暗転(19)
3019年10月28日
王子はなんだか元気になっていたが、メンバーの俺を見る目がなんだか厳しい気がしないでもない。全くなんだ。そう言うのはカウンセラーに任せるんだ。俺は。
キャンプの準備をしているとおさげの男が話しかけて来た。
子供を殴るのはけしからんというので、「んなもん誰が決めたんだ」と言い返すと、露骨にへこんだので、訪ねてみると、信仰に対して迷いが出たのだと言う。
というのも、元々宗教系の修行をしていたらしいが、なんだかんだと煩わしいことも多く有り、このままでは信仰に疑問を持つ事を恐れて、すったもんだで学者の手伝いをしていたらしい。
全然違うじゃないかと思うのだが、成績が良かったのでそう言う事も出来たようだ。
頭のいい奴は、いろいろ生きる手段が合っていいもんだ。
「神が万能であると言うなら、子供を殺せなどとは言わないと言ったのは貴方です。神は居ないのでしょうか?」
と訪ねられたので、「よくわからんが、神様の言う事を聞いて楽しいのか?」と聞くと「信仰はそう言うものではない」という。
「理不尽でも言う事聞いてりゃ、幸せにしますよって変だろ」と言うと、「そうでしょうか?」とどうにも納得してなさそうなので、言葉を続けた。
「でも知らないおっさんがそう言って来たら絶対信じないだろ」というと、何とも言えない表情を浮かべやがる。どいつもこいつも、似たような表情しやがって。
「神様はどこにいるかっていや、それぞれの心の中に居るんだ。外に居る奴は偽物だ」と言うと、なんだか驚きながら納得していた。
本気で喋るより、それっぽい事を言ったほうが納得されるってどうなのだろうか。




