第28話:魔法陣の実験
暗殺者がルール説明をした翌日。
俺は、できることなら暗殺者の隠れ家を「ゲーム」の日までに見つけておきたかった。
「ゲーム」で、暗殺者が人混みに行くなどして、攻撃できなくなってしまう前に、迅速に「ゲーム」を終わらせるためだ。
そんなわけで。
俺は、バイトの前に、街を歩き回り、暗殺者を探すことにした。
バイト後も、探してみることにする。
このバイト、本来は3時までだったのだが、大幅リニューアルのあとに、4時半までのびた。
と、いうのも。
店が人目につくようになり、学生の客が増えた。
きっと、ラノベの値段の張り紙が目についたのだろう。
が、ここで問題が発生した。
学生は、言うまでもないが、4時ぐらいから店に来る。
つまり、バイトのなかった時間が客足のピークとなった。
それでは悪いので、俺のバイトの時間を1時間ずらすことになった、というわけだ。
しかし、いくら探すとはいえ、簡単に見つかるはずもなく。
1日、また1日と。
手がかりを得られないまま、時間だけが過ぎていく...。
そんな最中。
俺は、「悪魔召喚」という、おどろおどろしいタイトルの本を見つけた。
それを見て、俺はふと思い当たる。
「そうだ。召喚魔法使ってみよう」
召喚魔法。
少し特殊な魔法で、魔法陣を描いて発動させるのが一般的だ。
ある程度上級の魔法使いにもなると、俺がウィンドボールを使うのと同じぐらいの感覚で使うらしいが、俺はそんなに上級ではない。
ちなみに、ウィンドボールなどの魔法も、魔法陣があるらしい。
つまり、魔法陣を描かなければ行けない、ということだ。
ではなぜ俺がこの魔法を使おうとするか。
理由は、武器の持ち運びにある。
日本では、凶器の持ち運びは禁止だ。
それに、棒なんかを持ち運んでいると、周りの目が冷たくなる。
だが、いざ攻撃するときに武器代わりになるものがあるとは限らない。
そこで召喚魔法だ。
バトルになったら武器を"召喚"すればいい。
バトルが終われば、"召喚"で送り返せばいい。
魔法陣は...少し習ったことがあるから大丈夫だろう。
よし、あとは紙だな。
「店長。裏が白紙の広告とかない?」
「あるぞ。こんどはなにを作るんじゃ?」
「いえいえ。私用で使うだけですよ」
俺は、さっそく店長から紙をもらうと、それを持ち帰る。
もらえた紙は20枚。
出来るだけ、この枚数内で完成させよう。
その夜。
「・・・出来た」
俺は、10種類の魔法陣を描き上げた。
すべての魔法陣が二つずつある。
実のところ適当に描いたので、どんな効果の魔法陣かはわからない。
けどまあ、こんな感じの魔法陣見たことあるし大丈夫だろう。
俺は1組の魔法陣を部屋の中央に置いた。
さて、と。
実験しますかね。
魔力を流し込むと、魔法陣が淡い光を帯びた。
この光は、魔力がチャージされている状態をあらわす。
そして、チャージが満タンになると、魔法が発動する。
効果なしの魔法陣ならチャージしても光らないので、これはなんらかの魔法が使えると言うことだ。
俺はワクワクしつつ魔力を流し込む。
光が強くなった。
そして──
「ぅおわっ!?」
強風が、部屋の中で吹き荒れた。
ウィンドボールの強化版か?
とにかく、魔法陣がペアである必要がないやつだった。
俺は、部屋に散らばった魔法陣を集める。
さっき発動させた魔法陣の余白部分に「風」と書き込む。
2組目の魔法陣を部屋の中央におく。
魔力を流し込むと、これも淡い光を帯びた。
光が強くなった。
そして──
水が発生した。
水は、しばらく空中を移動する。
そして、バシャン、という盛大な音を立てて、床に落ちた。
慌ててタオルで拭きとる。
俺は、魔法陣の実験を外でやることを決意した。
翌朝。
「昨日の夜、水こぼした?」
「・・・いや、こぼしてないよ」
「ふーん・・・まあいっか」
やっぱり聞こえてた。
夜中にすいません...。




