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「クリスティーナ王女殿下! 次は僕と踊って頂けませんか!」

「いや、俺と!」

「何を言う! 私が先だ!」


 ワルツが終わり、ノアと一礼を交わした直後、わっと年若い令息たちに囲まれた。ええ、面倒臭い。


「申し訳ないが、それは出来ません。殿下はお疲れです」

「貴方はいつもそう口を挟んで邪魔をするじゃないですか!」

「そうだ。エイリー殿ばかり狡いぞ。貴殿は王女殿下の婚約者ではないのに、我々の邪魔をする権利などないでしょう」

「権利、ねぇ」


 ふと、ノアが不敵な笑みを浮かべた。

 こんなニヒルな笑いさえ絵になるのだから、イケメンは得だと思う。

 ときめき? 時と世界を越えてガッツリ腐っている私が、今さら自身の恋愛に興味を抱けるとでも? 欠片もありませんわよ?


 それより鑑賞のチャンスだわ!

 さあ、(おにいさま)の居ぬ間に誰と誰をカップリングしようかしら!


「あなた方に、王女殿下のお相手は務まりませんよ」

「な……!」

「自分ならお相手として申し分ないと申されたいのか」

「ええ。王女殿下のありとあらゆることを把握しておりますから」


 そうね。ノアは知り尽くしていると思う。

 寝起きの素っぴんを見られたとしても、羞恥心なんて湧きもしないでしょうね。たとえノアが私の寝室に居たとしても、余裕で爆睡できる自信があるわ。


「エイリー殿……それは問題発言ですよ」

「そうでしょうか? 事実を申し上げたまでですが」

「エイリー殿!」

「過ぎた独占欲は身を滅ぼしますよ。不遜な振る舞いは控えるべきでしょう。王女殿下はエイリー殿の所有物などではないのだから」


 途端、ノアがうっそりと微笑んだ。

 ……何かしら。背筋がひやりとするわね。


「不敬にも、殿下を〝物〟と揶揄されるか」

「……! 違う!」

「ではどういう意味で申された?」

「それは……! 言葉の綾というものでっっ」

「ほう? ではそういうことにして差し上げましょうか」

「この……! 人の揚げ足を取る物言いは相変わらずですね!」

「ふふふ。お褒めの言葉として受け取りましょう。では王女殿下、お席までお送り致しましょう」

「ええ。では皆様、ごゆるりとお楽しみください」


 ノアのエスコートを受け入れ、ボロを出す前にさっさと退散します。

 あまり長居しては、我慢のきかない猫が逃走してしまいかねませんからね。カップ麺にお湯を注いで出来上がりを待つ時間くらいは大人しくしてくれますが、なんせ気まぐれな猫ですもの。いつだって待ってはくれませんわ。

 お兄様のお仕置きは絶対回避、です!


「あっ! お、お待ちを、殿下っっ」


 引き留める声が背中に掛けられましたが、会釈だけしてその場を離れます。


 ごめんなさい。これ以上は危険なのです。


 だって!

 私の逞しい妄想が!

 溢れる素晴らしい素材たちを前に興奮しているのですもの!


 唇がによによと震えるのです。

 狂喜乱舞してしまいそうなのです。

 私のなけなしの理性を辛うじて掴んでくれているのは、お兄様の用意しているであろうお仕置きの存在です。


 あ―――!

 もにょる!!




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