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ブルースマン  作者: 中山恵一
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テープオペレーターA

学校を卒業して音響技術者派遣会社へ入社した


現場で仕事をしながら仕事を覚えろと言われて

大手レコード会社のスタジオに行くと

テープオペレーターという職種の作業をしろという事だった


テープ・オペレーターから

レコーディング・エンジニア・アシスタントに

職種が変わる人から作業内容の引き継ぎ

とはいえ、その人も学校を卒業してから

1年間オペレーターをやっただけで

1年前に引き継ぎをしただけなので、

その経験から語っているだけだった


仕事の合間に語っているのは

オペレーターなんかより高給が貰える

レコーディング・エンジニアになる方法


というより作業する現場のリーダーが

大手レコード会社のレコーディング・エンジニア

今更、大手レコード会社に入社できるわけでもないから

同じ会社の人とかでは一番仕事のできる人で

レコーディング・エンジニア・アシスタント、略してレコアシさんだ。


小さい音響技術者派遣会社なんて、そんなものだという事が

時間の経過とともに身にしみてくる。


引き継ぎが終わると、レコアシさんがテープオペレーターだった時と

同じような作業をするように説明される


何も考えずにレコアシさんの昔の経験と同じように

作業項目、作業手順をなぞればいい


そして引き継ぎが終わり

毎日、同じ事の繰り返しな指示待ち仕事

当然、レコアシさんが若い頃にしたのと

同じ確認ミスをして、どなり散らされる


そのレコアシさんも、レコーディング・エンジニアとかに

毎日のように見せしめのように文句を言われている


呪われた堂々巡りに嵌めこまれたかのように

いつのまにか同じような操作ミスをしてしまう。


男ばっかの作業場で延々と

足の引っ張り合いと責任のなすりつけあい


そして言われるような余計な事を誰かがやって

クビになっていなくなって

自分の分け前が増えないかなという

悪意に満ちたゲスな期待


酒を飲んでいる時だけ

言う事だけは大きく。根拠の無い自信で

自分の成功を信じて飲み友達と夢を語って

実際は夢を食べるバクのような底辺労働者


自分達でも、そんな現状を知っているから

若い男女の色恋物語は、テレビや映画の中の空想物語

もし色恋を抱えても、結婚生活をするような

安定した高収入というものなんかは夢のまた夢


女と触れ合うのなんか月給が入った週末に

売春宿で性欲を金で解決するくらいだ


”なんとかして、この生き地獄から抜け出したい”


思いつく言葉は他に無い



結局、操作ミスや確認ミスが治らず。

社会人になって最初の作業現場だったスタジオは

1年で契約解除された



自分で自分のいた日常を語っていて

吐き気がしてきた


でも、俺とは違って内輪の人気者だった

色男のオペレーターは、


音楽製作スタジオという世界に

夢とファンタジーを抱えている出入り関係者の女の


夢とファンタジーを壊さないように交際して結婚。

今だに、あの頃の昔話をたまにしているらしい


若い出会った頃の二度と戻らない

美しい共通の想い出として

仕事の合間の一緒に過ごした二人きりの週末を


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