無線LAN
「やっと買ったんだ」
俺は友達の家に来て、その装置を見ながら言った。
「そうそう。どうにか親を説得してね」
友達は、大学を家から通っている。
俺は下宿しているわけだが、友達の家は、ちょうど俺の下宿先と大学の間にある。
たまにこうやって立ち寄らせてもらって、宿題してたり、予習してたり、遊んだりしているわけだ。
そして、とうとう無線LANを導入したようだ。
「これで速度早くなるんじゃないか」
「ならいいんだけどねー」
なにか友達は不満げだ。
「どうしたんだ」
「いやね、有線に比べてさ、早くなると思ったんだよ。実際、家の中のネットであれば、速度は速くなったんだよ」
「いいじゃないか」
「“家の中では”な。外とつなげるときにはさ、契約しているプロバイダーの速度に依存するってことになるだろ」
「そうだな」
「そこさ。それで外とのつながりの速度は変わんねーんだよ。てことで……」
「速度上がらないのか」
「そういうこと」
「なんだよー、なら置く意味ってあんのか?」
「通信は安定するからな。ま、置いておいて損はないさ」
そういいつつ、友達はパソコンを無線で動かして遊んでいた。