蝋燭と蛾
白い蛾が好きです。
おれが蝶なら 香りに誘われて
蜜をもとめて 花にむらがったのかもしれないが
薄汚れた蛾でしかないおれは
ただ光が欲しくて 暗闇のなか
ちいさな蝋燭の炎に 身を寄せていた
俺が赤蜻蜓なら 夕焼けを背負って
赤い身を さらに赤く染めていただろうが
くすんだ色の蛾でしかないおれは
ただ光が欲しくて 暗がりのなか
か弱い蝋燭の炎に 身を焦がしていた
いいんだぜ
なにかを嘆いているわけじゃない
薄汚れた
くすんだ色の蛾でしかないおれには
ちっぽけで
か弱い蝋燭の炎がお似合いか あるいは
むしろ このおれにはあり余る
身に過ぎたものを欲しがるよりも
いまはただ 拠りどころとなる光が欲しいんだ
このちっぽけで
か弱いろうそくが燃え尽きてしまう そのときまで
つぎの拠りどころとなる光を灯してくれる
つぎの ちっぽけで
か弱いろうそくがみつかるまで
もうすこしだけ
暗闇のなか 身を寄せさせてくれ
暗がりのなか 身を焦がさせてくれ