第十話
『それでは勝者は敗者への要求を決めてください。なおプレイヤー【ムアン】は退去…ならびに【ゲスーイ】は討伐されたため…所持品は勝者へ、現地人は必要な者がいれば採用出来ます。不必要な者は解放してください。入れ替える場合は解放してから採用してください。【ムアン】はサポートキャラを所有していたためサポートキャラは勝者へ移行します。【ムアン】の占領していた街は勝者へ移譲されます。所有を決めてください』
俺達は勝利の喜びも味わうことなく戦後処理に追われていた。
ずっと肩に乗ってるヴァルへの質問も出来ないままにだ。
「どうしますか?」
俺達陣営とユリ達陣営が立ち並ぶ目の前にユウタ陣営とムアン陣営の現地人が青い幕に覆われて座っていた。
「どうしますか?って聞かれてもなぁ…聞きたいことがたくさんありすぎて…どうしたらいいかわからん…」
「それは…確かに…」
ユリは俺の¨肩¨に目をやりながら言う。
「とりあえず…ユウタは神の陣営なら仲間にしてもいい気がするけどなぁ…」
「はい…ユウタさんはフィールドから消える間際に謝ってましたし…ムアンに騙されていたのでしょう」
「ユリさんがそれで許せるなら決定権はユリさんにあるかなぁ…」
「誰の陣営なんでしょうかね?」
「さぁ?ヴァルの陣営だったり?」
笑いながら冗談を言ったつもりだったが二頭身のヴァル…ちびヴァルに顔を蹴られた。
「妾の使徒はケンゴだけぞ!ケンゴが遅いせいで選んだはいいが次の使徒が選べなかったわ!」
「…すんません…て言うか少し痛かったんだけど…」
「まぁここはあの場所より少し力がある感じがするからなっ!」
ちびヴァルが笑みを含んだ得意気な顔をしていた。
「そういえば…ヴァルに聞きたいことがあるんだけど」
「なんぞ?」
「このユウタって誰の使徒かわかる?」
「オーディンだな。そこの娘と一緒ぞ」
「え?」
「ヴァルキリー様の言う通り…私はオーディン様の使徒です…ですがユウタさんも一緒とは…」
「ケンゴ…妾の盾を出せるか?」
「あぁ…出したぞ?」
俺はヴァルに言われて盾を装備する。
「娘よ…オーディンから与えられし装備を出すがいい」
ユリさんが杖を出す。
「杖と盾をあわせてみよ」
「あわせる?くっつければいいのか?」
「それで良い」
俺とユリさんは互いの装備を合わせる。
すると頭上にマークみたいな物が出る。
俺の頭上には盾をベースに中心に翼の生えた女性が剣を地面に刺し両手で柄に触れている姿であった。
ユリの頭上にはマッチョのおっさんをベースに右に剣…左に杖…頭上に槍…腹部には弓があり…それぞれの武器がおっさんを強調するかのように囲んでいた。
そして…何かが聞こえた。
『ヴァルキリーか?何故そこに行けた?』
「オーディン…久しいな」
『ヴァルキリーよ!儂もそちらに連れていけ!』
「知らんわ!妾はケンゴに呼ばれただけだしなっ!」
『なにっ?!おい小僧!儂を呼べ!』
…全力で聞こえないふりをしよう…。
「この声…オーディン様ですか?」
ユリさんが地雷を静かに踏む。
『おぉ!娘よ!久しいな!息災であったか?』
「はい…色々ありましたが元気です」
『すまぬなぁ…儂の使徒同士が戦うとも思わなんだ…』
「知らなかったとは言え…申し訳ありません」
『いや…構わぬ…それより儂をそこに…娘でもいい!儂を呼べ!』
「はい!オーディン様…力を貸してください!」
…シーン。
何も起きなかった。
『ぬっ!やはり小僧でなければ無理なのか…』
聞こえないふりだ。
「ケンゴさん?オーディン様の声聞こえてますよね?黙ってますし…」
…あっ…あうとおおおお!
「…オーディン様力を貸してください」
棒読みで言うが…何も起きなかった。
『何故じゃ?何故なんじゃ?』
「オーディン…お主は妾と違い加護を与えてないからいらない奴なのではないか?」
『なぬっ!儂だって使徒に装備を与えたりスキルを与えたりしたぞ!』
「仲間に装備は渡したのか?」
『…使徒に危険が迫るかもしれぬゆえ渡すことは危険だと判断する…』
「だがケンゴや娘が選んだ仲間ぞ?信用した…信頼した…ケンゴが信じた仲間ぞ?妾はケンゴの力になりたくて装備を仲間にも渡したぞ?」
『ぬっ!…その違いもあるのか…よし!神力を使って装備を与える』
「そんなに神力があるのか?」
『無論ないっ!』
「「……」」
『時間をかけて娘とコックに渡すゆえ待っておれ』
「ありがとうございます。オーディン様」
『それではこれより装備を作るゆえ出来たら送る』
「わかりました。オーディン様」
『うむ…では暫し時間を頂戴するゆえまた後程』
どうやらマッチョは装備を作りにいったらしい。
「なんか…なんなんだろうね…俺…疲れちゃったよ…ユリラッシュ…」
「…だっ…だめですよ!私だって把握しきれてないんですから!」
「疲れたよ…ヴァルラッシュ…」
「ぬっ!変な名で呼ぶなっ!」
ユリには通じたがヴァルにはネタがわからないため通じなかった。
「とりあえず…何から決めようか?」
俺はユリさんに聞く。
「そうですね…まずは現地人をいかがします?」
「うーん…特にいらないっちゃあいらない…かなぁ?」
俺は目の前に¨表示¨されたステータスを見ながらユリさんに答える。
「そうですね…私も特には必要ないので解放でいいですかね?」
俺達は【ムアン】の現地人を全て解放する。
次はサポートキャラだ。
「ユリさん…サポートキャラなんだけど俺がもらっていいかな?」
「はい。今回はケンゴさんに助けて頂いたのでケンゴさんが決めてください」
「ありがとう。サポートキャラは俺のサポートキャラに!」
ブッブー
『プレイヤー【ケンゴ】はファーストサポートキャラが固定されております。ファーストサポートキャラをまだ登録してないのでセカンド以降のサポートキャラを登録出来ません』
「はっ?」
「ファーストサポートキャラ固定…ですか?」
「ファーストサポートキャラって誰?」
『登録されておりますが回答権限がありません』
「つ…使えねぇ…」
俺はシステム?サポート?なにかわからないがガッカリした。
「サポートキャラの解除方法は?」
『ありません』
「……」
「ユリさん…悪いんだけどサポートキャラ登録してもらっていいかな?」
「かまいませんが…サポートキャラって何をするんですかね?」
『サポートキャラとは代官やサポーターになります。通常は元帥を筆頭に統治を行いますがサポートキャラが介入することにより様々な事が可能になります。またはサポーターとして代官に任命せず同行する場合…戦闘には参加しませんが罠を仕掛けたり情報整理や策士として参加します』
「サポートキャラは誰がやるの?」
俺は気になった…ムアンのサポートキャラはあきら兄である。
なら設定されてる俺のサポートキャラとは?…大体予想がつく。
妹か…それとも親父の部下か…。
『サポートキャラは現地人や支配神や様々な存在から選定可能です』
「ファーストやセカンドって言ったけど…何人選定できるんだ?」
『支配地域により異なりますので返答出来ません』
「支配地域か…それは県なのか?国なのか?街なのか?」
『答えが存在しません』
「くそかよ…」
俺は満足のいく答えが聞けなかったのでいらついた。
「とりあえず…ユリさんにサポートキャラを頼む」
『承知しました。該当サポートキャラをプレイヤーユリに付随します。次は街の所有を決めてください。街はマサツとオスミオになります』
「どうする?」
「ケンゴさんにお任せしますが…」
「もし俺が支配したらユリさんとの街と交易や行き来は可能か?」
『カシマゴの街が存在するため現地人の往来は可能ですが元帥の往来は不可能です』
「んー…微妙だなぁ」
「微妙ですね…ならばユウタさんと協力しますか?」
「それしかないだろうな…」
キューリューの街とハナの街…それと繋がる道はカシマゴの街に面していて…カシマゴの左右…左にマサツ右にオスミオがある。
元帥が支配してる地域は″街を持つ元帥″は容易く入れないらしい。
入るには″敵意を持ち侵略″するためか″街を占領してない″元帥…または支配する元帥が″許可した″元帥でなければ入れないらしい。
俺は思い返す…俺は街を持っていないからどこの街にも入れた。
村であったキューリュー村。
街であったハナ街…街になったキューリュー街。
なら街は荷物になるのか…。
「ユウタを仲間にするならユウタに支配をさせるのも選べるのか?」
『可能です』
「ユリさん…ユウタと話しませんか?」
「そうしましょうか」
俺達は依然として座ってるユウタに近づき話しかける。
「ユウタさん…」
「すまねぇ!ユリさん…あんたはオーディンの使徒だったのか!仲間同士で…その…すまなかった!」
「そっ…それはもういいですから!」
「そっちのあんちゃんも…悪かったな!」
「いや…皆情報がないからな…仕方がないさ」
「話し合いは終わったのか?」
「聞いてた通りです」
「…あー…悪いな…お前達が入ってたこのバリアみたいなやつさ…中の姿は見れるけど声は聞こえねぇんだわ」
「ん?」
「あんちゃん…中に入ってなんか話してくれねぇか?」
「あ…あぁ…」
俺はバリアみたいな中に入り話しかける。
だが声は聞こえないみたいだ。
お互いにだったがな…。
俺はバリアから出て話す。
「確かに姿は見えても声は聞こえないみたいだ…」
「そのようですね…」
「悪いな…だから俺はわかんねぇんだ」
「では率直に言います。協力者になりませんか?」
「おうっ!いいぜっ!身元がはっきりしたからな!」
かるっ!
まぁこんなんだからムアンに良いようにされたんだろな…。
「ではマサツとオスミオの支配をユウタさんに…」
「あんちゃんはいいのか?」
「あぁ…俺は街を支配せずに情報を集めようかと思ってるんだ」
「そうか…まぁ考えがあるならいいがよ…嬢ちゃんもそれでいいのか?」
「じょ…嬢ちゃん?!ま…まぁ協力者ならいいです」
「ならおっけーだ!その代わりオスミオかマサツ…どちらかを嬢ちゃんに任せたい」
「何故ですか?」
「これ陣取り合戦みたいなゲームだろ?背は守られてるから前線を守ればいいじゃないか」
「それは…確かにそうですが…」
「攻撃は最大の防御ってな!いいじゃねぇか。その代わり全員が全員領地を行き来出来るようにすれば問題ないしな!」
「わかりました。ケンゴさんはいかがです?」
「俺は二人に任せるよ」
「ならいいな!俺はカシマゴとマサツを足掛かりに上に攻める」
「なら私はキューリューとハナの街に代官を任命しオスミオに拠点を移します」
こうして…俺達は終わりにした。