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異世界の魔法剣士〜in剣も魔法もない世界〜  作者: 柿ピー
第1章/異世界馴れ初め編
9/40

第9話:部屋

夜。

寝る時間だ。

子供を寝かしつけるのに苦労する家庭も多いだろう。

ここ──池逢家でも、それによく似た騒動が起こっていた。


「・・・だから、そこの部屋使っていいって」

「そうもいかねーよ。

そもそも、主人より先に寝るわけにはいかねーし」


少し前。

夕食後、「汚い」という理由で、半ば強引に風呂に入れられた俺は、リビングで剣を拭いていた。

しばらくして、風呂から上がったルナに「ちょっと来て」と言われた俺は、ルナに連れられ、部屋の前に来ていた。

2階建てのこの家は、二階に部屋が5つある。

そのなかでももっとも奥にある部屋は、空き部屋だったらしい。

ルナは、その部屋の前に俺を連れてきた。

「今日からここが、フェクターの部屋よ」

そう言って、ルナはその部屋のドアを手前に引いて開けた。

部屋の中には、小さな低い机がひとつ、置いてあった。

クローゼットもあり、窓が3つ。

ベランダもある。

「・・本気で言ってる?」

俺はルナにそうたずねる。

ルナは満面の笑みで頷いた。

どうやら、俺を、池逢家に居候させる気らしい。

「さ、もう寝ましょ?」

ルナは、ことも無げに言う。

「・・・・・」

俺は、考える。

いかに異世界でも、異性を家に泊めるのは、まずいのではないのだろうか?

出会った時も思ったが、彼女は、やはり警戒心が少ない。

普通は、警戒して、家にも入れないだろう。

ところが彼女は、食べ物を与え、風呂に入れ、さらには居候させよう、とまで言っている。

これを大っぴらととるか、単なる考えなしととるか。

だが、俺も、全面的に断る気はあまりない。

困っていたことすべてを解決してくれたのだ。

感謝はしている。

だからこそ、今すぐ寝るのは、躊躇われる。

「ああ、寝よう。

でも、俺は別にリビングでいいよ」

俺はそう言った。

俺は、恩返しのためにも、ルナの手伝いぐらいはしたい。

リビングなら、朝からいろいろなことが手伝える、と思ったからである。

俺は、朝が苦手なのだから。

・・・まあ許可は出ないだろうな。

「ダメ」

予想通り、ルナはリビングで寝ることを、許可しなかった。当たり前だが。

「この部屋使われても、まったく支障ないもん。

自由に使って」

「だが・・・」

なおも食い下がる俺に、ルナは言った。

「だから使っていいって」


話は冒頭に戻る。

ルナは言った。

「私も、人の役に立ちたいの。

初めての同居人だし」

もう同居人になるのは確定らしい。

それは別にいいが。

「それに、私は主人じゃないよ」

ルナは、主人のとこを否定してきた。

別に主人でもいいじゃないか、と思ったが、黙っておく。

「気を遣わなくてもいいのよ。

リビングに人を寝かすのは、見下すみたいで嫌なんだから」

ルナは意地でも部屋を使わせたいらしい。

その顔には、なぜか、焦りのようなものも見える。

そんな顔をされたら、俺も断れない。

「・・・わかった」

とたん、ルナの表情が、パァッと明るくなる。

「居候なんて思わないでよ?

同居人に上下関係はないからね?」

その表情は、とても明るく。

彼女が喜んでいるのが、よくわかる。


その顔を見て、俺は部屋のことなんてどうでもよくなった。

どうせ時間はあるだろう。

時間をかけて恩返しすればいい。

俺は微笑みながら、そんなことを考えていた。


俺は考え続けて気付けなかった。

ルナが、同居人にこだわる理由に。

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