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異世界の魔法剣士〜in剣も魔法もない世界〜  作者: 柿ピー
第3章/文化祭編
17/40

第17話:クラス会議

前回までのあらすじ

───プラネタリウム難しい

難しいから、と言ってプラネタリウムを却下したところで、状況は一切変わらない。

とはいえ、2週間という期間は、簡単なものを作るには十分な時間だ。

私は、別の案を募集することにした。


そう決意した翌日。

「今日の社会は、自習でーす。

監督の先生いないけど、一応静か目にやってくださーい」

教卓前で、クラス委員長が、どこか投げやりな感じで言う。

クラス内で、静かに上がる歓声。

もちろん、私も小さくガッツポーズ。


火曜日、私たちのクラスは、6時間目が自習になった。

おそらく、静かにはならないだろう。

まだ、みんなに例のことを言っていない私には好都合なイベントだ。

委員長が席に着いた後、私は、入れ替わるように立ち上がる。

「文化祭の出し物を変えたいと思います」

この唐突な発表に、教室内は少しざわめいた。

「質問、いいっすか?」

プラネタリウムを推していた男子生徒が手を上げる。

大柄な、およそ星など似合わないような男子だ。

「どうぞ」

男子生徒が、立ち上がりながら言った。

「プラネタリウムに決まったんじゃないんすか?」

この言葉に、いくらかの生徒が「そうだそうだ」とめんどくさそうに言った。

「プラネタリウムは、現実的に難しいです」

私が言うと、クラスのほとんどの人が、「やっぱり?」とか、「確かにな」というような声を上げた。

「プラネタリウムを作るのは、費用がかかりすぎて、文化祭に向いていません。

簡単な方法だと、プラネタリウムに見えないものしかできませんよ」

私が言うと、男子生徒は一言、「そうか」とだけ言って、座った。

彼が納得したからか、ざわめきも、少しずつ小さくなる。

「というわけで、新しい案を募集します。

確認ですが、食べ物系は3年生がやるので、ダメです。

それ以外でお願いします」

「・・・・・・」

・・・誰も、喋らない。

重い空気だ。

私は、小さくため息をつく。

「じゃあ、近くの人と話し合ってください」

私が言うと、教室が再びざわざわしだした。


頃合いを見て、「発表してくださーい」と呼びかける。

「・・・・・・」

途端に、沈黙するクラス。

グラウンドから、体育の先生の声が聞こえる。

・・・・・・。

いやいや、さっきのざわざわはどこ行ったのよ!?

なんだったの、さっきの相談タイム!?

脳内で盛大に突っ込んでみる。

「・・・・・」

しかし、誰も手を挙げないし、一言も発さない。

・・・・・。

しょうがない。誰か勝手に指名するか。

うん、いいよなコレは。不可抗力だな。

理由を自分で勝手につけて、私は、教室内を見回す。

みんな、目があった直後に目線を外す。

・・・・・。

君らのような勘のいい学生は嫌いだよ。

・・と、思ったら。

最初から目線を外していた人がいた。

ずっと俯いてる。

「麗ちゃん、なんかある?」

「はうっ、私?」

麗乃だ。

どうやら、俯いていたわけじゃなく、寝ていたらしい。

「文化祭の出し物の案、なんかある?」

私がもう一度言うと、「わざわざ私を当てるとは、ひどいとこもあるのね」とボソッと言って立ち上がった。

聞こえてるんだが、気にしない。

「・・・この学校の歴史とか、まとめたらいいんじゃないかな」

そう言うと、麗乃は座った。

周りの人は、何も言わない。

私は、それを黒板に書き、次の人を決めにかかる。

改めて見ると、男子たちが「俺たちは当たらねーから大丈夫」と言いたげな顔(推測)で座っていた。

黒藻(くろも)くん、なんかある?」

「え、ぼく?」

いつから男子は当たらないと錯覚していた?

まあ黒藻くんは正面にいたから当てたんだがな。

黒藻くん──黒藻悠介(くろもゆうすけ)は、うちのクラス唯一の癒し系男子だ。

ふわふわした雰囲気に、のんびりした喋り方。

女子からも、可愛いと人気がある。

私としては、もう少しせかせかしくても良いと思うけど。

黒藻くんは、ゆっくりと立った。

「うーん、ぼくは、バルーンアートなんか良いと思うな」

ほほう。

意外な意見が出た。

周りからも「おぉー」と、声が上がる。

「なるほどー」

「風船なら安く手に入るし」

「配れば捨てなくて良いしな」

「お前天才かよ」

クラスの反応を見た感じでは、バルーンアートで良さそうだ。

私は、確認を取る。

「では、バルーンアートに変更で良いですか?」

「おー、良いと思うぜ」

「賛成だわ」

案の定、反対意見はなかった。

こうして、クラスの出し物は、プラネタリウムから、バルーンアートに変更になった。


学校帰りに、古文堂に寄る。

「こんにちは〜」

「いらっしゃーい」

今日は、店長さんが入り口近くにいた。

ちょうどいいので、質問する。

「バルーンアートの本とか、あります?」

私が言うと、店長さんは、フェクターを呼び出した。

フェクターは、奥の本棚を掃除していたらしい。

私を見ると、

「学校お疲れさん」

と微笑みながら言った。

「フェクター、風船芸の本、とってきてくれ」

「はーい」

フェクターは、きた方とは反対の本棚に向かう。

その足取りは、ほんの少しふらついて見える。

なぜか、今日は二人とも疲れている様子だ。

何かあったのかな?

私が聞くと、

「ちょっとね」

とだけ言って、「そんなことより」と言った感じで私に本を3冊手渡した。

「これが入門編。んで、これとこれがよりマニアックなやつ」

「そんじゃ、入門編の買うわ」

「100円な」

そこそこ厚い本なのに100円とは、やはりこの店は安い。

「フェクター、今日は終わりんさい」

会計を終えると、店長さんはそういった。

「んじゃ、お言葉に甘えて」

フェクターが帰りの準備をしに、店の裏の事務室に入っていく。

店長は、フェクターが裏に行くと、

「今日はいろいろあってフェクターも疲れとる。

家まで頼んだよ」

と言ってきた。

いろいろ・・・?

何があったんだ・・・?


「仕事って、こんなに疲れるもんなんだな」

帰り道。

フェクターは突然行った。

「・・・? まあそうよね。

え、もしかして、客が一気に増えたとか?」

「まあそんなとこだよ」

客が一気に増えたのなら、確かに疲れるだろう。

なんせ、ちょっと前まで客はほぼゼロだったのだから。

だとしても、この疲れようはおかしいだろう。

まあ言ってくれないのならそれでも良いけどね。

でも、ちょっとぐらい相談しても良いのに。

「ねえフェクター」

「なんだ?」

「もっと、人に頼ってもいいのよ?」

あ、なんかこのセリフ恥ずかしい。

つい、口走ったが、フェクターには、「?」という顔を返された。

よかった、深く考えられなくて。


フェクターが疲れていた理由を私が知るのは、まだ先の話。

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