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異世界の魔法剣士〜in剣も魔法もない世界〜  作者: 柿ピー
第1章/異世界馴れ初め編
10/40

第10話:町

朝日は、どこの世界でも同じようなものである。

起床してすぐに当たると、目が覚め、なかなか気分がいい。

俺──フェクターはカーテンを開け、二階から街並みを眺めた。

建物の形が三角屋根の家の多いトネアとはかなり違う街並みがあった。

俺は、用意されていた寝巻きから、昨日着ていたシャツとズボン(魔法で洗濯済み)に着替えると、部屋から出てリビングに降りた。


ルナはまだ起きていないようだ。

時計を見ると、午前5時56分。

トネアと基準が同じなら、まだ早い時間だ。

カレンダーは、「4月」と左上に書かれたページが開かれている。

試しに窓を開けてみると、涼しい空気が流れ込んできた。

季節の基準も、おそらくトネアと同じ。

4月は春のようだ。

俺は、洗面所で顔を軽く洗い、外に出る。

ポストを見ると、トネアと大して変わらない見た目の、新聞紙が入っていた。

新聞を取り、リビングに戻る。

そのまま椅子に座り、新聞を読む。

新聞で日付を見ると、「4月22日」となっていた。

この時、時刻は6時をすこしすぎていた。


しばらくすると、半目のルナが寝室から降りてきた。

「おはよう」

「おはよ〜」

軽いあいさつ。

「・・・何時に起きたのよ」

ルナは、カーテンと俺の持っている新聞を見て、そう言った。

「20分ほど前だ」

「・・・かなり早いわね」

ルナは口をぽかーんと開けている。

「・・・どうした?」

「あぁ、なんでもないわ。

待ってて。すぐ朝ごはん出すわ」

そう言ってルナは台所に行った。

「別に急がなくていいんだぞ」

俺は軽く声をかけ、新聞を読む。


朝ごはんは、トネアではいたって普通の、それはもうどこにでもあるようなトーストだった。

トーストが日本にもあることに少し安心しつつ食べる。

食べ終わると、昨日と同じように皿を魔法で洗う。

「魔法ってほんと便利ね〜」

横で歯磨きをしているルナが言う。

「多分ルナでも多少は出来ると思うぞ」

俺が言うと、ルナは驚いた顔でこっちを見た。

「・・・今度教えて」

「ん、いいぞ」

横でルナが、歯ブラシをくわえたままガッツポーズをとっているのが見える。

ルナにとって、魔法を使うことは楽しみなことらしい。


「・・・じゃあ、そろそろ学校行くね。」

7時5分ごろ、ルナは黒っぽい服を着、カバンを持って──つまり、昨日見た時の格好だ。あの服は「制服」と言うらしい─玄関で言った。

「気をつけろよ」

俺が言うと、ルナは微笑んだ。

「大丈夫よ。

いつも通ってる道だし。

ああ、出歩いてもいいわ。剣さえ持たなければ」

ルナはそう言って出て行った。

俺は、玄関で手を振って見送った。


布団を干し、風魔法のスローウィンドでホコリを窓から外にある程度出したあと、俺は外に出た。

周辺の道を覚えるためだ。

途中、犬の散歩をしている人や、庭で植物に水やりをする人、通勤している人など、多くの人を見かけた。

しかし、やっぱり誰も剣や杖を持っていない。

よほど平和な国らしい。


...ぶーーーん

と言った感じの音とともに。

正面から、銀色の金属でできた乗り物がきた。

人1人分の高さはありそうだ。

俺から見て左側に乗っている男の人は、迷惑そうにこっちを見ている。

「プーー!」

という音を乗り物が発した。

俺は慌てて道の真ん中から端に寄る。

その乗り物は、馬車と同じかそれ以上の速さで俺の横を駆け抜けた。

運転していた男は、変わったものを見る目でフェクターを見ていた。

「なんだあれ」

俺は思わずつぶやく。

「あれが車?なんだろうな。

あんなのが馬車の代わりにある、だと?

速すぎるだろう」

ちなみに、この時の車の速さは、時速40キロである。

まだまだ遅い方だが、フェクターに衝撃を与えるには十分だった。

しかし直後。

チリンチリン、と。

フェクターの後ろで、鈴のような音が鳴る。

フェクターがバッと振り返ると、そこには、前にカゴのついた、1人乗りの小さな乗り物があった。

「・・・ぅおっ」

変な声をあげてフェクターが硬直する。

乗っていた少年は、「おぉー」と言いつつ、フェクターを見ながら通りすぎる。

「・・・すげぇ」

それは、一般的な通学用自転車だが、フェクターをさらに驚愕させた。


さて、なんだかんだあったものの、フェクターは昔ながらの商店街にたどり着いた。

フェクターは、商店街を歩く。

「いらっしゃい」

と、声をかけてきた店すべてに入っていた。

見たことのないものが多いので、なかなか飽きない。

「あんたこの町の人じゃないね」

八百屋のおばちゃんが声をかける。

「わかります?」

フェクターが言うと、おばちゃんは「カッカッカ」と笑った。

「そりゃわかるさ。そんな変わった色の髪と目の人見たことないわい」

「・・・ぁ」

フェクターは小さな声をあげた。

フェクターは、青っぽい髪と、緑色の目を持っている。

だから、いろいろな人が見てきたのだ。

今さら気づいた。

おばちゃんはまた笑うと、

「観光かい?

ならサービスだ」

と言って、トマトをフェクターに渡した。

「え、でも・・」

「持ってきな」

そう言って、八百屋のおばちゃんはにっこり笑った。

「・・・ありがとうございます」

そう言うと、八百屋のおばちゃんは、「カッカッカ」と笑い、

「気をつけんさい」

と言った。

フェクターは、お辞儀をして、八百屋をあとにした。

昼に帰宅し(道は覚えた)、昼食にトーストともらったトマトを食べ、あとはのんびり、1日を過ごした。


夜。

「・・・で、どうだった?」

ルナのそんな質問に、フェクターは、

「面白かったよ」

と、答えた。

「そう。よかったわね」

ルナはそう言って、安心したように微笑んだ。


車に、自転車に驚き、日常に驚きが多いフェクター。

フェクターが日本に慣れるには、まだまだ時間がかかりそうだ。

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