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『ミノルとアンナのメルヒェン』
ー「純」
まじりけや偽りのないさま。人柄や気持ちがすなおで、けがれたところがないさま goo辞書よりー
昔昔、とある日のこと。
ここに
1人の青年がいました。
青年の名はミノル。
ミノルには天国に逝ってしまった
恋人がいました。
恋人の名前はアンナ。
ミノルはどうしてもそのアンナを
忘れることが出来ませんでした。
ミノルは太陽に言いました。
「ぼくの人生をアンナに捧げます。後にも先にも恋人はアンナだけです。ああ、アンナは天国でどのように暮らしているのだろう」
太陽は言いました。
「ミノルの誠実で真摯な想いをわたしも知っているよ。このままだとミノルがあまりにも可哀想。よし、わたしからも神様にお願いしてみよう」
ミノルは有象無象に
自らの命の息吹きをかけて
日夜働きまわる日々が続き
改めて、太陽の言われたことに
うなずきました。
「アンナに会うために、ボヤいてなんていられない!」
そうして
月がそのやさしい光を
街や村々
人々の枕元で遊ばせていた
ある晩のこと
ミノルは夢のなかに入っていきました。
夢のなかでは
白い太陽が粲然と草原を
照らしておりました。
そこには、水晶の泉や虹の滑り台
所々に彩り豊かな花々
天使やペガサス、鸞鳥などもおり
多くの人々や生き物がイキイキと楽しんだり
寛いだりしておりました。
時おり、とても美しいハーブのようなオルゴールのような
音や旋律も聞こえてきました。
ミノルの背にも翼があり
自由に宙を翔ぶことが出来ました。
くるんくるんと回ってミノルは言いました。
「心も身体も満ち満ちてくる。なんて素敵な場所に来たんだろう。ここは?」
すると、近くを飛んでいた天使が言いました。
ちなみに天使の雰囲気は
見た者をしあわせにするほど
とても可愛らしく
それでいながら
時々
昂然としているようでいて
神様ゆずりの気品があり
どこかしら厳かでもありました。
「ここは、天国。天国だよ」
驚いたことに、ミノルの魂は
天国に運ばれていたのです。
「アンナ、アンナ…、アンナ! アンナがどこかにいるはずだ!」
他の天使にも聞いてみました。
どうやら天使によって翼の色が違うようです。
「聞いたことあるよ。きみの胸のなかにいるアンナだね」
すると、天使は一度目を瞑り
それから、言いました。
「ここからあの七色の山の方へ行ったところに、アンナがいるよ」
ミノルは
胸を熱くして言いました。
目には、太陽を、今こそ、宿しているようでした。
「ありがとう! また」
ミノルはアンナがいる
七色の山の方へ向かっていきました。
向かっていく
途中、様々な美しい楽園が
広がっていましたが、ミノルは脇目も振らず
ただただ
ひたすらに
七色の山に向かっていくのでした。
そうして
とうとう七色の山に到着しました。
ここでミノルに
不思議な言葉が聞こえてきました。
ナガイタビノハテニ
ココロノココロノナカデ
ナナイロノトリガ
タイヨウノカギヲモッテ
ダイヤモンドノソラヲ
ヒショウスル
ソノトキ
ヒトハ
ヒトツノセカイニ
ヨミガエリ
ヒトツノセカイノ
トコシエノモンノ
フウインヲトク
ソウシテ
ホウレイナ
イキト
オトガスル
ニチジョウガオトズレ
ナガイタビハ
オワリヲムカエル
七色の山の近くに
飛んでいた天使に聞いてみました。
この天使の翼は、青い翼の天使でした。
「さっき、テレパシーで聞こえたよ。アンナだね。アンナなら、この山の頂上にいるよ。ここから先は、歩いていかないと、登れないんだ」
それからミノルは
赤いテラス、橙色のテラス、黄色のテラス、緑色のテラス、青いテラス、紺色のテラス、紫色のテラスとぐんぐん歩いて登っていきました。それぞれのテラスを歩くごとに、身体の奥底が車輪のように回転し、満たされて、元気になっていきました。赤いテラスでは、主に、肯定感や生命力が養われ、橙色のテラスでは素直さや無邪気さ、対処能力を。黄色のテラスでは、美しい感受性や期待感や先見性、調整力を。緑色のテラスでは、美的感覚や感動力、愛と愛による秩序や慈しみを。青いテラスでは、閃きや意思の力、デトックス能力、伝達力を。紺色のテラスでは、知恵や知識、情報力や真実を見出だす力を。紫色のテラスでは、平和や調和を重んじる力や明るさ、快活さが培われていきました。
そうして、山の頂上である紫のテラスを少し歩いたところで、天使達が待ってくれていて、ミノルの手を取り、くるくると回転しながら、白い太陽のところへ一緒に向かっていきました。
「なんという、光なんだ!! これを直視するようなら、たちまち目は焼けて、失ってしまうだろう。ああ、やはり、光こそ、あらゆる色彩の父なんだ!!」
ミノルは、なかなか目を開けることはできませんでしたが、次第に、ぼやぼやと見えてきました。
ぼやぼやと見つめたその先には、クリスタルのお城が顕れました。そして、その城内から燦然と輝く光の中心があり、そこに吸い込まれるように、ミノルと天使達は向かっていきました。
こうしてだんだんと
目が光に慣れていったときのことです。
なんということでしょう。
荘厳なクリスタルのお城の広間には
求め続けていた
アンナが1人立っていたのです。
ミノルの頬には
日蝕の涙がこぼれていました。
「おおアンナ!! アンナ!!!」
それから、ミノルとアンナは、なにやら親密に話しながら、二人手を取り合って、愛の舞踏をはじめました。
二人が踊る度に
全世界の輝きは
爛々(らんらん)と増していきました。
まるで
この世界は
二人の為に
あるかのようでした。
時おり二人から
放たれている
高尚な愛からは
恐れや穢れや不安などが
入る隙間もありませんでした。
二人につられて近くにいた
天使や聖獣達もつられて
舞いを舞いながら
このような歌の合唱を始めました。
「これは地球学校を讃美する歌
これは愛の国で流れる歌
耳を澄ませて聴いてごらん
心を子供にして歌ってごらん
今見えた美しい命達よ
広がる空白く光る海
緑にそよぐ風
羽ばたく鳥
茜に染まる雲
黄色に咲く花々
大地に降りそそぐ青
全て愛しい
虹色の夢を追いかけ
あなたに届く言葉がある
日差しを浴び愛に呼ばれて
飛びたとうあの鳥のように
優しい風揺れる木漏れ日が
あなたを包み安らぐでしょう
時には強く降る雨が
僕らを潤し癒すでしょう
日は昇り朝になる
月明かりが夜を照らす
山が川を讃える
命の奇跡が生まれる
虹色の愛を授かり
誰もが皆命にある
希望を描こう
信じた言葉を
咲かせようあの花のように
この星はこの宇宙は
神様の恵み ha
みんなが生きてる
この時代に出逢えた
命の奇跡を一緒に歌おう
分かち合おうよ
悦びも痛みも
僕らはひとつ
One Love 」
こうして
二人を中心とした
合唱はしばらく続きました。
それから
ユニコーンによる
月蝕のポエムの朗読が終わった頃に
アンナが言いました。
「そろそろ時間だわ。あなたには、まだ、地上で果たさなければならないことがあるの」
そう言って
そっと、手を離しました。
「アンナに会えて良かった!アンナもいつまでも元気で!」
ミノルも不思議と満たされていて
アンナの青い瞳を純潔を持って見つめたあと
ふたたび、天使達と手を取り
七色の山の方へ
帰っていきました。
帰っていくときは
何故か、来たときよりも
早かったのです。
滑り落ちていくようでした。
そして
ちょうど七色の山の麓に
たどり着いたときに
ミノルは、目を覚ましました。
ミノルは夢で体験した
神秘と愛が身体や心のなかに
満ち満ちとあるのを感じました。
それから
青年は逞しくなって
寝床から
立ち上がり
自分の成すべきことを成す為に
ふたたび
歩き出しました。




