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異世界の魔法剣士〜in剣も魔法もない世界〜  作者: 柿ピー
第4章/文化祭編・裏
32/40

第32話:決着

住宅街に着いたモルデラは、『探知(サーチ)』を発動して、フェクターの位置を確認する。

モルデラは今、フェクターのいる位置から、最も離れた区画にいた。

「私の勝ちだ」

モルデラは、勝利を確信した。


◇ ◆ ◇ ◆


「どうしたもんか...」

俺──フェクターは、何の気なしにつぶやく。

ゲームには勝ちたい。勝たないといけないんだが。

「無理ゲーだよなぁ...」

ため息が出る。

そもそも、俺は暗ちゃんの名前すら知らないんだから。

ここは、やっぱり道具を使わないとな。

漫画でも、困った時は道具(アイテム)使って状況打破するもんな。

さて、俺の現在の持ち物は。

──金(500円),ゲームの範囲内のマップ

ハンカチ,ティッシュ,魔方陣,風船...

「打破できるかッ!」

俺は、ティッシュをアスファルトに叩きつけた。

あっ、でも。

もしかしたら。

この魔方陣を使って打破できるかもしれない。

よし、この魔方陣を中心に作戦立てよう。


数分後。

作戦は組み上がった。

でもこれって、鬼ごっこ的には結構反則だよなぁ。

正々堂々ってのを全く意識してないなこれ。

・・・・・。

「まあいっか」

ここトネア見たく騎士道重視されないと思うし。

あとは、少し準備するだけ。


範囲の端の方の道で準備を終える。

人通りが少なくて、絶好のポイントだ。

そこから走り出す。

ちょうど、範囲の外側から、範囲のラインに沿って、さっきの路地裏から一番遠い方に向かって。

暗ちゃんがどうやって俺の位置を確認しているのかはわからないが、うまくいけばすぐに勝負がつく。

覚悟して待ってろよ。


◆ ◇ ◆ ◇


モルデラは、フェクターが走り出したことにすぐに気づいた。

それを『探知(サーチ)』で確認しつつ、フェクターから離れるように移動する。

移動すると、フェクターがかなりの速さで走っているのがわかる。

だが、追いつくには圧倒的に速さが足りない。

「無駄だと気付けるわけがないか」

思わず鼻で笑ってしまう。


どれだけ移動しただろうか?

唐突に、フェクターが立ち止まり、何かに座った。

さすがに疲れたのだろう。

モルデラとしても、休憩なしで走り続けるのは辛かったので、少し安心する。

探知(サーチ)」を使ったまま、モルデラも塀にもたれて、少し休憩する。


突然──

フェクターが消えた。

同時に。

視界の端に、誰かが、音もなく出現した。

「!?」

考えるまでもなく──

「フェクターか!」

「当ったりーッ!」

何か小さい物が飛んでくる。

間一髪でそれを掴み取り、改めてその方向を見る。

間違いなくフェクターだ。

「どうやってここまでワープした?」

「魔方陣さ」

フェクターはドヤ顔で言うと、風船の剣をこちらに向けた。

「さっさと終わらせるぜ」

フェクターは叩きかかって来た!

ってそれは...

「風船かよ!」

「文句あっか!?」

「いやねーけどさ!」

脱力するわ!

後ろに飛んで風船をかわしつつ、さっき掴んだもの──爪楊枝だった──を勢いよく投げつける。

風船ならこれで割れるだろ!

直後。


ブゥン!


といったような、重量感のある、とても風船とは思えない音がして。

爪楊枝が、空中でバキリと折れた。

「・・・・は?」

嘘だろおい...。

よく見ると、風船はほとんどしなっていなかった。

「どうよ?」

フェクターは、渾身のドヤ顔で言って来た。


「そんなの・・・そんなの風船じゃねーよ!」


◆ ◇ ◆ ◇


おー、暗ちゃんビビってる。

こりゃいいもんできたな〜。


種明かしをしよう。

まず瞬間移動の方から。

召喚の魔方陣を置いておき、ペアの魔方陣の方に乗って、魔方陣を起動。

要するに、自分で自分を召喚させたわけだ。

"召喚"というより、"入れ替え"の魔方陣って感じだったからできた。

しっかり研究しといてよかったぜ。


風船の方も魔法だ。

前に作った魔方陣の一つに、物の硬さを変えることのできる魔法があった。

それを持ち、風船の持ち手を包むように持って魔方陣を起動。

結果、魔方陣の効果で風船を石並みの硬さにできたわけだ。

この魔方陣を、とりあえず硬化の魔方陣と呼ぶことにした。


確か、硬化する魔法も入れ替えの魔方もトネアに存在していなかったはず。多分。

偶然とはいえ、新しい魔法を発明したことになっているのかもしれない、と言うことだ。


範囲の端の方に行ったのは、暗ちゃんが、俺から最も離れた場所に行くと考えたから。

そこに魔方陣を置いた。

反対側まで走ったのは、そこに暗ちゃんを連れて行くため。

魔方陣は、ティッシュに書いて、道端に石で固定した。

前作ったのは、おもちゃの剣に使ってるしね。


そうして、反対側までたどり着いた俺は、たこ焼きを食って、魔方陣を起動。

たこ焼きについてた爪楊枝を投げつけたわけだ。


俺は、暗ちゃんに歩み寄る。

「硬化魔法って知ってる?」

「知らねーよ、そんな魔法!」

「じゃあ位置交換は?」

「知らねーよ!お前オリジナルの魔法か?そんなのありかよ!」

まあ汎用性高いけどね。

にしても暗ちゃんのこんなに焦った姿初めて見た。

嬉しいねぇ...!

「その顔腹たつわ!」

あ、顔に出てたっぽい。


「じゃあ行くぜッ!」

俺は、風船を構えながら走り出す。

一気に薙ぎ払うも、かわされてしまった。

それでも休まずに、薙ぐ、薙ぐ、薙ぐ・・・!

やっと、暗ちゃんの着ているパーカーにかすった。

「クソっ」

ずっとかわしていた暗ちゃんが、舌打ちと共に、パーカーの内側に手を回す。

取り出したのは、一本の短剣。

それを勢いよく抜刀すると、風船を受け止めた。

ガキィン!という、風船とは思えない音が響いた。


まさか殺しには来ないよな?

いや、来ないと信じよう。

「そういや、暗ちゃんの本名は?」

風船で押しながら問いかける。

「・・・勝ったら教えてやるよ」

暗ちゃんが、短剣の向きを変えた。

ずっと力をかけていた俺は、受け流されて、風船を地面に叩きつける。

そこにすかさず、短剣の斬撃。

間一髪でかわしたが、まだ斬撃はくる。

斬撃をうけ流そうとすると、先に風船を弾かれた。

パァン!と。

風船が割れた。

硬くても、壊れるときはやっぱ風船なんだな。

・・・なんて悠長に構えてる場合か!?

──斬撃を受け止められない!

攻守が逆転した。


斬撃を、ステップのみでかわす。

暗ちゃんの表情が、どんどんニヤニヤしていく。

おいおい暗ちゃん。

まさか攻勢になったからって───

「「勝てる」とでも思っているのか?」

暗ちゃんが、当然だ、とでも言いたげな顔をした。

確かに、そちらが攻勢ならこちらは攻撃できないだろう。

いつかかわせなくなりそうだしな。

だけど。

思わず、鼻で笑う。

「なっ!どういうことだ?」

あら、気に障った?

でもお前忘れてるよ。


俺、魔法使いだぜ?

こんな一方的な状況でも、魔法を使えば反撃のチャンスなんて、いくらでも作れるさ。

幸い、右手にはまだ、硬化の魔方陣がある。

俺は、左手に魔力を込める。


「『石砲撃(ストーンショット)』!」


丸い石の弾が、俺の左手から高速で発射された。

暗ちゃんがバックステップでかわす。


その隙を付き。

俺はポケットから魔方陣を、魔力を込めながら取り出し、宙に放った。

この瞬間に、右手に握った硬化の魔方陣に魔力を込める。

空中の魔方陣が起動。

おもちゃの剣が召喚された。

空中で召喚されたそれを、手のひらにある魔方陣で包むように持つと、硬化の魔方陣を発動させる。

プラスチックの剣が、鋼鉄のように硬くなった。

隙をついてからここまで、わずか1秒。


その間に体制を立て直した暗ちゃんが、短剣で横に薙ぎかかった。

俺は、スライディングしながら剣を振る。

剣は、暗ちゃんの横腹を殴った。

ついでにスライディングの勢いで足を蹴り飛ばした。

当然だが、暗ちゃんは倒れた。


倒れた暗ちゃんの眼前に、剣を突き立てる。

「ゲームのルールは、お前に攻撃を当てたら俺の勝ち、だったな」

暗ちゃんが、暗い目で見上げてくる。

そこにあったのは、諦めの表情。


「──俺の勝ちだ。

約束通り、色々言ってもらうぞ」

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