7.とあるところの、とあるお話
虚空を、刃が切り裂く音が響く。
飛び散る汗と、それを運んでゆく澄んだ風。
地面を踏みしめる革靴が、竹の葉を散らす。
大の男が扱う刀を振りかざし。
丁度顔の高さで刃を止め、鋭い眼差しはそのままに息をついた
その、瞳は。
右はハシバミ色、左は翡翠色の、オッドアイ。
長い黒髪を一つに束ねた少女は、後ろを見ずに、語りかけた。
「何、テュルカ」
ついさっきまで刀を振り回していたとは思えないほど、落ち着いた声音。
息の乱れを読まれまいとするかのように。
「エリル様。お母様が心配していらっしゃいます」
少女はふっと一息つくと、無駄のない動きで刀を鞘に納めた。
そして、耳飾りを鳴らしながら振り向くと、
「わかった。苦労をかけてすまないわね」
村に住む他の少女と何ら変わりのない、あどけない微笑みを浮かべたのだった。
乱れた着物を整えながら村への道を歩く少女に、
幼馴染みであり、彼女の家の召使いでもある少年は語りかけた。
「エリル様にはお兄様が二人もいらっしゃるのですから、そんなに一所懸命」
「テュルカ」
鋭い声が、それを一蹴し皆まで言わせない。
「私は私の意志で、強くなりたいの」
そして、最近自分より背が高くなった少年の瞳を覗き込む。
「あなたは、わかってくれるでしょう………?」
「っ………」
そう言われて、どう反論しろというのか。
だが ―――
「僕がいるのに………」
そう呟いて、使い込まれた柄に触れた少年の想いに、少女が気づくことはなかった ―――




