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異世界の魔法剣士〜in剣も魔法もない世界〜  作者: 柿ピー
第2章/アルバイト編
12/40

第12話:社会見学?

俺が古本屋で働き始めて3日たった。

俺が思っていたより、この古本屋は本が多くあった。

古本屋の名前は、「古文堂」。

仕事内容は、本の整理と掃除である。

他の店員は、面接してくれたおじいさんだ。

そう、おじいさん1人である。

そして、初日に知ったが、このおじいさん、店主だ。

名前を、古木庄司(こきしょうじ)という。

仕事が大変だからと、アルバイトを探し始めて半年経っていたらしい。

確かに、60代後半(推定)には、本の移動はキツイだろう。

まして、店主には、それ用の仕事もあるのだろう。

俺は知らんがね。

だが、それ以上に重要なのは・・・。

「今日もこねぇな」

「そうですね」

今の会話からもわかるように、客が少ないのである。

客が少ない(イコール)儲けが少ない。

本は多くあるのに。

今、店内には、やわらかい午後の日光が差し込んでいる。

外で鳥のさえずり。

あまりののどかさにあくびが出た。

大丈夫か、この店。

バイト代、でるよな?

不安になってきた。


ふっと、アイデアが浮かんだ。

俺は唐突にカウンターに手をついて立った。

「客を呼び込みましょう」

「おぉっ!どうしたんじゃ急に」

古木さんは急に声を出した俺に、いつものようにあたたかい目を向ける。

「できるモンならやっとるよ」

しかし、古木さんは、その顔のままため息混じりにそう言った。

「何をしたんですか?」

「この町を、宣伝しながら歩いて回ったんじゃよ。

不審者扱い寸前まで行ったよ」

「・・・そうですか」

不審者扱い・・・?

いったいどんな宣伝をしたんですか、古木さん。

怖いので聞かないが。

「じゃあ、他店を見に行きましょう」

俺が言うと、古木さんはしばらく考えるそぶりを見せたが、そのあと、ポンっと手をうった。

「その考えがあったか・・・!」

そう言って、彼は席を立った。

営業用のワイシャツ(胸元に店名が縫ってある)を脱ぎ、Tシャツ姿になる(俺も古木さんも、Tシャツの上からワイシャツを着ていた)と、こっちを見て言った。

「今から行くぞ」

その手には、鍵がある。

「・・え、あ、はい」

俺は慌ててワイシャツを脱ぎ、いつもの服装になったあと、「closed」と、書いてある掛け札をとった。

今日は、臨時休業だ。


というわけで。

俺たちは、徒歩20分ほどの位置にある古本屋、「Forest Books」にやってきた。

まず、目に入ったのは。

「張り紙か」

古木さんがつぶやく。

何円で何が売れる、と言った情報の書かれた、画像付きの張り紙。

だが。

「それだけじゃないですよ、店長」

「なに。

他にもあるというのか」

おどろく古木さん。

「看板も変えたほうがいいですね」

「な・・なるほど」

今の古文堂の看板は、黒っぽい逆三角形の木の板に、「古文堂」と白い文字で書いてある。

だが、「Forest Books」の看板は、緑色で、木のイラストがある。

とても目立つ。

古文堂の看板も、イラストつけるか。

「さあて、店内に入りますか」

「そうじゃな」

店に入る。

とたん、人の声や音楽が店外に溢れ出る。

店内は、やはり綺麗だった。

だが、ホコリは古文堂の方が少ないだろう。

「掃除は完璧だったようですね」

「そうじゃろうな」

俺が言うと、店長は得意げに頷いた。

本の値段を見る。

「ここ高っ!」

「うちと比べとんのか?

なら当たり前じゃ。

うちは、普通の店より安いからな」

俺が小声で言うと、店長は、やはり得意げに言った。

この店を基準にするなら、古文堂は、かなり安い。

例えば、古文堂で150円の本が、ここでは300円だ。

古文堂は、値段は申し分ない。

レジを見る。

あれは。

「普通だな」

「普通じゃな」

レジは、なにも見ずに素通り。

こうして、俺たちの無断見学は終わった。


古文堂に帰る途中で、俺は今後の計画を練る。

(見直す点はあった。

例えば看板。

例えば張り紙。

だけど、すぐにできることが多くあった。

まずは張り紙かな。)

一方で、店主の古木は、費用を何円かけるか悩んでいた。

金の少ない古文堂。

なのに、フェクターは金のことをまだ考えてないように見える。

古木は、小さなため息をついた。


古文堂の再繁までは、まだまだかかりそうだ。

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