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異世界の夜(前半)

 まだタイトルの回収まで行けてないんですよね……すみません。あと三回以内には行きますんでよろしく。

 城に戻った俺達は城の使用人達に男女別々に部屋に通された。その部屋には沢山の服、というより衣装というべきなほど煌びやかに装飾された衣服が並べられている。いわゆる衣装部屋だった。


 どうやら、宴会で着るための衣装を選ぶらしい。といっても、衣装の数はお店に並んでいる服の数を超えるほどに多く自分に合う服を見つける頃には宴会などとうに終わっていそうなものだ。


 そんなことを思っていると、使用人が何やらカメラのようなものを持ってきた。使用人(いわ)く衣装を選ぶための魔道具らしい。


 その魔道具で自分の体を写すとサイズなどを計測し、似合う衣装を選んでくれるらしい。手軽で簡単、さすが魔道具。z○z○スーツを超えてくる。どこかの社長もびっくりだな。


***


 女子より一足先に着替えた俺達は宴会場である部屋の前で女子を待っていた。


 ちなみに、俺の衣装は黒のあまり派手な装飾のないシンプルなタキシードで俺に似合っているかと言われるとなんとも言えないが、俺の理に適っているとおもった。


カツッカツッカツッカツッ!


 カスタネットのような単調な物音がする。それは大理石のような床と女子のヒールによって生じた足音だった。


「「「おお〜〜〜」」」


 女子達の衣装姿を見た男子からちらほらとそんな声がする。


 女子達の衣装はドレスで男子の衣装より装飾が多く施されており、ひらひらとしたレースや散りばめられた(きら)めく宝石などが何とも言えない華やかさと可愛らしさを織り成している。


 普段と違う姿に少し見とれてしまう。


「揃いましたね。では」


 全員が揃ったことを見計らったアイザックがそう言って部屋の扉を開いた。


 開いた扉からアイザックに続いて中に入る。


 辺りを一望する、それだけで俺が思っていた宴会の想像を遥かに超えてきた。いや、俺だけでなくみんなの想像を超えていただろう。それほどに凄まじかった。


 連れてこられた時の広間と遜色(そんしょく)ない大きさの空間に、ズラーッと端から端、至る所に並べられたさまざまなご馳走、そしてそれらや飲み物を給仕するであろうパーティコンパニオンらしき人達が少なからず五十人ほどはいる。


 そして、今朝方の王達や見るからに地位の高そうな人達が俺達の入場を拍手で迎えている。


 どこか自分がこの場にいるのが場違いな気がしてくる。


 そして俺達は、アイザックに連れられるがままに入口の左手にあったステージに登壇した。


「えぇ。只今より召喚者様方の歓迎の会を始めさせて頂きます。司会進行は私、五大国魔導師アイザック・フォン・マクドエルが務めさせて頂きます」


 という言葉で宴会の幕は上がった。


「こちらが召喚者様方でございます」


 スポットライトが俺達を照らす。周りを見渡すがどこにも照明器具や火などは見つからない。おそらくこれも魔法なのだろう。


 そして、そのスポットライトよりも眩しい眼差しと盛大な拍手が送られてくる。


 これで自己紹介だの始まったら絶望的だったがその心配は杞憂に終わった。


 ひとしきりの紹介を終えると俺達は降壇し、配られた飲み物を手にアイザックのコールで乾杯をした。


 その後は、食事や優達と話でもしようかと思っていたのだが俺達に興味のある人達が詰め寄って来てそれどころではなかった。


 少し話してみて分かったがここにいるのは五大国の階級が公爵以上の人達とその従者と護衛だった。


 一時間ぐらいたっただろうかその頃にはだいぶ詰め寄ってくる人も減り少しは料理に手を出す余裕も出てきた。


「凄いねぇ〜」


「あぁ」


 優とそんなことを話していると、


「いいかな?」


 マーレ王が自ら話しかけて来た。周りを見てみると他の四国の王らもみんなに話しかけていた。


「楽しんでいただけてるかな?」


「「はい」」


 いかにも王らしい威厳ある声音とオーラに少し身構える。優もいつものどこか抜けた優しめの声に力が入っているような気がする。


「それは何より。いきなりで大変なこともあるかもしんが頑張ってくれたまえ」


 そう言ってマーレ王は他の王と交代で他の人のところへ挨拶に行った。


 そして、各王に当たり障りのないよう挨拶を終えて再び話していると、今度は部屋の明かりが少し弱まったかと思うとステージで何やら余興のようなものが始まった。


 踊り子や道化師のような人達がステージで芸を披露していく。どれも各集団一つだけでもショーが開かそうなレベルの芸に会場の全員の目がステージに向いている。


「優。少し外すから、何かあったらトイレにでも行ったって言っといてくれ」


「分かったけど、直ぐに戻ってきなよ」


 理由も聞こうとせずに優は了承してくれる。優は俺がどうしたいのかを分かっているのだろう。


「あぁ」


 俺はなるべく目立たないようにしながら、後ろの扉から部屋を出た。


***


 少し肌寒い夜風があたる。この世界は気温といい時間感覚といい、俺達のいた世界と季節や時間帯はほぼ同じなのだろう。


 俺は城の中庭に来ていた。衣装部屋から会場に移動した時に通路の大きな窓から見えた中庭。


「疲れた……」


 誰もいない閑散とした中庭が人気に当てられて気疲れした心の(もや)を晴らしていく。


 警備兵ぐらいはいると想定していたが誰もいない。重鎮だらけの会場周りにたくさんいたのが理由なのかもしれない。あとは、あの奥に見える大きな城壁にでもいるのだろうか。


 誰もいない落ち着ける場所を探していた俺としては都合が良い。


 少し歩いて端にある花々の方へ向かう。綺麗に手入れされた花壇の見たこともない花々が心地の良い香りを放っている。


 さらに、花々で出来たトンネルには暖色の明かりが灯されており、一際(ひときわ)素晴らしさを伝えてくる。


 トンネルをゆっくりと歩いてくぐる。多方から(ただよ)ってくる香りと灯されて暖色に照らされた華が気を落ち着かす。


 そして、そのトンネルの中から見えてくるその先には一人の女性らしき姿があった。

 御拝読ありがとうございました。

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