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煉獄のQCサークル  作者: 松岡良佑
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希望の戸惑い

 ボクの名前は松岡良佑。

 しがない会社のしがない社員だ。


 でも、幾らしがないとは言え今日からは希望に満ち溢れた新入社員。

 人々の生活向上に役立つ製品を提供し、社会に貢献し、地域と共に歩む新入社員!

 今日は初出勤の日だ。


 どんな先輩方がいるんだろう?

 頼もしい先輩がいるのかな?

 厳しくも優しい先輩がいるのかな?

 或いは、魅惑的なお姉さんが居たりして……?


 おっといけない!

 不純な考えで仕事はしちゃダメだ!

 そんな事を思いつつ職場に案内されたボク。


(……うん?)


 朝礼の為に先輩方が勢揃いしているが、なんかこう……おかしい。

 上手く言い表せないが違和感があるぞ?


(まあいいや。最初の掴みで後の人生が決まるんだ。バシッと決めるぞ!)


「新しく配属された松岡良佑です! 不馴れで迷惑をかけるかと思いますが、一生懸命頑張ります! 宜しくお願いします! 趣味は歴史や音楽が好きです!」


 うーん、我ながら元気ハツラツの良い挨拶だ!

 これなら職場に溶け込めるのも早いだろう!


 そして、円滑な人間関係を築くには、趣味の披露は欠かせない。


『ほう歴史! 好きな時代や武将や時代は? 音楽は何かできるの?』


『ハイ! 好きな時代は戦国時代で、織田信長が大好きです! 音楽はピアノを嗜んでいます!』


 こんなやり取りを予測し、いち早く打ち解ける算段だ。

 我ながら賢いな!


「……はい。宜しく。じゃあ今日の仕事は―――」


 あ、あれ?

 えらくアッサリした反応だ。

 滑ったか?


「あと、今日は定時後にQCサークルあるから準備しとけよ」


(きゅーしー? え、何だって?)


 聞え辛い声で上司が言った。


「……はい」


「……ウス」


 ボクの自己紹介の声とは比較にならない生気の無い返事がポツポツと響く。


 いや、響いてはいない。

 空調と機械の騒音に掻き消された。


 成人男性の出す声とは思えぬ生気の感じられぬ声だった。

 ボクには先輩社員の声の理由がこの時は分からなかった。


 この時、と言うからには今は分かる。

 分かってしまうが、それは何れ語ろう。


 それに、この時は聞きなれない『きゅーしー』の言葉が気になってしまった。


「きゅーしーってなんですか?」


「……クオリティ・コントロール。あとで説明するよ」


 こうして俺は煉獄に引きずりこまれたのだ。

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