第16話:文化祭 企画
「・・・なにこれ」
私──ルナは、渡されたプリントに、こう感想を述べた。
「何って、的里高校の公式サイトをコピーしたやつよ」
プリントを渡した友人は、プリントを私の手からとった。
「書いてあるでしょ?」
そう言って、文章の最後の、「的里高校公式サイトより抜粋」の部分を指差した。
彼女の名前は、伊月麗乃。
先に言ったように、私の友人だ。
持っている情報の量なら、この学校では最高クラス。
誰にも言っていないのに、いつの間にか知られていたりするので、「情報マシーン」という異名でも知られていて、そこそこ有名人だ。
依頼があれば、個人情報が絡まない限り、依頼された情報を教えてくれたり、広めてくれたりする、一種の情報屋のような人だ。
さて、そんな彼女とは、今年で3年間の付き合いになる。
中学も高校も同じで、中学2年生の時以外はずっと同じクラス。
当然、仲良くなった。さらに、出席番号も近く、今もこうして、後ろを振り向くだけで会話ができる。
今日は月曜日。
すでに6月に入り、文化祭まであと2週間となった。
時刻は午後1時。
昼休憩だ。
文芸部の私としては、締め切りに間に合うかわからない作品の執筆に今すぐにでも取り掛かりたいが、部室のパソコンで書いているので、書けないのが(放課後しか使えない)ツラいところだが、まあ仕方ない。
そんな中、突然麗乃に渡されたプリントを、わけもわからないまま読んだのである。
「で、何が言いたいのよ?」
「いやいや、大したことじゃないのよ。
中学と違って、自由度高いねって思ってね」
「それもそうね」
「・・・ねぇ」
「何よ?」
ここで、麗乃は、少しためた。
「クラスの出し物、どうすんの?」
「・・・・・・・」
私は、目線を大きくそらした。
察しのいい人は気づいたと思うが、私は、文化祭実行委員なるものに所属している。
文化祭実行委員ーそれは、その名の通り文化祭の行動方針について、大きな権力を持つ係だ。
各クラスから1人ずつ選出され、クラスの出し物について、準備を進めたり、意見をまとめたりするのが、仕事内容だ。
私は、なりたくてなったのではないが、なってしまったものは仕方がない。
そう割り切ってた時期が、私にもありました。
・・・えぇ、ありましたとも。
過去形だよ。
要するに、やる気を、なくしました。
・・・・
言い訳をさせてください。
まず、クラスから、意見がほぼ出ませんでした。
で、唯一出た意見がプラネタリウム。
は?って思った人もいると思います。
窓に暗幕を掛けて真っ暗にした教室の天上に、LEDライトを置いて、星っぽくするそうです。
はっきり言います。
無理です。
なので、他の意見を待っているのですが、全く出ません。
・・・・
言い訳終了。
まあ独断で出し物を決めることがあっさりできる状況に置かれたのである。
私は、やりたいことがあるわけでもないので、することが(あるけど)なくなり、気がついたらやる気をなくしてしまっていた。
麗乃に助けを求めると、「それは、ルナが決めることよね」と言われて、逃げられた。
それ以来、頼る気になれず、ただただ、時間を浪費している。
だが、あと2週間だ。
そろそろ決めないと、本当にまずい。
私は、「もう決めたわ」と、麗乃に見栄を張り、今後の計画を立てた。
放課後。
月曜日は、文芸部は休みなので、4時下校だ。
私は帰路につき、そのまま、古文堂に向かった。
ドアを引き、入店する。
ベルが、チリンチリン、と鳴った。
「いらっしゃい・・と、ルナか」
出迎えてくれたのは、現在同居中のフェクターだ。
「その反応はないでしょ」
と、古文堂でのいつものやり取りをして、工作コーナーに向かう。
「何を探してんだい?」
本棚の掃除中だった店長に声をかけられる。
「実は───」
かくかく しかじか(説明中)
「──ということでして」
「なるほど。
若者は大変じゃの」
店長は、そう言うとフェクターを呼んだ。
「聞いとったな?」
「・・・えぇ、まぁ」
「心当たりは?」
「2冊ほど」
「えっ、あるの?」
フェクターすごい!
まるで、在庫を検索したような感じだ。
一店に一人欲しい感じだ。
案内される。
渡されたのは、週刊誌のような見た目の、フルカラーの本が1冊。
そして、いろいろな工作(DIYというやつか?)について載っている厚めの本が1冊。
「どちらも詳しく載ってるぞ」
聞きながら、適当にページを開く。
週刊誌っぽい方は、写真がメインだ。
厚めの本は、文でも図でも説明されていて、他の物の作り方も多く載っていた。
「じゃあ、こっちで」
私は、厚めの方を買った。
夜、作り方を読んでみる。
「・・・うん、やっぱプラネタリウム無理だわ」
私は、プラネタリウムを諦めた。




