入学前夜
俺には妹がいる。そして、妹がだいちゅきだ。
しかし、嫌いでもある。
俺の名前は、波来 未来。
妹の七海は、俺よりも遥かに成績優秀で、容姿端麗で、人気者で、優しくて、能力にも長けている。自慢の妹だ。
しかし、兄よりも優れているというのはどうしても気に食わないものだ。
能力っていうのはざっくり言うと特殊能力のことだ。
この世には特殊能力を持っている人々、「能人」と持っていない普通の人、「常人」の2種類の人間がいる。
能人の割合は世界の全人口の約0.1パーセント以下ほどらしい。
よくマンガなどに出てくる、特殊能力者差別などはこの世には一切存在しない。能人は民を悪から守るために能力を使うため、むしろ民からは尊敬されるような存在なのだ。
妹はその能力の中でも最強と言われる「五能」の一つ、「雷」の能力を持っている能人だ。雷とは言いつつも、操れるのは雷だけでなく、電気全般らしい。まったく、すげー奴だ。本当に俺と同じ血が通っているんだろうか。
俺と妹は年子で、俺が4月生まれで、妹が3月生まれだ。よって学校の学年も同じになる。
昔はよく仲良し兄妹とご近所さんから言われて可愛がられていた俺たちだが、今現在も「仲良し」なんて言える関係が続いているかと問われれば、答えはNOだ。
俺自身は妹と仲良くなって、イチャイチャしたいという思いがあるのだが、肝心な妹自身が俺を毛嫌いしているのか、俺に対しての態度が乱暴で粗雑なのだ。
まあ、ちょっとツンツンしたとこがまた可愛いんだけどね。
そんな感じで今の俺たち兄妹の仲は超がつくほど悪いのだ。
おっと、そんなこと考えてる暇はなかったな。
明日から俺…いや、俺たちは高校生なんだからな。
とりあえず明日に備えてもう寝るとしようか。
一回夜のオシゴトしてからね。男の子だもん。
――
十数分後、未来は数枚のティッシュを丸めた球を数メートル先のゴミ箱に投げ入れ、「よしっ、入った!」と小さく叫び、床に就いた。