遺伝子破壊の可能性
途中で少しだけグ□注意な部分があります。
苦手な方は回避をお願いします。
ある日ある時ある場所で。
倫理観をまるっと無視した実験をしたくて、国籍を抹消して名前すら捨てたヤバい科学者が、その彼がヤバい実験を始めようとしていた。
「ふふふふ。 生物に強力な紫外線等の高エネルギーを当て続けると遺伝子が破壊されるという。 どうせ遺伝子なんざいくら壊されても勝手に繋がって遺伝子らしさを取り繕う様に動くんだ。 だったらどんな遺伝子に変わるかを観察して研究したいに決まっているだろう」
それは禁忌とも呼んで良い、人体実験を熱望していた。
もちろんこんな思考は危険とされ、どの国でもNOを出されて追い出された。
…………極一部のアレな国は裏からはむしろ「ぜひ来て欲しい」と誘われたが、それに関しては身の危険を本能的に感じたので、科学者の方からNOを出して逃げた。
後に後ろ暗い人達のネットワークでその国に誘われて渡って行った科学者達の末路を知り、自身の判断は正しかったと知る。
それで今は後ろ暗い連中の楽園と呼ばれる場所にて潜伏し、目的の実験機材をなんとか揃え、ワクワクしている所である。
被検体は主に子供。
まだ未熟な体であり、遺伝子にある図面を目指して建築中とも言える。
その図面の一部を壊したら、どんな変化があるのか。
図面がどう辻褄を合わせて、大人の体に成長させようとするのか。
マトモな人が聞いたら正気の沙汰とは思えない実験だが、研究が進めば整形以外で後天的に……しかも体にメスを入れないで理想の身体となれる整体術として、安全に施術される未来が来るかもしれない。
その為には自分が喜んで世紀の大狂人の汚名を被ろう。
全ては人類の未来の為に。
……と妄想している、実際は倫理観0な実験が大好きなただの狂科学者だった。
所でこの実験は、実のところ週イチ間隔で行われている。
なにせこの後ろ暗い連中の楽園の中では、人の命が安いので。
この地での平均1ヶ月分……先進国では1週間前後分だろうか? の給金をやるから実験台になってと呼びかければ、アチコチから手が挙がるのだ。
「さあ、今回の実験ではどう変化してくれるかな? 成長したら目や指や腕や足が増える流れは見飽きたし、顔面が崩れるなんてもう見たくないし、欠損だって望まない。
頭にネコミミが生えるとか、トカゲみたいな肌になるとか、未知の物質を溜め込む臓器が増えたとか言った、ファンタジーな変化が見たいんだよなぁ」
事前調査を済ませたカルテを見ながら、彼はつぶやく。
そこには被験者の全体写真や遡れるだけの血族の写真。 それと普段の食生活と病歴、そこから推測される実験台にならなかったらこう成長していたと言う予想図等。
ありとあらゆる情報が記録されていた。
狂科学者のやっている事は遺伝子の変化なので、どう変化したのがが分からなければ意味がない。
だからこそ、綿密なデータ取りは重要なのだ。
「あと、今は子供にばかり実験してるけど、そろそろ成熟した人の体にも手を出すべきか? 成長して変化が固着するまでの年数を待つのが、そろそろ面倒臭くなってきた」
ついでにグチをひとつまみ。
「でもなぁ。 自身を実験台にしたら性別が変わっていった話をしても信じてもらえなかったからなぁ。
遺伝子に変化を起こした訳だから、遺伝子学的に別人だって判定を出されて、自身の失踪・行方不明の重要参考人扱いされた時は流石に笑ったなぁ。
それが別の人でも起こる事を考えると、ちょっと手を出しにくいんだよなぁ」
カルテを見るその姿は、曲線に彩られている明らかな女性特有のもので、男性だと主張されても簡単には信じられない。
彼が国籍を抹消された背景にはコレが有ったことも否定できないだろう。
「そうそう。 性別的な肉体の変化も子供では発生してないな。 これも遺伝子破壊での変化で研究するのもアリか?」
思い悩む姿は実に絵になる美女だが、実際は男性であり狂科学者である。
そんな狂科学者の実験の日々は、続く。
どれだけ狂った実験だろうと、最初の実験は自分の身で試す科学者の鑑。
なおそんな変化は多分起きないので、期待は禁物でございます。
枯葉剤散布で発生した様な、人体が崩れる系のこれが人間の所業なのか!? と絶叫したくなるような、ロクでもない変化ばかりだと自分は思っとります。