噂話
日ノ国を出て約二日間、船の旅を楽しんだ僕はネビル大陸の東にある国、シドラル王国のフレイドという町に着いた。
フレイドは港町であり魚介が有名らしい。商店街にたくさんの魚介類があったからだ。
「おーでかいな。桜街とはまた違うでかさだ」
日ノ国では殆どの建物はが木でできているけど、ここの建物はレンガや石でできているからすごく新鮮な気分になる。僕は日ノ国ではあまり見ない建物をじっくり見てから今夜泊まる宿を探した。
※
今夜泊まる宿(名前は水竜の宿)を見つけて俺は部屋のベッドに座った。日ノ国では敷布団だったから新鮮な気分だ。
新しいものばっかりですごく面白いや!……どうしよう、なんか急に寂しくなってきた。
ちなみにさっき食事は済ませてきた。魚介料理、はじめて食べたわけじゃないけど凄く美味しかった。やっぱり海が近いと魚介類っておいしいんだね。
「……さて、ここからどうしようかな。今のところ特に考えてなかったけど」
突然出て行けって言われたから日ノ国にはいることはできないと思ったからネビル大陸に来た。ある程度の選択肢は考えてあるけど……
「まあいいや、明日考えれば」
僕はちゃっちゃと寝ることにした。
僕は慣れない船旅に疲れていたのかすぐに眠気が来た。
※
──くん
──るとくん
──春翔君
「……誰?」
──君はいずれ、僕を超える剣士になる。そして、あいつを倒してくれ。
倒す?君を超える剣士?突然すぎて意味がわからない。
いずれ分かるさ。それじゃあ、また会う日まで。
※
「あれ……?」
夢から覚めると既に太陽が昇っていた。大体九時ごろか?朝日が眩しい。僕は朝食を食べる為に一階に降りた。
なんだったんだろうさっきの夢は。
※
「おまたせしました。魚介のスープとパンのセットでございます」
水竜の宿の店員さんに朝食を運んできてもらいこの先の予定を考える。
一つ目は冒険者ギルド、いわゆる何でも屋で依頼を受けてお金を稼ぐ。これは最初が苦労しそうだな。カードは持ってるけど子供だからまだ見習い冒険者だから簡単で安い依頼しか出来なそうだ。
二つ目は商売で稼ぐ。これでもいいけどそもそも今持っている資金が足りなくで材料が買えないからまず不可能。
三つ目はこの街を拠点として過ごす。これも良いけど結局お金を稼がないといけないから一つ目の案に戻る。だから却下。
結局のところ候補は一つ目と二つ目。……いっそのことこの街を離れてこの国の中心である王都に行くのもいいかも。さてどうしよう、と悩んでいるところでとある話声が耳に入った。
「なあ知ってるか?この前ギルドで噂になってたんだが、破滅の森にあれがあるって噂」
「噂?」
「ああ。おとぎ話にしか出てこないような伝説の剣『エンドレイン』があるらしいぜ」
「マジで!?そりゃあすげえな」
僕から少し離れた席で金髪の剣士風の男性と坊主頭の男性が何かを話していた。
「一度は拝んで見てえが、破滅の森っていったら神代試練の一つじゃねえか」
「そうなんだよ、俺も見てみてぇとは思うが場所が場所だからな……。それに、俺らはまだあそこに挑めるほどの実力を持っていない」
「だな。でもなんでそんな噂が広がったんだ?」
「Aランクのパーティーが破滅の森に向かったらしいんだが返り討ちにあったみたいでな、そのうちの1人が逃げ回っているうちに見つけたんだと」
破滅の森?なんだろう、初めて聞くはずなのになんとなく惹かれる名前。
僕は話をしていた2人組のところに向かった。
「すみません、ちょっといいですか?」
「ん、なんだ?」
「さっきあなたが話していたその噂について、話を聞かせてくれませんか?」
僕がそういうと、金髪の男性と坊主頭の男性は訝しむように僕を見た。そりゃあそうだ、僕みたいな子供がこんなこと聞いたら僕だって怪しむ。
「おいおい。お前みたいなガキが、なんでそんなことを聞くんだ」
「実は、昨日この街に来たばっかりでこれからどうしようかなーって考えていたときにこの話を聞いたので。あとただ単にその話に興味が出てきたので」
本当のことを話すと多分分かってもらえなくて話を聞いてもらえない可能性があるからね。
しばらく僕と金髪の男性とじー、と見つめあった。そんな熱い視線を向けないでよ、向けてるように見えるのは僕だろうけど。
「……わかった、話してやる。とりあえずそこに座れ」
「ありがとうございます」
金髪の男性は仕方なくといった感じで話し始めた。
※
要約するとこうだ。
・先日、ある冒険者がギルドにエンドレインの存在を報告
・理由を聞くと、その冒険者がエンドレインを見たのは破滅の森にある遺跡らしい
・その際魔物にやられて命からがら帰ってきた
・報告した冒険者はAランクの冒険者でぼろぼろの状態で、現在クーヴァという街で療養中である
・エンドレインとは御伽話に出てくる伝説の剣の名前で、大昔にあった争いの際に使われた剣の名前らしい
もちろん僕はこの御伽話は全く知らなかったので説明してもらった。
「ちなみにその冒険者はもうすぐSランクになる冒険者だったらしい」
「うわまじか。そりゃあやべえな」
剣士の男性言ったことをガタイのいい坊主頭の男性はがブルッと震えた。ちなみに冒険者ランクはG〜S、SS、SSS、EXとある。現在Sが五人、SSが三人、SSSが八人、EXが四人この世界にいる。……思ったんだけどこの世界化け物の人数すごく多くない?Sランク以上って化け物の代名詞だよね?文献にもそう書いてあったけど?
「話していただいてありがとうございます。ところでお二人は冒険者なんですよね?」
「ああ。俺とこいつはBランクだ」
「なるほど。ところで話変わるのですが、この国の王都に行く定期便みたいなものってあります?」
「あるぞ、この街の西側に定期便の馬車があって、そこに行けば王都へ行ける」
「教えてくれてありがとうございます。えっと……」
「ああ、名前言ってなかったな。俺はルア。んでこっちがホールミンだ」
「僕は……春翔、と申します」
「よろしくな、ハルト」
金髪の男性がルア、坊主頭の男性がホールミンか。よし、覚えた。それから3人でちょっと雑談して僕は部屋に戻り、荷物をまとめ宿主さんに鍵を返してフレイドの西側に向かった。
ちなみに話してくれたお礼として2人に飲み物をおごった。感謝の意を示さないとね。
※
30分ほど歩き街の西側に着いた時は沢山の人がいた。僕が住んでいた城下町でもなかなか見ないような景色だ。
「シドラル王国王都の定期便の受付はこちらになりまーす!」
あっちで受付できるみたいだ。声がした方を見ると長い行列ができていた。……気が重くなった。
僕は渋々行列に並んだ。
※
やっとチケットを買うことに成功した僕は定期便の馬車に乗ることに成功した。とりあえず座ってふぅ、と一息ついた。
「ん、ハルト?」
ふと右から声が聞こえたので聞こえた方を見るとついさっき知り合った人がいた。ルアとホールミンだ。
「あれ、偶然ですね。2人も王都に行くのですか?」
「ああ、こっちにきたのはちょっとした休憩クエストで来たからな。とゆうかタメ口でいいぞ」
「あ、いいの?じゃあそうするよ」
「……お前、順応が早いな」
ルアは呆れた声を出した。だってこっちが僕の素だし。
「まあとりあえず、王都までよろしくね、ルア、ホールミン」
「ああ、よろしくなハルト」
「おうよ」
こうして僕達を乗せた定期便は王都へ向けて出発した。
しかし、この先で僕の運命を大きく変えるような出来事が起こる事をまだ、誰も知らなかった。