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惑星ジェミニ物語  作者: 森山 銀杏
第九章『従業員』
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従業員(48)

3019年 3月24日


寝ずの番の甲斐もあってか、問題は無し。


今朝の段階で双子の片方は回復傾向にあるが、もう片方は回復しきれていなかった。熱が下がらないのだ。


今日で症状が現れて四日目。 水分はなんとか取れているだろうが、食事はうまく取れていない。体力的には危ない領域に入りつつあるかもしれない。


最悪アンプルを打ち込む事も考えないではないが……まだ医者と言う手がある。


村には医者は居ないが、王都には居るようだ。


王都へは後一日。この村に残るのは不安があるので移動する事にした。


布団を購入し、乗り合い馬車の揺れを出来るだけ吸収するクッションに仕立てる。


俺が担いで運ぶ事も考えないではないが、それだとその他の奴隷を放って置く事になる。


そこまで賭けには出れなかった。


一緒に乗り合い馬車に乗った人には迷惑をかけただろうと思っていたが、馬車一つを貸し切る事が出来た。


どうやら奴隷市の為の臨時便が回収されるのが今日だったらしい。それに便乗できたと言う訳だ。


しかし運がいいのはここまでだった。

王都に着き次第、ぞろぞろと全員で病院へと向かったが追い出された。


紹介が居るとかなんとかで、とにかく問答無用に近い形で追い出された。袖の下も受け取ってもらえず、お金の問題では無いらしい。


思わず路地で怒鳴ったところで声をかけられた。


リンガーレイフォンだった。


慌てて逃げようとしたが逃げられずに捕まった。そうしたら病気の子供を発見され、家に医者が居るから付いてこいと言う。


俺一人だったら確実に逃げているところだが、奴隷の方々がリンガーレイフォンの名前に舞い上がってしまっていた。


麗しき宝石騎士様ってなもんだ。それにくらべりゃ、俺の存在などその辺の石ころみたいなものらしい。


あれよあれよと言う間にリンガーレイフォンの家にいる医者らしき人が処方して、双子の一人を寝かせてしまった。


おそらく風邪ではないかと言う事だった。一安心だ。


「滞在中はこの家に居ると良い」などと男前な事まで言うので、奴隷達はすっかり骨抜きにされていた。双子の母親はまた泣いてた。


それから奴隷ズが部屋に案内されて、俺だけになるとすみやかに尋問タイムが始まった。


麗しの宝石騎士様は俺には優しくない仕様のようだ。陶酔しないからだろうか。


俺の完璧と思われた逃走はリンガーレイフォンとしては非常に納得できかねることだったらしい。「しらんがな」と言ったら、「知らんで済まない」と怒られた。げせぬ。


とにかく、力不足でお前と結婚は出来ない。右手が痛いと誤摩化したが、怪我をしたのは左手だったのでめちゃめちゃ怒り始めた。実際怪我をしたのは本当なのだが、こんなに早く治る訳が無いと怪我した事自体を信じてもらえなかった。


宝石騎士になりたくないので、私を利用したのだと怒っている。


それを言えば結婚したくなくて俺を良いように利用した分際でなんだ。と言い返すと、そこからは罵り合いだった。


まあ、良いように利用しようとしたのは間違いなかったので何ともは言えないが。


とにもかくにも、借りを作ってしまった。


清算が面倒な事にならなければ良いが。無理かもしれないなぁ。

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