夢の影
裸足のそれから伝わってきたのは
心地好い冷たさでした
傷に流れ込む水の感触さえ
とても優しいのです
歩き続けた足が
こんなにも悲鳴をあげていたとは
夜の森に佇むその影に
誘われるまま
我を失っていたのでしょう
それがあまりにも美しかったから
あまりにも似ていたから
私は触れたいと
ただそれだけを望み
月明りの中
木々の声を聞いていました
葉の雫が水辺に堕ちる音は
消えゆくほどに儚く
水面と一体になる瞬間は
息を呑むほど刹那で
私は強く焦れました
まるであなたの泣き声のようで
その姿を見たいと思うのです
静かな月夜に
葉啼りが耳に良く
照らす青い光は
その影を暗く 優しく 愛しげに抱き
胸をざわつかせては
森を蒼く染め上げていくのです
愛しい 愛しい 月
こちらに追いでと
水辺の瞳に映る己の姿に
月は充ちたりて色付き
今にも堕ちていきそうです
あまりにも 見つめ合い
あまりにも 遠いため
湖は震え 泣き
届かぬ腕を伸ばしては
森になだめられているのでしょう
まるで夢に見る影の
それは ああ あなたなのでしょうか