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矢のごとく(13)
2920年 5月6日
船は順調に飛んでいる。問題が起きる気配もない。
三十年経過で、地球では六百年。俺もじじいというわけだ。ずいぶん先まで来たものだ。
ある意味、人類未踏の地まで行ってきた人間に成る。
二十一世紀には地球には既に人類未踏の地はなかった。どこもかしこも足跡だらけだ。
そう考えると宇宙に出るというのは、ドラマチックな物がある。
今この場所は人類未開の宙域なのだ。
俺が立っている人類最高峰の宇宙船の中だが、俺がいる座標は人類の言った事の無い領域だ。
館長室から見える景色は誰も見た事が無い光景だ。
ときめく話じゃないか。黒と星しか見えないのが難点だが。
それでは再びお休み。