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「白昼夢」
世界一周旅行が
誰かの指紋から、はじまりました。
しかも、わたしのなかでは
予想だにしていなかった
豪華客船の客室からだったのです。
豪華客船の窓越しやグラス
サンデッキから
様々な国々の街や人々の
腹のなかや膵臓
それから家の寝室まで見えました。
インドはまるで、熱帯夜の象が
かなしそうに静かに呟いているようでした。
オーストラリアはまるで、
あわてんぼうのカンガルーが
ついには、コジオスコを
跳ねてニュージーランドに着陸するようでした。
ブラジルはまるで、アマゾン川のピラニアと
カーニバルの女が踊り狂うようで
わたしは、憧れさえ、抱きました。
アメリカでは、ブロードウェイで、いまだに
マドンナがバージニアビーチにキスをして
シュタイナーに恋をしているようでした。
ヨーロッパでは蝶ネクタイのイエーナが
近隣諸国の劇場作家のヒヤシンスや
政治家のミルテの家に、お辞儀をしているようでした。
アフリカ大陸では
マンドリルの楽器の音色が
炎のなかで、太陽を創造しているようでした。
エジプトでは、クレオパトラが
アマルナ芸術を目撃して、鼻血を出しているようでした。
ギリシャでは、クレタ島のオリュンポスの神々が
ソフィアやアレテーについて、相変わらず
星々の酒杯で、語り合っているようでした。
ロシアではエスカリーナ宮殿で
『イワン・イリッチの死』について
自身の心情を告白しているようでした。
中国では、詩人の杜甫が
北京の超高層ビルで働いている
社員の頭の上にある池で
ただ釣りをしているようでした。
それから、彼は、天才になったようです。
日本では、コノハナサクヤヒメが
たおやかな舞を黄昏時に舞ったあとに
「和とは、いとおかしき。」
と、ススキやムラサキに
白銀の鳳声で、包み込んでいるようでした。
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