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『虹さん』
あなたは何色?
わたしは虹色
だいたい七色で出来ているんだ
雨さんや雲さん、太陽さんらと
大の仲良し
いつも話しをしていて
みんなで
いつわたしの出番になるのかを
慎重に慎重に
それから
たらふくなよろこびを持って
決めているんだ
太陽さんにはいつもこう言われるよ。
「あなたには大事なお役目があるんだから、そうやすやすと、出てもらっては困るんだよ。」
雨さんにはこう言われることが多い。
「ぼくはあなたの華やかさには、かなわないから、それが、いいんだよね。ぼくの誠実とその潤いをあなたは満たしてくれる」
雲さんからは、いつもこのように、決めつけられているんだ。
「きみは、表方。わたしは、裏方」
風さんには不思議なことを時々言われる。
「盗まれるものは、全部くれてやればいいのさ。いくら盗もうとしたって、盗めないものも、あるのだから。やったらやっただけで、必ず、成果が得られる世界なんだよ」
月さんとはこんな感じ。
「あら、虹さん。ご機嫌いかが。わたしと少しの間だけ、一緒に、ダンスを踊らない?」
「是非、ご一緒に。七色の音楽を奏でながら、なんちゃって」
そんなわたしにも
憧れがあるんだ
わたしは・ね
ただ一色になりたいんだ
何にも
染まることがない
ただ一色に
それで
時々この憧れが
成就することもある
それは・ね
だれかの一つ粒の涙のなかで
わたしが星のパレードように映っているとき
そういう
時にね、わたしはわたしが
存在している理由みたいなものを
震えるほど体験して
涙、涙は、ただ流れてしまう
この涙を
誰にも気付かれないように
流しているんだよ
実は…ね
本当のことはね
みんなの前に
出ているときは
その涙が形を変えて
実現しているときなんだ
これは
あなたとわたしの内緒だよ
他の誰にも言わないでね




