流血
まただ。
まるで、人ごとみたいに思って
しまった。
分かっている。
こんな事をしては、いけない事ぐらいは
椅子に座り
手首から、流れ落ちる
真っ赤な液体を見ていると
生きてる事が、実感が出来る。
裏を返せば
これをしないと生きてる事すら
実感が出来ない。
滴り落ちる真っ赤な液体は
床に徐々に出来て広がって
行く。
水溜りを
ただ、見つめている事で
心の平穏と落ち着きを取り戻す。
これは、あれに似てる。
ロウソクだ。
命と言う炎を燃やし
蝋が、溶けて寿命を減らす。
蝋と同じ
赤い液体を流すことで
自分も寿命を減らしているのだろう。
でも
ロウソクと違い
血のいきよいは、徐々に弱まり
傷口は、どす黒い赤い塊で
塞がれてしまう。
心とは、別に
体は、生きようとする。
俺は、死にたいのか?
それとも、死にたくないのか?
自分自身に問いかけて見る。
死のうと思えば
こんな手首から、血を出さなくっても
首の頸動脈でも切れば
一発で死ねる。
それをやろうとしないのは
心の何処かで
死にたくないと言う気持ちが
あるのだろう。
丁度、天秤の様に
死にたい気持ちと
生きたい気持ちが
揺れ動いてる状態だ。
まだ
生きてみるか
いつか、天秤が、生よりも死に
傾くまで
椅子から立ち上がり
歩こうした時
自分で流した血の水溜りに
足を滑らせ
椅子の角に頭が直撃した。
マジか....
俺は、そのまま死んでしまった。
勘弁してくれよ
もっとカッコいい死に方が
あっただろう。
自分の血で、足を滑らせて
死ぬなんて
飛んだ、お笑い草じゃねーか!
いつ間にか
目の前に死神がいて
あの世へのお迎えが、来たみたいだ。
俺は恥身外聞も捨てて
土下座して、頼み込んだ。
「どうか
後、五分だけ
生き返らせて下さい
五分だけでいいんです。
直ぐに死にますから
こんな死に方じゃ
死んでも死に切れない!
このとうり、お願いします。」
どうやら
気前のいい死神で
五分だけ、生き返らせて貰った。
さぁ
生き返ったは、いいが
どうやって死ぬ?
胸を刺すか
首を切るか
いやぁそれは痛いから
嫌だなぁ
飛び降りも論外
でも
早くしないと
五分が立ってしまう。
あーもう
五分と言わず
1時間とか言えば良かった。
そうだ
オーソドックスな
首吊にしよう
紐だ!
頑丈な紐じゃないといけない
タンスの引き出しから
紐になりそう物を
漁っている時に
丁度、無くしていた。
テンガを見つけてしまった。
「こんな所にあったのかよ
探して....」
バタン
五分が、立ってしまった。
俺は
テンガを握りしめて
死んだのだ。
最悪の結末だ。
状況は更に悪化して終わった。
「嫌だ!
こんな死に方
絶対に嫌だ!
さっきの方が
良かったじゃねーか」
俺は
大人気もなく
まるで、子供が
駄々を捏ねて暴れるみたいに
やったが
その努力も虚しく
死神に
首根っこを掴まれて
引きずられて
あの世に、連れて行かれた。




