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惑星ジェミニ物語  作者: 森山 銀杏
第十章『王者』
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ジェントルメン(1)

3019年 3月25日


早速逃げようと思ったのだが、七人を抱えて走る事は出来ない。七人を走らせて逃げる事も出来ない。まだ本調子ではないのが二人も居る。


幸いにして熱は下がっているが、医者曰く薬で下げているので症状自体は長引くらしい。


それでも食事がとれるようになっただけマシだ。体力を付けなければならない。

となると、しばらくは安静にしなければならない。


「世話になったな。今日の昼には出るから」と爽やかに告げてみたが「まだ子供の容態が安定したとは言えないだろ」と言われれば、動けない。


そんでもって医療費の話をまったく向こうから振ってこないのが辛い。


辛抱できずに訪ねると、師弟の間柄だから遠慮するなと言う。

反論しようとしたところ、奴隷達のテンションが上がって邪魔をしてきた。


リンガーレイフォンの弟子とはすごい! と言う訳だ。


「逆。私が弟子」


とリンガーレイフォンが言ったが母親達はあんまり信用できていないようだった。子供の二人の方はテンションがさらに上がっていたようだったが。


「旦那さんが戦ってるとこみたい!」


そう子供が言った時のリンガーレイフォンの目の楽しそうなこと。腹ぺこのところに料理を差し出されたような目だった。晩賽は俺だ。


「まあ、無理だ」


先制で、その案を否定する。なんでーと言われるが、晩餐にされて喜ぶ奴が居る物か。


子供とリンガーレイフォンからはぶーぶーと文句を言われたが、やってやるわけにはいかない。


せっかく骨まで折って宝石騎士にならずに済んだのに。


というか、リンガーレイフォンもホームグラウンドで俺にまた負けたらどえらい事になるとは思わないのだろうか? それとも負けない自信でもあるのか。


とにもかくにも、やらない方向で行くしかない。


ヘタに良い勝負をして、流されて宝石騎士になって、あの怪力婆に使われる事になったら、大変だ。怪我がすぐ治ると知られたら確実に鉄砲玉にされる。


マフィアの仁義無き抗争みたいなもんだ。鉄砲玉は上映開始三十分くらいで死ぬ。


そんな殺伐としたのはお断りだ。


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