霧の向こう
新たな登場人物
酒田平治 頭の回転が早く、たくましい大柄の男
原田貫太 頭が良く、常に冷静を保つ小柄な男
相澤龍平 たくましい筋肉を蓄えた男。実践的な訓練での成績はトップだが、頭を使うのはやや苦手
霧に入ってから長い時間がたった。
負傷者の応急処置が終わり、疲れ果てた船員は眠りについていた。
霧の中を進む秋麗は半分が焼け焦げていて破損箇所がいくつもあった。
「うわっ」
丑作は悪夢で眠りから覚めた。
「はぁ、今はどこだ?」
丑作は船内から甲板に出た。
「うっ」
日が登って、朝になっていた。
「誰か起きている人はいないのか?」
あたりを見渡すと船首に3人の人影があった。
丑作は船首へ向かった。
「陸だ」
「陸だな」
「帰ってきたか」
3人は弾んだ声で話していた。
「陸だって?」
丑作が訊く。
「ああ、陸だ」
「どこかはわからないけどね」
「なんでだ?」
「あの霧のせいでコンパスがイカれて星も見えないからどこにいるのか分からなくなっちまったんた」
「そうか」
この三人の男は左から順に「酒田 平治」、
「原田 貫太」、「相澤 龍平」と言う。
海軍に入隊した時に知り合った仲間である。
「それよりみんなが無事で良かった」
「ああ」
龍平がいう。
「俺は片手動かねぇんだぞ」
と平治はいう。
「こんなに死者が出た中でそれだけで済んだならいいほうだよ」
貫太がいう。
この時、死者は102人増えていた。
海の上でしっかりとした医療を受けられなかった重症者達は次々に命を落としていた。
その時、秋麗の前には木製の船があった。
「なんかいるぞ」
「なんだよ平治」
龍平が訊いた。
「あれだよ」
「んー、あのいかにも海賊船みたいなの?」
「ああ」
「近づいてみるか?」
「艦長がどう判断するかだよ。でもここで訊いてみないといつまでたっても海を彷徨うかもよ」
そして、艦長が指令を出した。
「我々はあの船に接近する。念の為いつでも戦える準備をしておけ」
そしてその不安は的中した。秋麗が船に近づいたその時、船から大砲が放たれた。
「うわっ、なんだあいつ」
するとブザーが鳴り、伝声管から艦長の
「総員戦闘態勢」
という声が響いた。