プロローグ:吟遊詩人と剣と魔法。
西の小国ファザルナイツ 王城南門の前にて
「うぉぉぉりゃぁぁぁあ!」
脚を大きく開き、紫色の髪の少女は迫り来る黒いローブを纏った集団を薙ぎ払う。
「 詠唱魔法 第四六章 燃え上がる大地! 」
緑色の髪の痩せ気味の男が少女に続きそう叫ぶと、大地が激しい轟音を立てて裂け、燃え上がる。
たちまちのうちに炎は紫少女と緑男を襲っていた黒装束たちを消し炭に変える。
「へぇ、やるじゃねぇか。だが、俺様が用があるのは嬢ちゃんとそこのひょろっこいやつじゃあねぇんだわ。」
さっきの黒装束たちの指揮官である図体のデカい鎧を着た髭面の男はそう言うと、少女達の後ろに隠れるようにして立っている、エレクトリックギターを背負ったうだつの上がらなさそうな青年を指差した。
「....え?俺?いやいや意味がわからないんだけど?」
「おうよ。にぃちゃん。あんたのことだ。うちのマスターがあんたを連れてこいとさ。」
「いやいやいや、ちょっと待てよ!人の居候先をこんな風に燃やしといて、「お願いがありますぅ」「僕と一緒に主人様の所へ行って下さい♡」だぁ?あんたどのツラ下げて俺にお願いしてんの!?」
「っおい!んな風には言ってねぇぞ俺様はぁ!しかも、うちの部下たち燃やしたのそっちの魔法使いだよなぁ!?んまぁ、そんなことはこの際どうでもいいんだよ。にぃちゃん。あんたが俺と仲良くお手手繋いで行かないってんなら.....強引にでも連れてくぜぇ!」
「ちょっと待って!彼は王家専属の吟遊詩人よ!彼を連れさるのなら私と王宮騎士団が容赦しないわよ!」
「かぁっかぁっかぁ!そいつはおっかねぇわ!姫さんよお!あんたが強えのはさっきので分かったけどよぉ、俺様はあんたより強えんだわ!」
「へぇ……私相手に随分と傲慢なことね。あなた、名前は?」
「聞かれたならば、お答えしよう。俺様の名前はデルガド・カリスペラだ。」
「デルガド.....嘘でしょ....あんた、あの「笑斧」の?...」
紫髪の少女はそう髭面の男に問うと、男は先程までとは雰囲気の違った笑みを浮かべた。
はぁ、何でこんな事になったんだっけ。俺が何したってんだ。ただ、あいつらともう一度ライブしたかっただけだったのに……
何故、俺は異世界に来ちまったんだ?
これからゆっくり続けていきたいと思います。
拙い文章ですが、末永くお付き合いください。