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異世界の魔法剣士〜in剣も魔法もない世界〜  作者: 柿ピー
第2章/アルバイト編
14/40

第14話:成果

作業の翌日。

多少改装したところで簡単に客が増えるわけもなかった。

商売は難しい。

「爽やかな朝ですね〜」

「もう10時半じゃぞ」

今日も古文堂は静かだ。

まだ朝なのもあるだろう。

まあいい。

気長に待とう。

変化がなければそれまでだ。


昼過ぎ。

事態は、思っていたより大きく動いた。

客が、来るのだ。

今まで、客なしが普通だった店に。

大忙し・・・というわけでもなく。

客は多いわけじゃない。

それでも。

古木さんは、店長なのに、アルバイトの俺よりパニック状態だ。

「こんなの十数年ぶりじゃ!」

と、嬉しい悲鳴をあげていた。

だが、人間、不慣れなことはするもんじゃない。

やはり、レジが混んでいる。

外の窓掃除をしている俺は、ほのぼのとした気分でそれを眺めていた。

「あっありがとう、ごごご、ございます!」

「はーい」

客が、面白いものを見るような、あるいは、困ったような顔をしながら、店から出て行く。

店長、噛みすぎだよ。

「こんなとこに本屋あったんだね」

「ねー、こんなに安いなんてね」

「池逢さんもいい情報持ってんじゃん」

そんな会話が聞こえた。

頼んでないが、独断で、ルナも手伝ってくれたらしい。

今夜、礼を言っておこう。

店の存在も、以前より認知されたようだし、計画は成功と言えるだろう。

「掃除終わりました〜」

俺が店に入ると、人が減り、気を持ち直した店長が、それでも急ぎ気味にレジを打っているところだった。

焦っているのか、汗がすごい。

それを横目に見ながら、事務室へ。

俺は雑巾を洗い、ゴム手袋と一緒にロッカーにしまう。

ついでに、新しいタオルを出して、軽く濡らしたあときつく絞る。

事務室から出ると、最後の客が帰ったところだった。

「お疲れ様です」

俺は、湿らせたタオルを投げ渡す。

パシッとキャッチすると、店長は、ふいーっと息をつき、椅子に座った。

「ここまで増えるとは思っとらんかったぞ・・・」

そういうと、店長は、もう一度息をついた。

正直、まだ5人しか来てないから、余りよく思えんが、

「成功ですね」

俺が言うと、店長は薄く笑った。

「ほぼフェクターくんの活躍じゃな」

「そうでもないです。

絵は描けませんから」

「謙遜せんでいいわい」

その顔に、イライラしている感じはない。

俺が何を言っても、この人は譲られないようだ。

そのとき、チリーンと、ドアのベルが鳴った。

ちなみに、このベルも磨いて、輝きを取り戻させた。

「いらっしゃいま・・・あ」

「調子はどう?」

入店してきたのは、ルナだった。


「そう、5人だけかぁ」

そういうと、ルナは、残念そうに笑った。

「十分さ。

これから増えるだろうし」

あれから、ルナは本を1冊購入して、俺の今日のアルバイトが終わるまで店にいた。

そして、俺と一緒に帰っているのだ。

結局、客数は昼過ぎがピークだった。

それでも。

「客数が前の5倍だぜ」

「あの店、よっぽどピンチだったのね・・・」

ルナのツッコミももっともだ。

アルバイト代が出るのか、正直心配だ。

ああ、そういえば。

「ありがとうな、ルナ。

宣伝、してくれたんだろ?」

俺が言うと、「誰に聞いたのよ」と、ブツブツ言った後、

「役に立った?」

と、聞いてきた。

俺がうなずくと、安心したように笑った。

そして、キッとこっちを向いた。

「剣芸伝、売り切れ間近だったわ。

張り紙、書き変えるのよ」

「了解」

そうこうしてるうちに、池逢家についた。

園芸でもしたのか、かすかに土の匂いが漂っている。

「花、育ててたっけ?」

「? 育ててるわよ」

ルナは、疑問を持った顔で答えた。

「なんで聞いたの?」と言いたそうな顔だ。

「ちょっと気になっただけさ」

俺が言うと、自己解決したのか、表情は微笑みを含んだ。

鍵を開けて、家に入る。


夜は普段通り。

いつものように夕食を作り、いつものように入浴して、いつものように寝る。

普段通りだった。

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