表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河戦國史 (漂泊の星団と創国の覇者)  作者: 歳超 宇宙(ときごえ そら)
43/47

第42話 トラベルシンの即位

 だがゴドバンは、あっけなく当該艦を撃破できた。気づかれないままに射程に入れたらしく、落ち着いてじっくりと狙い撃つことができた。

 1発目を直撃させて敵の防御力に大穴を開けてやると、敵に命中するミサイルは激増する。プロトンレーザーと大量のミサイルの、両方による深いダメージに苦しむ敵は、更に肉薄するゴドバンたちの艦に何の対処もできない。

 十分に距離を詰めた2発目は、敵艦のど真ん中を貫通する威力を持っていた。そして、これが致命傷となった。貫通個所を起点に、くの字に折れ曲がったかと思うと2つに割れ、更にそれらの一方は2つに、もう一方は3つに割れた。

 反物質動力炉の暴発はなかったらしく、巨大光球によって無に返されはしなかったが、5つに割れたみじめな姿を、敵は長々と晒し続けなくてはならなかった。

「あれ?なんか・・いつの間にか、味方の数の方が、多くなっているんじゃ、ないか?何でだ?」

 飛来するミサイルが減り、周囲が少し静かになったので、ホスニーは、比較的に広域の戦況情報を取得できたみたいだ。味方である他の艦が実施した索敵のデーターや、敵の通信を傍受した結果などを総合して、コンピューターが広域の予測戦況図を提示したのだ。

 その結果によると、味方はいつの間にか、150万を超えている。「ザキ」族と「トラウィ」族の全軍を合わせた65万を、はるかに上回っている。

「何だ、これ?どこの軍勢なんだ?今俺たちの味方となって、戦っているのは・・・え・・ええっ!? 」

「どうした、ホスニー?何を驚いているんだ。」

「こ・・これ、『セロラルゴ』管区自衛軍の、戦闘艦だ。艦籍照合に、間違いはない。確かに『セロラルゴ』管区自衛軍が、俺たちの味方になって戦っている。」

「そんなバカな。あの連中はトラベルシンに撃破されて、散り散りに逃げて行ったじゃないか。大将のエドリーは『北ホッサム』を頼ろうとして処刑されて、軍を統括する人間もいないはずだし。」

「お・・おいおい、これは」

「まだ、何かあるのか?」

「あ・・ああ、これは・・『ハグイ』族の軍もいるぞ。俺たちに打ち負かされ、恭順を誓った部族だとは言え、この戦いへの参加を呼び掛けたりはしなかったはずだ。それが、生活の再建に忙殺されているはずの最中に、自発的に軍を出してくれて、味方として参加しているなんて。」

「そ・・そうなのか、ホスニー?間違いなく、『ハグイ』族が、自分たちからトラベルシンの戦いに、加勢に来たのか?」

「あ?お・・おおっ!」

「今度はなんだ、ホスニー?」

「別の艦からの情報提供が、通信で寄せられた。『ザキ』族の戦闘艦からだ。この戦域に駆け付けて来た援軍の、リストらしいぜ。す・・すごい!20以上の集団が、それぞれにとって可能な最大規模の戦力を引き連れて、駆け付けて来たって言ってるぜ。あっ、情報を提供してくれた艦が、通信での会話を要求してきた。」

 ホスニーが切り替えのスイッチを押すや否や、相手の艦からの声が聞こえた。

「驚いてるか、ゴドバン?こんなにも多くの援軍が駆け付けるなんて、夢にも思わなかっただろう。まあ、偉そうに言う俺も、同じなんだがな。」

「て・・ティミムか?何だよ、この援軍。このリスト、間違いないのか?『ミカリ』族に『シャグアラン』族に・・って、ずっと俺たちが追い払うのに苦労してきたような、『モスタルダス』を荒らし回っていたならず者の航宙民族が、こんなに沢山リストアップされているじゃないか。しかも、こっちの軍の総数は、2百万を超えていることになってるぞ。いつの間にか、敵を上回ってるっていうのか?」

「ああ、それらの部族に含まれる支族が、敵側に付いて戦っていたりもするがな、こっちについてくれた方が本流の場合が、多いみたいだな。結果として敵側よりも、こちら側に付いた軍勢の方が多数派になっている。」

「そういうことなのか。いろんな航宙民族が、『北ホッサム』側とこちら側に別れて、戦闘に参加しているのか。それでも、本流をこっちに付けている航宙民族が多いから、こっちの方が優位になっているのか。」

「ああ。どの航宙民族も、一度はトラベルシンに敗れ、許され、友好勢力として再建を支援されたことのある航宙民族だ。どの部族の中にも跳ね返り者はいて、『モスタルダス』内での略奪などを続けたり『北ホッサム』と同盟したりしていやがるけど、本流は、トラベルシンへの恩義を感じていたんだ。だから、彼が命がけで『モスタルダス』を守ろうとして戦っていることを知って、こっちからは一切呼び掛けたりしていないのに、軍勢を派遣してくれたわけだ。」

「それは『セロラルゴ』管区自衛軍も、同じなのか?星団内のあちこちに、散り散りに逃げて行ったはずなんだけど、トラベルシンのために再集結して、ここにやって来たのか?」

「そうみたいだな。」

 通信機越しのティミムの声は、得意気だ。「あの戦いの後にトラベルシンは、自衛軍の罪を問わず、不問に付してやっていた。追撃や掃討などは、全くやらなかった。エドリーは処刑されたけど、それは『北ホッサム』がやったことだ。トラベルシンは自衛軍を、完全に許してやっていた。この戦いを伝え聞いた自衛軍の連中は、今こそ過日の借りを返さなくちゃって、思ったんだろうな。」

 星団中から駆け集まって来てトラベルシンを援護した巨大戦力が、「北ホッサム」の軍勢を圧倒し始めた。数に大差はなくても、士気には大差があったらしい。嫌々連れて来られて戦闘参加させられている集団の多い「北ホッサム」側に対して、「ザキ」族の味方に付いた集団は、自ら望んで飛び込んで来ているのだ。

 5時間にも満たない戦闘の後、

「お、敵が、退却して行くぞ。一部は、潰走とか遁走とか言っても良いような、慌てふためいた逃げっぷりだ。圧勝と言って良いぜ、これは。」

 ティミムがそんな連絡を入れて来たのに続き、ホスニーも報告をした。

「トラベルシン直轄軍団と戦っていた『北ホッサム』の中核部隊も、周りの状況を見て退却を決めたみたいだな。完全撤退というより、少し下がって態勢を立て直すつもりみたいだから、完全に脅威が去ったわけじゃないけど、とりあえず一息はつけそうだぜ。」

 敵だけでなくトラベルシン側も、態勢を立て直す必要があった。駆け集まってきた数多の集団を編成して、1つの軍勢として動ける態勢を構築する必要がある。

 トラベルシン座上艦に、各集団の代表者が続々とやって来た。数百人にも及ぶ代表者たちが1つの艦で、一堂に会することになった。「モスタルダス」星団に定住している無数の集団の大半が、代表者をここに送り込んでいるみたいだ。最大長が百光年にも及ぶ巨大な星団に息づく人々の、全体会合の様相を呈していた。

 ガラケル王に伴われる形でゴドバンも、「トラウィ」王国代表団の1人として、その場に立ち会うことになった。

「トラベルシン殿に我々から、お願いしたき議があります。」

 星団に住まう各集団の代表者たち百名近くの中から、更に選ばれた数人の代表が、話を切り出した。「セロラルゴ」管区において、エドリーに続く2番目のポストにあったメテブという男や、「ザキ」族や「トラウィ」族に次ぐ「モスタルダス」第3の勢力となっていた「ハグイ」族の長などが、星団の代表として選出されたらしい。

「逆じゃねえのか?我の方から一緒に戦ってくれって、お前たちにお願いしなきゃだな・・」

 少し困惑顔で、トラベルシンは言葉を返したが、

「いや、そうではなく」

と彼を遮ったメテブが、一歩進み出て声を張り上げた。「トラベルシン殿に、われら『モスタルダス』星団に暮らす全ての民を統率するべく、国王として即位して頂きたい。」

「はっ?『モスタルダス』星団の、王だと⁉ 」

「そうです。『モスタルダス』王国の初代国王、トラベルシン殿・・いや、陛下!」

「ば・・ばかやろう。そんな王国、存在しねえだろう。我なんぞに、そんな、未だ存在すらしてねえ王国の王なんて、できるわけ・・」

「あなたに、この星団の全体を統率する王になっていただかねば、我々には生存も繁栄もあり得ません。以前はわれら『セロラルゴ』管区自衛軍が、『モスタルダス』星団の守りの中核となって戦ってきましたが、先の統括官エドリーが腐敗し、自衛軍もあなたに駆逐されてしまったことで、その能力を完全に逸してしまいました。」

「そうです。」

 星団代表となっていた『ハグイ』族の長も、声を上げた。「誰かが中核となって星団全体をまとめ上げなければ、航宙民族の動きを封じながら星団内の発展を期するなど、できません。かつては優秀な統括官だった、連邦から派遣されていたエドレッド・ヴェルビルスがその役割を果たしてくれていましたが、死去してしまい、その息子のエドリーがあのざまだったので、『セロラルゴ』管区はもはや中核にはなりません。」

「こうなったからには」

 再びメテブが引き取る。「この星団における最大の勢力を誇り、銀河連邦からも派遣軍であると正式に認定され、誰よりもこの星団のために命がけの戦いを繰り広げて来たのが『ザキ』族でありますから、その『ザキ』族の長に、星団全体の王としても立って頂くしか、この星団をまとめ上げる方法はございません。」

「別に、王じゃなくても良いじゃないか。我の肩書は、あくまで連邦派遣の辺境統括官だっていうことにして、銀河連邦の一部として星団全体を、まとめればだな・・」

「いいえ。それでは弱すぎます。」

 メテブは譲らない。「星団の漂流に伴い、銀河連邦との距離がこれほどにまで離れてしまい、行き来するのはおろか、連絡を取るのも困難となってしまった現状では、連邦派遣の統括官という名声だけではもう、星団をまとめ切れません。」

「我々『モスタルダス』星団内の各集団を見ても、跳ね返り者たちを抑えきれなくて難儀したりしておる有様です。ご存じのように、星団内で略奪をくり返す者たちや『北ホッサム』族の手先となってしまう連中も、出てきてしまっている始末です。お恥ずかしい限りですが、星団内の各集団を、それぞれの長が、全くまとめ切れていない状況です。

 より強力な指導者に、『モスタルダス』星団全体を統率する絶大な権力者として君臨して頂くことが、どうしても必要なのです。」

 そう語る「ハグイ」族の長の言葉には、切実な響きがあった。

「この我に『モスタルダス』全体を統治する、王が務まると、お前たちは思うのだな。」

「はい、その通りです。そして、あなた以外には、誰にも務まりません。あなたの寛容、あなたの武勇、あなたの知略、あなたの行動力、あなたの気配り、それらは、あなたに敗れた私たちが、誰よりもよく知っています。どんな勝利よりあなたへの敗北こそが、われらの部族の安定と繁栄に結実しているのを、目の当たりにしているのですから。それらの経験が、あなた以外に、この星団の王はあり得ないと確信させているのです。」

「民政に関しては、もと『セロラルゴ』管区の役人だったものを中心に、その機構を引き続き活用すれば問題ありません。ソフラナ王女にも新政府の幹部として参加していただければ、よりトラベルシン王の意に沿う統治を実現できましょう。トラベルシン王の名声と『セロラルゴ』の行政機構が両立すれば、われらが『モスタルダス』星団は盤石となるのです。」

「・・・・・・、そうか。この我が、星団全域を統べる、王か。この星団は、銀河連邦直轄の一辺境自治宙域だとしか、思って来なかったのだがな。独立した王国となり、我が、王位に就くなんてな。

 だが、星団内の各集団を代表しているお前たちが、それを望むと言うのなら、やってみるか。とりあえず今回の戦役は、我の直轄軍団だけでは、乗り越えられねえみてえだしな。星団内の全戦力を結集する必要があるとなれば、誰かが王として、それの指導役にならねえといけねえわけだな。」

「では、お引き受けくださりますか⁉」

「よおしっ、やってやる!やってやろうじゃないか!我が、この星団を、王として率いてやるぜえっ!」

「おおっ!やったぞっ!聞いたか、皆の者ぉっ!新たなる王国の誕生だ!偉大なる、トラベルシン王の御即位だぁっ!」

「良かった。われらが『モスタルダス』星団に、統一された巨大王国が、樹立されたのだぁ!初代の国王陛下が、今ここに、お生まれになられたのだぁっ!」

「各集団の代表者たちよ、今すぐに配下の民に伝えよ!『ザキ』族の長トラベルシン様が、われらの祖国『モスタルダス』王国の初代国王に、即位なされたことをな!」

 代表者たちは、飛びつくようにして各自の携帯端末にある通信機能を発動し、それぞれの集団へと宣言した。王国の樹立と国王の即位が、すさまじい速度で全ての集団に伝達され、浸透して行った。

「では、国王陛下、さっそくご命令を。星団内の全ての集団は、国王陛下の手足として、ご命令のままに命をかけて戦いますぞっ!」

 メテブが、すっかり参謀役に収まった顔で、王に全軍の将としての指揮を促した。

「では、次なる戦闘における、作戦を授ける。各集団の軍勢は、我が指揮のもとに、全身全霊で奮戦せよっ!」

「ウォオオオオオオオオオオオオっ!」

 戦闘艦自体が吠えたか、と思うほどの雄叫びが、将たち兵たちから沸き上がるのを、ゴドバンは聞いた。トラベルシンの声が届く範囲だけでなく、通信によって艦内の全部署に彼の宣言が伝わり、心を一つにする咆哮を呼び起こしたらしかった。

 トラベルシン座上艦だけでなく、他の艦にも通達され、更には超光速の通信で『モスタルダス』星団全域にまで、トラベルシンの声は届けられたのだった。

 今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2021/7/17 です。

 こんな簡単に王国が誕生したり、かつて打ち破った敵が味方になったりするものなのか・・まあ、小説ですから、話を早くするために簡素化するのは当然との言い訳は、通ると信じましょう。

 でも作中のように、周りから乞われて王に即位というのは、有ったのじゃないか・・源頼朝だって(王じゃないけど)、自分から頂点に立とうと思ったのか、周りに担がれて頂点に立ったのか、分からないけど、周りに乞われて軍を率いた結果征夷大将軍に登り詰めた、という要素もあったのでは。

 トラベルシンに敗れた「セロラルゴ」管区の兵士たちが味方に付くのも、現実離れした発想ではないと思います。権力の座を追われ星団の果てでみじめな生活を送ってた彼らが、トラベルシンにすり寄って懐に飛び込み、ともに戦って彼に恩を売ることで、彼の王国の中で権力の座に返り咲き、もう一度かつてのように甘い汁を吸おうと狡猾な計算をしたのだという、穿った裏ストーリーを描くこともできるでしょう。

 一応史実を下敷きにしているので、ほとんどは想像による創作ではありますが、一定のリアリズムは確保できているつもりでいます。未来の宇宙という設定を取り除けば、歴史小説が浮かび上がってくるような物語を書いていると、作者は思い込んでいます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ