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ダンジョン.20



〜シオンが目覚めて一週間が経過〜



「はい、あーん」

「え、いや自分で食べるから」


「そういってこないだも食べなかったでしょ、人参」

「......(バレてたのか)」


「シオンの残した人参、私が食べたんだけど」

「ご、ごめん。わかった、食べる......食べるよ」


「はい、あーん」

「いや、それは自分で、むぐっ!?」


「ふふんっ♪」

「......むぐ、もぐっ」


「食べれた?おくちに残ってない?」

「食べた食べた......見ようとしないで!?隠してないよ!?」


「ふふっ、偉い偉い。よーしよし」

「な、なに、なんで撫でられてるの僕!?」


「あ、ご、ごめん......つい。えへへ」

「いや、謝らなくても良いけど......は、恥ずかしいから。こっちこそごめん」


「えへへ」

「......い、いつもありがとう。メイ」

「んーん。私、メイドさんだからっ」






「......」


「どうかしたんですか?ジヴェル様。シオン様の部屋の前で」

「む。ああ、アスタか。......なんだろうな、私がメイを連れて来といたのに、こんなことを言うのもあれなんだが.......」


「?」

「こう、これ程までに仲良くやられてしまうと......ちょっと、もやもやする」

「ぷっ、ちょっとジヴェル様!嫉妬ですか?かーわいーっ!」

「......む、ぐ......」


「あ、そーだ。ジヴェル様、それはそーと夕方から交流集会がありますからね。お忘れなきよう」

「わかっている。毎月のやつだろう。国の三大貴族がこの屋敷にくる......奴らの視線。監視されているようで辟易するな」


「まあ、ジヴェル様!またそのようなことを言われて!いけませんよ。確かにこの集会にはそういった意味合いもあるのでしょうけど、私達にも国内外の情勢や町の情報を得られるというメリットがありますし、何より援助していただいている身なんですから」


「え。いや、それは私がこの国の抑止力になってるお礼的なあれでは......」

「はい、そうです。けれど、いただいているお金は民の方々が汗水を垂らし働き稼いだお金から出た国税、その一部。感謝の気持ちを持って彼らに協力なされたほうが良いかと。.......それに、抑止力といってもほとんど働いてないですからね、ジヴェル様」


「お、お前.......キツイこというなあ」

「お忘れですか?私の主人はジヴェル様ですので」

「.......まあ、そうだな」


「そう言えばジヴェル様。血族会議の方は?もうそろそろですよね?」

「......ああ。今月のは中止になった。三日前に連絡がきていてな」


「何故中止に?今までそのような事は一度たりとも無かったように記憶しておりますが」

「さあな。だが、おそらくイデアが関係していると私は思っている」

「ジヴェル様の姉上様ですね。それはどうして」


「最近妙に私へと突っかかってくる」

「......なるほど」


「いや、以前から嫌がらせは受けていたが、ここ最近はどんどんと酷くなってきている。あの感じだと、おそらく近々私を狩ろうと仕掛けてくるだろう......まあ、正しくは【魔女の魂】を、だがな」


「しかし、それと今回の会議が中止になった件にどのような関係が?」


「会議を中止させられる程の権限を持つ者は七人の姉妹の内、上の三人だけ。そしてその内の一人、イデアが「もしかすると一度だけ会議に参加出来ない月があるかもしれない」と前々から言っていたからな......それが今回の会議なのだろうよ。はっきりとした理由は議長からは聞かされていないがな」


「.......それが、もしそうだとして......それって、ジヴェル様を殺しにくると言うことですか?」

「お前はいつも物言いが直接的だな。まあ、そういう事だ」

「大丈夫なのですか?」


「大丈夫?私がか?......舐めるなよ。私はこの魔界において最強を謳われる魔族だぞ。例え姉妹殺しを禁じられているとはいえ、撃退するくらいの事は出来る。なんならもう二度と喧嘩を売られぬように.......」


ジヴェルは自身の言葉を忌まわしく感じ嘲笑った。


「まあ......だからこそ、姉上は私を殺したいのかもな......妹の分際でありながら、姉以上の力を持つ私を」


「ジヴェル様......」


「いや、まあ......心配するな。私がいる限りお前たちには手出しさせない」

「......はい」





〜夜〜




――コンコン、と次から次へと扉のノッカーが打ち鳴らされる。今日が交流集会だとは聞いていたけど、いつも以上に人が多いように思える。


いや、思える......というか、実際いつもより多い。その理由は簡単で、集まった貴族の方々が家族を連れてきたからだ。ぞろぞろとリビングへ歩みを進める、二つの貴族。


(この国の三大貴族の内二つが集まるとは......さすがジヴェルだ。なんという大物)


しかし、お客様が増えるということはその分のもてなし、つまりは食事も増えると言うこと。そのおかげで裏のキッチンではアスタさんとメイが多慌てで料理を作り増やしていた。


(僕も手伝いに行ったほうが良いのかな......交流集会は母さんがいれば良い話だし)


そんな事を考えていると、ふと部屋の隅で縮こまっている男の子を発見した。


少しぼさついた灰色髪。目尻が優しげにとろんと落ちていて、血族特有の遥か彼方を見渡せると言われている金色の瞳。


(なんか、挙動不審だなこの子)


「君、アグラム家の人だよね?こんなところで何してるの?」


アグラム家は代々弓の名手を排出してきた名家である。その技量は凄まじく、二代目当主であったナルグという弓士は勇者パーティーに引き入れられた程だった。


そんな凄い血を引くアグラム家の子供がどうしてこれほどまでにびくびくしているのか、僕はとても興味がわいた。


彼が言葉を返す。


「え、えっと、お父様が、お前は邪魔にならないように隅っこにでも行って大人しくしていなさいって、いってたから、それで......ごめんなさい」

「?、なんで謝るのさ?」


不思議に思い聞くと、彼は体をびくつかせ再び「ごめんなさい」と謝ってきた。......なんか異様に怯えてるんだけど、大丈夫かこの子。


彼の親はとリビングを見渡すと、夫婦共々こちらには目もくれずジヴェルと談笑していた。


(ふむふむ。なるほど......なんかこの子は僕と似てる気がする)


「ねえ」

「は、はいっ」

「君は名前なんていうの?」


「あ、う?え?」


きょろきょろと周囲を見回す男の子。


「いや、君だよ」

「ぼ、ぼく?」

「そーそー」


「......キノ。キノ・アグラム」

「キノかあ、いい名前だね。僕はシオン。シオン・アルフェラッツ」

「し、知ってる。君は有名人だから」

「え?そうなの?」

「ジヴェル様の息子の名前を知らない人はこの国にいないと思うよ......あ、お、思います。ごめんなさい」

「そうなんだ。って、謝らなくて良いってば!敬語も要らないし」

「で、でも」


「――あら、楽しそうね。キノ」


僕とキノが喋っていると、一人の女の子が会話に割って入ってきた。


「初めまして、シオン様。あたしはアイカ・ヴェルゼネと申します。以後お見知り置きを」

「よ、よろしく」


ツンとした気の強そうな眼差しに思わずドキリとしてしまう。ジヴェルに聞いた話では彼女、ヴェルゼネ家は好戦的で気の強い人が多いらしい。


(メイもそうだけど、この子もすごい綺麗な人だなぁ)


エルフには珍しいブロンドの髪で、その美しい金色は両サイドでツインテールにくくられている。瞳は碧眼。後頭部につけている紅いリボンが可愛らしい。


(いやあ、しかし凄い集まりだよね......)


この国、リョスアルヴには王の元に三大貴族という物が存在する。

【ジンオウ家】【ヴェルゼネ家】【アグラム家】それぞれに土地を与えられそれぞれが様々なやり方でその場所を護り統治、平和をもたらしている。


今、この場所には、その三大貴族の内二つの代表である【ヴェルゼネ家】と【アグラム家】が集まっている。


「あの、シオン様。唐突なのですが、折り入ってご相談......というかお願いがあるのですが」


アイカがにこりと微笑み話しかけてきた。


「お願い......?なに?」


「あたしとひとつ、手合わせ願えませんか?」

「え?」


アイカがそう言った瞬間、彼女の両親であろう夫婦が飲み物を噴き出した。







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