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前話冒頭の話の完結をば。
闇に白く浮かび上がるメーターの数字
時折、外から入ってくる光で浮かび上がる彼の横顔
低く唸るようなエンジン音
通り過ぎていく、赤い無数のブレーキランプ
私は、シートベルトをぎゅっと握りしめる。
うるさく音を立てる心臓を、落ち着かせたくて。
「次、右でしたっけ」
いっぱいいっぱいな私とは対照的に、彼はのほほんと問いかけてきた。
「は、はい、そうです」
私が慌てて答えると、彼の笑う気配がした。
「了解です」
ウインカーの音が、やけに大きく思える。
この緊張感から開放されたいという思いと、
この時間が永遠に続けばいいのにという想いと。
我ながら、なんてワガママなんだろう。
目の前にあなたはいるのに。
何もできない、私。
もし、この想いを伝えたら、今の関係を壊してしまうかもしれないから。
それなら、もう、ずっとこのままで…
片想いが、一番いい。
両想いになったら、いつ嫌われるのか?いつ破局するのか?
そんな不安に苛まれるのは嫌だから。
片想いなら、このふわふわできらきらの気分を、ずっと味わっていられるもの。
やっぱり、ワガママだなあ…
私のアパートの近くに車を停めると、彼はふいに私の方へ顔を向けた。
「昨日、夢を見ました」
「ゆめ?」
はい、と彼は微笑して頷いた。
そして次の瞬間には、この上なく切なそうな顔をした。
でも、微笑みはそのままで。
いつもは夢見るようなきらきらした瞳が、今はなんだか熱っぽかった。
「…どうしたの?」
耐えきれなくて、私はそう口にしていた。
「あなたが、」
バチっと合った視線が、逸らせない。
「ずっと、ずうっと遠くに行ってしまう、夢…」
そこで彼は視線を落として、私の手をとった。
ひんやりした大きな手が、私の手を包み込む。
「そばに、いてください」
あまりのことに何も言えない、私。
「これからも、ずっと」
結局、彼がなぜあんなことを言ったのか、分からない。
部屋のドアを上の空で開け、ベッドに倒れ込んでからも、もやもやは晴れない。
ただ、あの時の彼の熱っぽいまなざしが、頭にこびりついていた。
「好き……」
なんとなく呟いた、その、言葉。
そう呼ばれている感情がどんなものなのか
それさえも、よく分からない、ということにしてきたのに。
今日なぜかふいに、その答えが知りたいと、思った ―――




