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第十三話

 昼食を食べ終えてヤーリンの部屋を出た俺は、自室に戻り自問していた。


 一つはみんなが各ギルドへの遺恨を抱えている状況で、何とか協調性というか仲間意識を持ってくれないだろうかという事。大人だし、ベテランだし、仕事となれば卒なくこなしてくれるとは思うのだけれど、それをなあなあで放置していると危ないような気がしてならない。


 そしてもう一つ。


 俺自身がさっきヤーリンに対して尋ねようとして、ギリギリで思い留まった事…。


 それは、あの十人がここに派遣された理由についてだった。


 馬鹿正直にあちらの弁を受け入れるならば、各ギルドマスター達からの命を受けてやってきた…という事にはなる。勿論、個人で動ける訳がないのだから、それは真実なのだろう。けれども、それだけではないという予感も、俺は感じているのだ。


 あの十人には他に目的がある。確証はないが、何となくの冊子はついていた。


 妙だと思う点は三つある。


 まず一つ目に、他のギルドがギルド内でも特に評価をされているであろうメンバーを配属させて来ている中、『ヤウェンチカ大学校』だけが新米のヤーリンを送り込んできたと言う点。いくら優秀とは言え、ギルド活動は才能とテストの成績だけでどうにかなるものではない。ましてウィアードという未知の存在を相手取るなら、それらの条件に付けくわえて確かな経験だって求められるはず。


 二つ目に、十人を派遣し、俺に11番目のギルドを運営させるに際してギルド協定を結んだ事。ウィアードの危険性をそれ程重く受け取っていると言われたならそこまでだが、反対に言えば『ギルド協定』というのはそこまで考えなければならないくらい重責な存在であるはず。かつてのウィアード対策室ぐらいの規模の組織を作らなければ割に合わないはず。それでもギルドマスターたちが協定を結んだのは、むしろ他のギルドに対する一つの牽制じゃないのだろうか。


 じゃあ、一体何を牽制したいのか?


 それを紐解く鍵は、俺の感じている三番目の疑問。


 その疑問とは、何故女性のギルド員ばかりを送ってきたのかという点だ。


 流石に十あるギルドの全てが女性を送ってくるのは偶然とは思えない。しかも、漏れなく全員が各ギルドの所謂ミスコンで大賞を受けたことのある才色兼備な美人揃い。現にこのニ、三日で胸ときめく場面はいくつかあった。ウィアードが危険な存在だと認知しているのなら、屈強な男のギルド員を派遣しようとするのが筋じゃないのだろうか。そうしないという事は、別に理由があるはずだ。カウォンなんて特にそうだしね。


 俺の感じている疑問をまとめてみると、一つの推論に行きつく。



 あの十人は俺を誘惑するのが目的なんじゃないだろうか?



 そう考えると、三つの疑問の全てに納得のいく説明ができる。ギルドの立場になって見れば、ウィアードにまつわる事件を解決してくれる新ギルドを支援して育てていくよりも、俺という存在をギルドに引き入れる方が圧倒的に簡単だし、手っ取り早いはず。


 けれども、一つのギルドがそれを画策したならば、他のギルドが全力で阻害するだろうし、流石に残りの九つのギルドの反感を買うというのも得策ではないだろう。俺自身がギルドに執着的でも献身的出もないことは既に分かりきっているはずだから、進んでギルドに入ることもまずあり得ないだろう。


 しかし、仮に俺がどこかのギルド員に恋したならどうだろうか。


 俺がギルドに入らない理由は漠然としたもので、決して絶対的なものではない。好きな女性ができて、その人と一緒にいたいなんて理由でもウィアード退治の実績を評価してもらい、そこのギルド員としてウィアードに関する全ての事を担う事にでもられば、喜んで受け入れてくれるだろう。しかも、自発的に入っている分、大義名分もあるし、他のギルドから反感を買っても、その女性を守るためならギルドの一員として抵抗を示すだろう。


 ギルドの理念に共感せず、ギルドに属する可能性の低い俺を囲い込むなら、確かに女で釣るというのは無茶で無謀な賭けとは言い切れないと思う。むしろ十五、六歳の男を手玉に取ろうと考えたのなら、かなり現実的なやり方だとさえ感じてしまった。


 とは言え、この結論はあくまで状況証拠でしかない。むしろただの偶然の一致を深読みし過ぎた俺の杞憂であって欲しいとさえ願っている。


 あれこれと考えていると、不意に喉の渇きを自覚した。コップで一杯だけ水を飲んでからポケットに手を入れると、さっき食堂でワドワーレに貰ったメモが会ったことを思い出す。『マドゴン院』の下には『カカラスマ座』と記されている。


 という事は、カウォンか。


 ヤーリンの次にあからさまなギルド員なんだよなぁ・・・いや、むしろだからこそ何かを掴めるかもしれない。そうでなくとも「カカラスマ座」の話はかなり興味があるんだ。


 俺は部屋で一人気合いを入れ直すと、カウォンの部屋に向かう覚悟を決めたのだった。


読んでいただきありがとうございます。


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