今、この都市の機能や、ここに眠る古代人がどうなるのか…新たな、そして差し迫った危険が明らかになる。


ホログラムはさらに続く。大災厄とブラッククラウンの最後の戦い。ブラッククラウンの力が虚無を退けるも、代償として、武器自身が砕け散り、世界中に散らばっていく様子。そして、生き残った古代人たちが、箱舟に眠りにつき、未来の希望に全てを託す決意。


「ブラッククラウンは…大災厄の後…世界中に散逸した…所在は…不明…」


古代人の声に、僅かな無念さが滲む。


「しかし…虚無は…完全には…退いていない…再び…この世界を…脅かすだろう…」


古代人の言葉に、未来への脅威が示唆される。大災厄は終わっていなかった。


「そして…ブラッククラウンは…その時…必要となる…最低…八つある…ブラッククラウンの内…四つ…四つ以上が…必要だ…」


浮かび上がる情報から、大災厄を完全に退けるためには、ブラッククラウン武器が複数必要であり、その最低数が「4つ」であることが示される。

古代人は、ロンたち五人を見据えた。その瞳に、数千年の希望が込められている。


「…我々は…待っていた…希望を運ぶ…『冒険者』を…」


「…お前たちに…託す…ブラッククラウンを…集めよ…」


「…虚無より…未来を…守るため…」


そして、最後の情報がホログラムに浮かび上がる。それは、ブラッククラウンが散逸した場所の、あるいは最初の一つを見つけ出すための、具体的なヒントだった。それは、古代の地理を示す地図の一部であり、「北の凍てつく山脈…『氷牙の滝』に…最初の一つが…眠る…」という古代文字による記述が添えられている。


「北の…凍てつく山脈…氷牙の滝…」


ロンが手帳を取り出し、その地名を書き留める。


「ここが…次に行くべき場所か…」


ラインズ が拳を握る。

ソフィアとクローディアは、受け止めた情報の大きさに、顔を強張らせている。カノンは無言で、しかしその瞳には、新たな使命に対する静かな決意が宿っていた。


大災厄の真実。超兵器ブラッククラウン。そして、それらを巡るアウトローの暗躍。全てが明らかになり、ロンたち「始まりの戦線」に、世界の命運をかけた、想像を絶する使命が託された。盗まれたブラックソードを追う旅は、失われたブラッククラウン全てを見つけ出す、壮大なクエストへと変わったのだ。

ロンは、古代都市の空を見上げた。ここに来るまでの自分たちの旅は、この大きな物語の序章に過ぎなかったのだと知る。隣には、共に真実を知り、使命を受け止めた仲間がいる。

彼らは、星詠みの結晶の前で、互いに顔を見合わせた。


「…行こう。」


ロンが、覚悟を決めた声で言った。

古代都市の空の下、新たな使命を胸に、五人は次なる目的地、「北の凍てつく山脈、氷牙の滝」へと旅立つ決意を固めた。

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