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ダンジョン.1




「今、なんて言ったんだ......?」


「何度も言わせんな。どっちか一人だけ生かしてやる。死にたくなきゃお前ら二人、殺し合え」


俺の問いかけに、眼前に居る金髪の男が半笑いでナタのような形状のナイフを差し向け返答した。


俺、不知火しらぬい 明めいは、この37年の人生において、これほどまでに逃げ出したい時は無かった。上司のパワハラで欝気味になった時の出勤時や、いじめに合ってた学生時代の登校。明確な死が迫っているこの状況ではどれも霞んでしまう程の逃避願望が掻き立てられる。


(......こいつら、本気だ......本気で俺とこの子を、殺す気だ)


前方には金髪の男。だいたい二十代前半くらいに見える、いわゆるイケメン顔が一人。

そしてその横に二人、年齢も金髪と同じくらいに見える、黒髪地雷系女と日焼けで黒々とした筋肉質の男。


この二人もこういう事が初めてではないようで、落ち着いた雰囲気だ。それどころか女の方はスマホをいじり笑っていられるほどの余裕すらあった。


(......)


前方の殺人鬼達。対して後方、背には彼方まで広がる大自然がある。すぐ後ろには木々の生い茂る森で、そちらへ逃走しようと思えば出来るほどの鬱蒼と生い茂った森だ。


ではなぜそうしないかと問われれば理由は二つ。


一、隣にいるこの怯えきったアイドル系YouTuber浜辺(はまべ) 真七(まな)の存在。

二、ここがダンジョン内だと言う事。


俺一人であれば逃げられるかもしれない。けれど、彼女と二人でとなるとかなり難しい。目の前の三人はこの手の殺しをやり慣れている。そう簡単に逃してはくれないだろう。


そして、最大の問題点......それはここがダンジョン5層ってこと。ダンジョンの5層から下の階層は危険な魔獣の生息域である。そのため、もしも森へ逃げることに成功したとしても生還率は恐ろしく低い。


(だからといって俺にこの子と殺し合うという選択肢はない......どうすれば)


広がる赤い暁の空がこれから始まろうとしている惨劇を予告しているかのようだ。俺と彼女、二人の姿を赤く染めあげる。


ひとつの動き、言葉が死に繋がるこの局面。どう出たものかと思考し、汗だけが流れ出す。その時――


――ピッ


と、赤い線が腹部に現れた。じわりと滲むそれは、血液。


「!?、ぐっ、ああぁああっ!?」


膝を地面へつき、俺は腹を抱えうずくまる。鋭い痛みが傷口に走り、恐怖に体が震えだす。


(き、斬られた!?)


「不知火さん!?大丈夫ですか!!?」


慌てて近寄ってくる浜辺。その表情は険しく、ともすれば俺よりも深刻な顔をしていた。しかし、俺らとは対象的な明るい馬鹿笑いが向こうから聞こえた。


目の前の三人が大声で笑っていた。


「ぷっ、あははは!!!」「何コイツ、ウケる〜!」「く、くくっ、ふ」


おかしくて仕方ない。そんな様子の男二人と女。その時、金髪のナイフに風のような青い靄が纏わりついているのに気がつく。


「お、やっとわかったか?そう、これでお前の腹を斬ったんだよ」


ひらひらとナイフを見せる金髪。


「まあ、斬ったといっても腹の薄皮一枚程度だけどな?まさか内蔵まで傷が達しちまってると思ったか!?んな必死に腹抱えてよ!?あはははっ!!ウケるわマジで!!」


ヒュンと奴がナイフを一振りすると、俺の頬をかすめたそれが後の樹木へとあたった。そしてメキメキと言う音を立て木が倒れる。


攻撃が当たった部分は加工されたかのような美しい切り口だった。まるで居合の達人が俵を切り落としたかのような、鋭利なそれは当たれば命が無い事を俺の本能に理解させた。


「お前もダンジョンシーカーなら《ギフト》知ってるだろ?これ、俺のギフト。【空刃魔法(エアルブレイズ)】つって、まあ、名前の通り空気を魔力で圧縮して放てるっつー能力さ」


《ギフト》それはダンジョンへと侵入した者の脳へと魔力が作用しもたらされる異能。

ダンジョンに漂う魔力を接種することにより、魔素中毒で命を落とす者もいるが、こうして生き残り能力(ギフト)を発現する奴らがいる。


そして人は皆、《ギフト》を持つ者のことを《迷宮を探究する者(ダンジョンシーカー)》と呼ぶ。


「さて、ご覧の通りだ。本気出せば木どころか鉄や鋼ですら卸すことができる......わかるよな?これが最後だ」


殺意に満ちた瞳がこちらを見つめる。


「殺されたくなかったら、さっさと殺し合え」



直感、本能が......俺に囁く。




(おまえ)此処(ダンジョン)で死ぬんだ、と。








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