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異世界の夜(後半)

 前回三日後ごろに出すと言ってたにも関わらず二週間弱が経ってしまいました。本当に申し訳ありません。

 いつもの俺だったら人の姿が見えればすぐにその場を去っていただろう。だって、人気(ひとけ)が嫌で出てきたのに人のいる場所に行くのはおかしな話だ。だけど、俺は引かれるようにそのままトンネルをその女性の方へ潜り抜けていた。


 その女性は俺の存在に気づいてこちらに振り向く。振り向き様に揺れるドレスに施された宝石のような装飾が月の光を反射してくる。


「誰ですか?」


 少し幼さを感じさせる声音(こわね)


 女性というより少女。俺よりもいくつか下に見える。


 僅かな月明かりだけでも分かる淡い水色の綺麗なドレスにつつまれた華奢(きゃしゃ)な体と丁寧に結われている鮮やかな青緑の髪、可愛らしく整った顔立ちとエメラルドのような瞳の少女。


 見覚えがある、挨拶をしに来ていた。


(国王の娘……名前は確か……クロエ)


 彼女の前まで歩く。


「私は召喚されたものの一人で、時……」


「秋斗様ですよね?」


「はい……」


「先程はよく見えなかったもので」


「いえ」


「すみません。皆様を歓迎するためのものであるといいますのに。人気の多いところは苦手でして」


「いや、無理する必要はありません」


 この言葉が彼女のことを肯定するために言ったのか自分自身を否定しないために言ったのかは分からない。


「ありがとうございます。あと、敬語でなくてもいいのですよ。貴方達のいた世界では年齢が上の人を敬うのでしょう? 私の方が三つほど年は下です」


(俺達のいた世界のことをよく知っているな、もしかしたら俺達個人のことも……で、歳は二つ下、十三歳……中学二年ぐらいか。ロリコン扱いされないだろうな……)


「いえ……流石に一国の王女に対してそんなことは」


「無理する必要はないのですよ」


 戯けたように俺の言ったことを返してくる彼女にどこか知っているような面影を感じる。


「ならそうさせてもらうよ……王女」


「名前でいいですよ?」


「……」


 すでに名乗ったからなのかあえて試しているかのように名乗りはしてくれない。


「……」


 少し首を傾げ俺のことをつぶらな瞳で見つめてくる。


(あぁ……俺からなのね……覚えてなかったらどうするんだよ、試してるのか?)


「クロエ……」


 気恥ずかしさを我慢して彼女の名前を呼ぶ。


「はい」


 嬉しそうに少し頰を赤くして笑顔で答えるクロエに胸がドキッと高鳴る。それ程にクロエは可愛らしく美しかった。


「それより、何を見ていたんだ?」


 気恥ずかしさからクロエから目をそらし、話を反らすように少し疑問に思ってたことを尋ねた。


「それならこの花でございます」


 クロエが俺に見えるよう横に退いて、手を差し向ける。そこには一輪の花があった。


 根を張って咲いているわけでもなく切り取られたような花が浮かんでいる。茎は普通の花のように緑色をしているのに花びらはまるで澄んだ水のように透けており、それでいてグラデーションのように色が変化し続けている。


「これは?」


「神花、魔石でございます」


「魔石?」


「虹色の魔石、この魔石は何かの形をしているのです」


「……」


 芸術などに疎くてもその凄みが分かる。眺めていると吸い込まれような感覚を覚える。


「……と様……秋斗様」


「悪い」


「いえ……」


「ここにはよく来るのか?」


「はい。この花を見に」


「そうか」


 その後もクロエとこの世界や俺達のいた世界いろんなことを話した。


「そろそろ戻りましょう」


「そうだな」


 俺達は会場の方に話しながら歩く。同じ道を通っているはずなのに違う道のような感じがする。来た時よりだいぶ気分が晴れている。


 会場の入り口にいた警備兵には見られたものの特に怪しまれた様子もなく問題なく会場に戻ることが出来た。


「じゃあな」


 クロエにそう言って優の所へ向かおうとする。すると、


「また会えますか?」


 クロエが少し悲しげに尋ねてくる。


「あぁ」


 クロエの表情が明るくなる。そして、


「とても……とても楽しかったです。ではまた……」


 可愛らしい笑顔でそれでいて少し名残惜しそうにそう言って歩いて行った。


 クロエと別れた俺は優の所へ向かう。


「どこ行ってたのさ〜」


「散歩」


「遅いよ。終わる前に戻れたから良かったけどこれが最後だよ」


「悪い」


 音楽に合わせて踊り子らしき人が数人踊っている。音楽がクライマックスかのように段々と激しくなっていく。


 そして、弾けるように終わった。盛大な拍手が会場を包み込む。緞帳(どんちょう)が下りると共に拍手は止んでいき、静かになった頃合いにアイザックがステージの幕前まで登る。


「皆様お楽しみいただけましたでございましょうか。これにて終了とさせていただきます。そして明日(あす)、魔素を適応する儀式を行いますので今夜はゆっくりお休みください。本日はお疲れ様でした」


***


 会場から出ると使用人が寝るための部屋へと案内してくれた。俺達全員にそれぞれ一部屋用意されており、寝具から何まで一泊数万のホテルが彷彿(ほうふつ)するレベルだった。


 風呂入って、置いてあった魔道具で髪を乾かし、寝れるような状態になった俺は優の部屋へ行こうと部屋を出た。


 途端、


「よう秋斗、今からみんなで集まるけどくるか?」


 と、別の部屋に行こうとしているクラスメイトと鉢合わせし絡まれた。


「いや、疲れたから遠慮しとく」


「そうか。じゃ! おやすみ」


 そう言って、俺が疲れたと言いながら部屋を出て何処かに行こうとしてたことまで頭が回らなかったのかどうか知らないが向かいの部屋に入って行った。


 右に曲がりすぐの所にあったドアをノックする。俺の隣、優の部屋。


「待ってね〜」


 扉越しに声が聞こえてくる。そして、すぐに優が出てきた。


「秋斗どうしたの?」


「少しいいか?」


「うん。どうぞ入って」


「邪魔する」


 部屋に入る。俺の部屋と同じような作り。優がベットに座ったから近くにあった(かご)で出来た椅子にすわる。


「で、どうしたの?」


「お前この世界に何か持って来れたか?」


「あ〜それならスマホとハンカチとティッシュ。あとは……着てた服?」


「そんなもんか。俺もスマホぐらいだ」


「そうか〜。でも、スマホみんな試してたけど通信も何もないから使えなかったよね」


 確かに最初に連れていかれた部屋で王様達を待っている時スマホを弄ろうとみんな試したが使えないって嘆いていた。


「そうなんだが時計はちゃんと動いてる。この世界も俺達のいた世界も朝昼夜、時間の流れそれに見た感じだと季節も同じように思える。どう思う?」


「そうかも。でも知っても何にもならないよ」


「……そうだな。ただ気になっただけだ」


「そう」


「あとは、この世界どう思う?」


「まさか世界について話す日が来るとはね。僕は魔法というものが楽しみかな?ゲームみたいだし。秋斗はどう思うの?」


「俺は……どうなんだろうな」


「なにそれー」


 俺自身、自分がどう思っているのか分かっていない。


 ただ一つ分かるのは、あの世界は嫌いだった。

 御拝読ありがとうございました。

 誤字脱字誤植等ありましたらご報告下さい。

 次回は来週のこの時間に出せるように頑張ります。

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