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第8話「そんな状態になっても執着するとは、大したもんだよ」

 どうやら、モンスターは俺に興味を示さないようだ。

 理由は分からないが、このままここで考えているわけにもいかないな。まずはベルを助けるのが先決だ。

 補助(バフ)魔法がかかってる間は良いが、効果が切れたらすぐにでも追いつかれてしまうだろう。

 もし逃げ切れたとしても、街まで魔物を引き連れて行ってしまったら騒ぎになる。

 その時は、俺もベルも冒険者資格を剥奪は免れないだろう。そしたら明日の生活もままならなくなる。


「いやぁあああああああ!!!」 


「チィ」


 このまま地上を走っても追いつくのに時間がかかるな。

 俺はひょいと木に登り、木々を足場にベルの元へ急いだ。


 見つけた!

 傍から見ると、モンスターを引き連れて行進してるように見えなくもないな。

 辺りを見渡してみる。周囲に他の冒険者は居ないようだし、一気にやらせてもらうか。


 先回りして、ベルが通るであろう道で、魔法を設置して待ち構える。

 泣き叫びながらベルが通過したタイミングを見計らって、目の前に広範囲魔法を発動させた。


「『雷上級魔法ダンシングクレイジーズ』」


 周りに閃光が走り。轟音と共に雷が降り注ぐ。

 魔法の範囲に居るモンスターは、雷に打たれ続けそのたびにカクカクと動く。


 魔法使い系のレアスキル、『雷上級魔法ダンシングクレイジーズ』。

 広範囲に雷を降り注ぎ、雷に打たれカクカク動く様子が、まるで狂ったように踊り続ける事からこの名が付いたと言われている。

 目の前のモンスターの群れを見ると、確かにダンスをしているように見えなくもない。


 なおも降り注ぐ雷の中へ、まるで誘われるようにモンスター達が次々と飛び込んでくる。

 上級魔法の中でも最上位に近いスキルなだけあって、魔力の消費はとんでもないな。この1発で終わってくれていると良いが……。


 雷が()み、砂煙が収まると目の前には焼け野原が広がっていた。

 木々は無残にも焼け焦げて、地面はえぐれ、そこに折り重なるようにモンスターの死骸が大量に積み上がっている。


「これで全部……だよな?」


 もうモンスターが追ってくる様子はない。

 さて、ベルと合流しようとしたその時だった。

 モンスターの死骸から一匹蠢く姿が見えた。タイガーベアだ。


 毛が焼け落ち、皮膚は焼けただれ、それでもまだ生きていた。

 一瞬だけ俺をチラリと見たが、まるで興味を示さず、のしのしと重い足取りでベルの方へ向かって行こうとする。


「そんな状態になっても執着するとは、大したもんだよ」


 後ろからそっと近づき、首を切り落とす。

 その場でバタンと胴体が倒れた。


 普通に戦ったら、俺一人で勝つのは難しい相手だ。

 ベルが囮役をやってくれたおかげで、楽に倒すことが出来た。


「アンリさん。助けてください~」


 囮役のベルはというと、木を背に向けて盾の中に縮こまり、亀のように必死に隠れていた。

 その盾を剝がそうと、ゴブリン達が蹴ったりこん棒で叩いたりしている。

 こいつらは雷を迂回する程度の知恵はあったようだ。

 俺を警戒する知恵は無かったみたいだが。


 先ほど俺に唾を吐きかけたゴブリンと同じ個体かどうかは分からないが、連帯責任という事で全員平等にボコボコにしておいた。


「大丈夫か?」


「うぅ……ちょっと大丈夫じゃないかもです」


 起き上がろうとするが、生まれたての子牛のように足をカクカクさせて、その場に尻もちをついている。

 どうやら雷の光と音に驚いて腰を抜かしたようだ。

 しばらくしてから手を貸して起こしてやった。

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