第19話:風船の修羅場&合唱祭の賞品
パァン!と、風船の割れる音。
「誰だ今割ったの!」「お前か!」「ちょっとそこの風船とって!」「邪魔だそこ!」
文化祭前日。
私達は、集めた風船を膨らませ、形を作っていた。
現時刻は4時。完全下校は5時半。
時間がギリギリになり、軽く修羅場だ。
あれから2日かけて考えたバルーンアートの計画。
黒藻くん曰く、「計算上風船の数はカンペキだ」とのこと。
その計算が間違いでないと祈りたい。
そうこうしている間にも、剣や犬、花など、子供受けしそうな風船が次々完成する。
クラスメイトのほとんどが運動部という脳筋な我がクラスの場合、クラスメイト総動員で作業している。
「これなら風船は足りそうだね」
「そうね」
私の隣で作業してる黒藻くんも安心したようだ。
パァン!
また割ったな。
割ったのは・・・また野球部の山田くんか。
まあ多少は大丈夫だ。
100本あったからね。
余裕はあるだろう。
「入り口できたわよ」
「お疲れ〜」
麗乃たちも作業が終わったらしい。
あとは風船だけね。
ペースが遅いのは仕方ない。
なんたって脳筋だからね。
時刻は5時。
まあ30分あればなんとかなるか。
その10分後、事態は大きく動いた。
「風船無くなったぞ!」
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・は?
「な、無くなったって、100本全部?」
黒藻くんが、呆れの入った声をあげる。
できた風船はもう並べてある。
足り・・・ない?
「ちょ、ちょっと待ってよ。なんでもう無い・・・」
ここで、私の目は、ある一点に止まった。
つられて、みんなもそこを見る。
そこには、大量の風船の破片が周りに落ちてる、岡嶋くんがいた。
「・・・・・」
「・・・・ごめん・・・」
「・・・・・・・」
えええええええ!?
岡嶋ぁぁぁぁぁあ!?
何枚割ってんだぁぁぁぁ!?
・・・・・・・・・・・・等々の文句が全員の心を駆け抜けたが、もちろん、声には出さない。
「・・・実行委員のやつ、買ってきてくれ!」
誰かが言った。
黒藻くんが、財布を持ち、立ち上がった。
私も、仕方なく立ち上がる。
どうしてこうなった・・・。
学校前の百円ショップまで全力ダッシュ。
風船50本を買った。(それしか無かった)
教室に帰ると、制限時間は、あと五分。
本物の修羅場が完成した。
担任に延長の相談をしたりして、なんとか時間を増やして。
結果、ぎりぎりではあるが、準備は間に合った。
危なかった・・・。
そうそう、こっちの話もしておかなければ。
合唱祭の練習の話だ。
助かったことに、このクラスには、いわゆる『文化祭頑張ろう系』が多くいた。
彼女達が中心になって、勝手にクラスをまとめてくれて、実行委員たる私は、非常に楽だった。
さて、文化祭まであと1週間ほどのある日の放課後。
この日の放課後練習でも、彼女達がやはり騒ぐ男子を黙らせていた。
あくびが出るほど平和だ。
・・・と、思っていたら。
「あくびしない!」
指差されて言われた。
そのあとも、ズバズバ注意して行く。
正直、熱心すぎて怖い。
そんなこんなで練習終了。
終わったあと、指揮の岡嶋くんが、爆弾発言をした。
「金賞取ったら賞品出るらしいよ」
この発言が、クラスを動かした。
あっさりつられたクラスメイトは、クラスメイトほぼ全員。
なんか、意地汚いクラスだと思った。
このクラスが笑撃の結果を迎えるのは、また別の話。




