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浦川 日歌里ノウラジュウニシ【side:U】

蝋燭と蛾

作者: 歌川 詩季

 白い蛾が好きです。

 おれが蝶なら 香りに誘われて

 蜜をもとめて 花にむらがったのかもしれないが

 薄(よご)れた()でしかないおれは

 ただ光が欲しくて 暗闇のなか

 ちいさな蝋燭(ろうそく)の炎に 身を寄せていた


 俺が赤蜻蜓(トンボ)なら 夕焼けを背負って

 赤い身を さらに赤く染めていただろうが

 くすんだ色の()でしかないおれは

 ただ光が欲しくて 暗がりのなか

 か弱い蝋燭(ろうそく)の炎に 身を焦がしていた



 いいんだぜ

 なにかを嘆いているわけじゃない

 薄(よご)れた

 くすんだ色の()でしかないおれには

 ちっぽけで

 か弱い蝋燭(ろうそく)の炎がお似合いか あるいは

 むしろ このおれにはあり余る


 身に過ぎたものを欲しがるよりも

 いまはただ ()りどころとなる光が欲しいんだ


 このちっぽけで

 か弱いろうそくが燃え尽きてしまう そのときまで


 つぎの()りどころとなる光を(とも)してくれる

 つぎの ちっぽけで

 か弱いろうそくがみつかるまで


 もうすこしだけ


 暗闇のなか 身を寄せさせてくれ


 暗がりのなか 身を焦がさせてくれ

 ガラスごしに、お腹を見るのが好き。


「残り火へのごめんね」へと、つづきます。


挿絵(By みてみん)


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残り火へのごめんね
につづきます

【同一課題作品】
和蝋燭
作者:日浦海里先生
― 新着の感想 ―
[一言] 虫は苦手なのですが、この作品すごくすごく好きです。 ラストの切実な願いがとても胸に響きます。 同じ虫なのに持て囃される蝶と赤蜻蛉、彼らと蛾の違いって微々たるものに思えるのですが(特に虫があま…
[良い点] 素敵な詩ですね。 蛾のキャラクター性が気に入りました。
[良い点]  大きな明るさにならない、小さな炎を仲間だと感じながらも、憧憬する気持ちがとても切なく感じました。  ラストの二行も、切実な願いが伝わってきます。 [一言] カイコガ、かわいいですよ。
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