第2話:異世界
気がつくと、不思議な場所にいた。
見たことのない石のような地面。
素材のわからない建物。
遠くには、勤めていた城と同じか、それ以上の高さをした四角い建物がたくさん。
どれも、見たことがなかった。
「どこだよここ」
フェクターはつぶやき、歩き出した。
土より硬く、黒い地面を。
どれほど歩いただろうか?
両端の景色は、最初にいた場所とたいして変わらない。
変わったとすれば、生垣より、石のようなものでできた塀の方が多くなったことぐらいだ。
もしかしたら、人もトネア王国と何かが違うかもしれない。
なので、人と遭遇しないのが、とても都合がいい。
・・・とか思ってたら。
コツ・・・コツ・・・コツ・・・
「!」
足音がこちらに近づいている。
フェクターは2秒ほど悩んだ末に、横にあった塀を飛び越えた。
塀の反対側は、空き家らしい。
植物の蔓が這い、遠目には緑色に見えるような家があった。
それを目の端に見ながら、砂利のひかれた地面に着地する。
幸い、音はあまりしなかった。
どうやら、家の裏側に入ったらしい。
砂利もある事に少し安心しつつ、足音の主を見ようと後ろの塀を見る。
これも幸いなことに、塀の上の方は、半円の形をした穴が4つ空いていた。何かの装飾なのだろう。
そこから反対側を見る。
通ったのは、フェクターより少し背の低い若い女だった。
茶色がかった黒い髪を、2つにくくっている。
目も、髪の色を少し濃くしたような色。
そして、超低級貴族の礼服のような紺色の服を着ていた。
だが、それよりフェクターの目を引いたのは・・・
「!?」
剣も杖も、持っていないことだった。
少なくとも、故郷のトネア王国では、平民でも小さな剣か杖を常に持っていた。
人さらいや、通り魔から、身を守るためだ。
それを持っていない。
フェクターにとって、ありえない光景だった。
フェクターは驚いた。
そして、足を動かしてしまった。
さらに運が悪く、そこに、例にもよって何でできているのかわからない管があり、つまづいた。
「うぉっ!?」
倒れはしなかった。
でも、声が出た。
正面を通っていた女は、案の定こっちを向いた。
そして、目があった。
「!?」
驚かれた。
女は、歩いてどこかに行った。
フェクターは、動けなかった。
優柔不断だからである。
フェクターが次に取る行動を迷っていると、さっきの女がやってきた。
家の反対側から。
(やばい!)
反射的にフェクターは考える。
この後、怒られないようにするための言い訳を。
しかし、フェクターより先に。
女の方が。
口を開いた。
「何なの、その格好・・・?
何で、こんな時代に、腰に剣とかつけてるの・・・?」
「・・・・・」
フェクターも、読書を少しはする。
特に、ファンタジーが好きだ。
前に一度、平和で、剣も魔法も必要のない世界の本を読んだことがある。
だから、何となくわかった。
どうやら、俺は異世界に飛ばされたらしい。
剣も魔法も必要のない、平和な異世界に。
「・・・・・・・えーっと・・・・」
彼は、どう説明するべきか、また少し迷った。